通信・メディア業界の破壊的テクノロジーを読み解く

業界トップ企業がある日突然、リーダーシップを失う。顧客にそっぽを向かれる。 創業以来莫大な投資をしてきたうえに、顧客に寄り添い、顧客の満足を求めて、必要な技術革新を続けているのに。 なぜそうなるのか、原因を解き明かした論文が、1995年、『Harvard Business Review』(HBR)1・2月号を飾った。

以来そのタイトル、『Disruptive Technologies: Catching the Wave』から、米国企業の会議などでは盛んに"Disruptive Technology"が使われるようになった。そして日本でも、従来の常識や枠組み、仕組みを破壊する技術とか、それらを断絶させ新たな価値を生むテクノロジーとして、それはことあるごとに取り上げられるようになった。
論文よりもっと以前、古くは活版印刷がそれだろう。蒸気機関、T型フォード、電信電話、ホームビデオだって、それまでの常識や仕組みを破壊した。

もっと近いところでは、インターネットとその派生物が破壊的テクノロジーだ。上記HBRが上梓された頃、まさにインターネット活用の黎明期で、ビジネスシーンもシステムもネットに舞台を移し始めていた。そして、ネットバブル――は余分であったが、パーソナルコンピュータはスマートフォンに未来を奪われ、SNSやスマホアプリが新たな文化をつくり、いまではあらゆるモノをネットにつなごうと、各国政府までもが躍起である。

ビッグデータ、人工知能(AI)、金融×情報技術(IT)のフィンテック、医療分野のメディテック、つながるクルマ(コネクティッドカー)、AR/VR(拡張現実/仮想現実)などの基盤にもなるクラウドは、もう6、7年前から従来型大手ITベンダーの業績を低迷させている。この問題が、次は、ITと融合する技術やサービスを展開する企業のうえに現れることは必至だろう。

世界規模で通信会社およびメディア関連企業のシニアエグゼクティブへの調査を行ったKPMGの日本法人、KPMGコンサルティング株式会社は、その調査結果をまとめた日本語版レポート、『つながった世界に力を与える - 破壊的技術の兆候:通信セクター』と、『行動喚起 - 破壊的技術の兆候:メディアセクター』を刊行。そこには――、「経験したことのないスピードで『破壊』が進む中、通信会社はまだ準備ができていない」とか、「メディア関連企業は、新たな役割へと進化しなければならない」といった状況がデータとともに示されている。