ゲーム感覚で大陸の従業員と教学

いま目を見張る。進歩をまざまざ見せつけられるテクノロジーとして、人工知能(AI)と、拡張現実/仮想現実(AR/VR)が挙げられる。

囲碁将棋やプロジェクションマッピングなどのイベント、テレビ番組で話題の両者は、すでに生活と仕事の中に溶け込み始めている。

ビジネスの現場において、VRは、専用ゴーグルをかけて点検業務をするなど、人の作業に直接活用されている。マニュアルや図面を片手に意識を分散させる危険がなく、その仕組みに先輩社員たちの知見やノウハウを反映させておけば、新人もベテランと同様に作業ができるためだ。
ピクトグラム(絵文字)を多用し、複数言語にも対応させておけば、グローバリゼーションも果たせる。

グローバル企業にとって最も重要なことは情報の共有だろう。みなで共有された情報は国籍が違っても同方向の思考を育て、同質の行動を生む――。組織におけるベクトルとなり、品格と価値をつくる。より良い製品やサービス提供の源泉となる、情報伝達の重要性は、企業に限らず、あらゆる組織に共通する。

車両の機能の高度化・複雑化に伴い、新車の市場投入等に際して、その特長や構造を分かりやすく伝えるための教育は、より一層重要なテーマとなっている。特に、グローバルかつ多数の拠点での教育は、地理的制約などから多大なコストと時間がかかるため、効率的かつ効果的にそれを行える環境の実現が求められているという。株式会社電通国際情報サービス(ISID)は、トヨタ自動車株式会社向けに、VR技術を用いて遠隔地間で3D車両情報を共有するシステムのプロトタイプを開発した。

3Dゲーム開発プラットフォームで高いシェアの「Unity」と、オンラインゲーム等でリモートユーザー同士の意思疎通を実現するネットワークエンジン「Photon」を利用して、ISIDが開発した直感的なUIを組合せることにより実現した。プロトタイプは、車両の3D設計データを実物大のリアルな3D画像としてヘッドマウント・ディスプレイ上に再現し、遠隔地の複数ユーザーが同じ空間で1台の車両を眺めているかのような仮想環境を提供する。
車両の精緻な3D画像に加え、機構のアニメーション表示、モデルと視点の自由な移動、指示箇所へのマークの付与、ドキュメントの閲覧、音声会話、アバター表示といった機能を有していて、視覚的かつ効率的なコミュニケーション手段となる。

今回のプロトタイプをベースに、トヨタとISIDは、ユーザーの意見・要望を集めてさらなる改善を図り、今年度中にトヨタの複数拠点において実証試験を行う計画だという。
世界中のトヨタ拠点の人々がいち早く車両に搭載された新技術を仮想体験することで、商品への理解を深めサービスを向上させることを目指す。システムは、明日から23日まで、東京ビッグサイトで開催の3D&バーチャル リアリティ展にて見られる。