断層強度と地震時滑りの不均質を明らかに

PCやスマホのアプリ"Google Earth"で日本を眺めると、列島が複数のプレート境界にあることがよくわかる。

2017年6月19日

北米プレートとユーラシアプレートの境目は判然としないが、実際にはそれらは極北から本州中央にかけて縦にぶつかり合っている。そして太平洋プレートが列島の東に濃紺の凹みと黒い日本海溝を描いていて、フィリピン海プレートが小笠原諸島および沖縄の島々を際立たせている。

太平洋プレートは、南半球でオーストラリアプレートとも衝突していて、両者の境界にニュージランド列島、同国の南島西海岸にアルパイン断層を形作っている。
同断層はおよそ300年周期で大地震を発生させていて、直近の活動は1717年。つまり次の地震発生時期が迫っている。それに加えて、隆起速度が速いことから深部における地震発生メカニズムの理解に都合が良いと、同断層に交差するファタロア川で2014年アルパイン断層深部掘削プロジェクト「Alpine Fault, Deep Fault Drilling Project(DFDP)」が行われた。

そこに、日本地球掘削科学コンソーシアムの支援を受けて参画した、大阪大学大学院理学研究科廣野哲朗准教授グループの同研究科博士前期課程の加藤尚希氏(現所属、(株)東芝)らが、同断層における層面上の大きな温度不均質を明らかにし、この不均質が断層運動に伴う隆起と、隆起による地下水循環に支配されていることを解明した。

プロジェクトチームは、鉱物組成そして断層の強度を支配する重要なパラメータである温度分布(地下温度)を光ファイバー温度計により、流体圧を水理試験によりそれぞれ測定。その結果、一般的な大陸地殻の値の4倍の、非常に高い地温勾配が見つかった。過去の断層掘削に基づくアルパイン断層上盤の地温勾配は一般値の2倍程度であり、この断層面上には大きな温度不均質があるという。研究では、測定された温度および流体圧を数値計算と比較することで、その原因が断層運動に伴う隆起と、隆起による地下水循環であることが明らかになった。断層面上の温度不均質の推定は、地震時の滑り分布、さらには地震動予測への応用が期待される。

研究成果は、産業技術総合研究所 重松紀生主任研究員、京都大学大学院工学研究科(兼務、海洋研究開発機構)林為人教授、信州大学理学部 森宏助教、秋田大学大学院国際資源学研究科 西川治講師、山口大学大学院理工学研究科博士前期課程(現所属、(株)宇部興産コンサルタント)米谷優佑氏らの貢献もあって、今月1日(木)、英国科学誌「Nature」第546号に、「プレート境界断層に見いだされた極端な熱水条件」(原題:"Extreme hydrothermal conditions at an active plate-bounding fault")として掲載された。