東芝、スピントロニクス技術を応用した超高感度ひずみ検知素子技術を開発

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)社会の発展により、産業・車載機器やインフラ構造物などの状態管理や故障診断に用いるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサの技術開発が増えている。それに伴い、MEMSセンサ自身の精度向上が求められ、従来使用されてきた半導体ひずみゲージよりも高い検知感度の実現が望まれていた。そんな中、東芝がより高感度な検知素子技術と同技術を搭載したマイクロフォンの開発し、その効果を実証したと発表した。

株式会社東芝(以下、東芝)は、IoT社会で用いられるMEMSセンサ向けに超高感度スピン型ひずみ検知素子を開発。また、スピン型ひずみ検知素子を搭載したスピン型MEMSマイクロフォンを開発し、人の耳では聞こえない超音波を検出可能であることを実証した。

東芝は、従来HDDヘッドやMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられているスピントロニクス技術を応用し、新たなひずみ検知素子である「超高感度スピン型ひずみ検知素子」を開発した。この素子は、従来HDDヘッドの磁界センサとして用いられてきたMTJ(Magnetic tunnel junction)素子に、ひずみによって磁性体の磁化の向きが変化する磁歪効果を応用することで、ひずみ検知素子として機能させている。同社によると、この素子のひずみ検知感度は、従来の金属ひずみゲージの2500倍、半導体ひずみゲージの100倍以上となるという。

同時にスピン型ひずみ検知素子を搭載したスピン型MEMSマイクロフォンを開発したことを発表。同社によると、マイクロフォンは世界で初めて開発されたという。また、スピン型MEMSマイクロフォンの動作実証に成功したと発表。人の耳が聞き取ることのできる音域を超えた超音波まで広帯域で高精度な検出が可能だと説明する。幅広い周波数帯域の稼働音を高精度に取得できることから、様々な機器の状態監視や故障診断への応用が期待できるという。マイクロフォンの試作の一部は、文部科学省ナノテクノロジープラットフォームの支援を受けて東北大学ナノテク融合技術支援センター・試作コインランドリで実施された。

東芝は今後、同技術の早期実用化に向けて、スピン型ひずみ検知素子技術および同技術を搭載したスピン型MEMSマイクロフォン技術の研究開発に取り組み、さらなる性能向上を目指す。