太陽光発電パワーを地産地消

ずっと前から当編集部員が見たいと思っている。相馬野馬追は千年の歴史を誇り、国の無形民俗文化財に指定されている。 大震災の影響を受けたものの、地元の人たちのたゆまぬ努力により、世界一の戦国絵巻は今年も開催される。そしてこれからも、復興庁が「新しい東北」でめざす、「まちのにぎわい」を再興するソフトのひとつだ。

野馬たちは知っているのだろうか。この地域で、最新鋭航空機エアバスA320neoのエンジン部品が作られていることを――。そしてその生産拠点を有する株式会社IHIは、地元企業として、福島県相馬市および小売電気事業会社であるパシフィックパワー株式会社と、「そうまIグリッド合同会社」を設立したことを。

太陽光発電等の再生可能エネルギーは、東日本大震災以降、急速に普及している一方で、発電電力全量を系統に接続することができないという問題が顕在化してきている。そこでIHIと相馬市は、この問題の解決と、2015年度公募の「新しい東北」先導モデル事業としてスタートした「水素を活用したCO2フリーの循環型社会創り」に向けて、太陽光発電の余剰電力を有効利用して全量地産地消する仕組みと、その余剰電力で製造された水素を利活用するスマートコミュニティ事業モデルの構築を目指し、2015年1月に共同研究を開始――。現在、2017年度後半の小売電気事業開始および2018年度の特定送配電事業開始に向けた準備を進めていて、「そうまIグリッド合同会社」は、この取組みの一環として設立した会社だという。

IHI、相馬市、パシフィックパワーの3者は、同新会社の地域エネルギーマネジメントシステムを活用し、さらにはIHIが相馬市内に建設する太陽光発電設備からの余剰電力を水素や熱に転換し有効利用することで、再生可能エネルギー地産地消の実現、かつ地域主導の新たな自律事業モデルを創出し、被災地域の復興から地域経済の活力再生に向けた新しいまちづくりの一助となることを目指して、事業構築を推進していくとのことだ。