介護にもスマートIoT

生産現場や車、家、エネルギーおよび社会インフラに革新をもたらすとして、あらゆるモノがネットにつながるIoTはいま、とても注目されている。

センサー等からの大量データを分析・解析する人工知能(AI)/機械学習(ML)とともに語られることもある。

政府策定の「第5期科学技術基本計画」における、世界に先駆けた「超スマート社会」の実現――。第5世代ソサエティ(Society5.0)には、超高齢化し労働力不足に直面するこの国の課題解決も含まれている。そして今日、介護事業も営む株式会社ウチヤマホールディングスと、国立九州工業大学、Yahoo! JAPANグループの株式会社IDCフロンティアは、IoTセンサーとビッグデータ分析を活用し、介護・看護職員の行動記録と機械学習による行動認識・業務分析をした、実証実験の概要を公表した。

ウチヤマホールディングスの連結子会社で、全国84施設を運営する株式会社さわやか倶楽部の介護付有料老人ホーム「さわやか海響館」(北九州市)において、今年1月から3月までの約3か月間、介護士22名、看護師5名を対象に行動センシング技術とIoTセンサーやスマートフォンを用いて行動データを自動収集し、蓄積された約12億レコードのビッグデータを、クラウド上の機械学習・行動認識プログラムによって、31種類におよぶ業務行動の推定を行ったという。

実証実験では、介護・看護職の個々人が保有する業務ノウハウの共有や改善を、業務行動を自動で記録し可視化する視点からアプローチしている。介護や看護業務を妨げないよう、職員が身に付けた市販の小型センサーデバイスとAndroidスマートフォンを組み合わせ、加速度、地磁気、照度、気圧、温湿度などのデータを取得。施設各階の居室や食堂、浴室などの共用エリアにもセンサーを設置することで、単純な業務行動の推定だけではなくフロア毎、時間単位での業務状況や、職員の経験年数、業務内容と時間の相関関係などが分析可能になった。
そして実証期間中、時間帯ごと、項目ごとの合計作業時間が明らかになり、介護・看護の業務行動の中では「記録業務」が上位を占めていて、業務開始時間が朝と夕刻に集中していることが分かった。

三者は今回の結果をもとに、ICTを活用して、予防医療や介護予防の促進など限られた人員での最適な医療や介護体制の提供などにより、生活の質(QOL)の高い社会生活を支援する、「スマートライフケア社会」の実現に向けて、業務シフト改善や職員の能力向上・人材育成などにつなげていくとのことだ。