クラウド、企業のネットワーク管理を困難に

社内の血管、あるいは神経回路ともいえるネットワーク――。その運用管理現場で、いま問題が起きている。 日々情報が巡り、支社や営業所などにも即座に指示が伝達される基盤であるそれは、社外環境ともつながっていて、安定稼働と高いセキュリティが求められる。クラウドやモバイルコンピューティングへの対応で新たな経路や技術要素を加え、それでもIT部門の人的リソースは増やされない。

過半数の企業で、クラウドやモバイルなどの新技術の導入によって、WAN(Wide Area Network)構築や運用管理の負担が増加していることが分かった。マーケットリサーチ結果を公表したのは、IT専門調査会社であるIDC Japan株式会社だ。
今年3月に実施した国内法人のネットワークサービス利用動向に関するアンケートにおいて、回答を得た900企業の現状をまとめたものだという。発表内容をさらに見てみよう。

「負担感が増加した」企業は、スキル面で74.9%、工数面で61.4%を占めた。いずれも過半数にのぼったうえに、スキル面で負担増と答えた企業がより多い結果となった。背景には、WANの接続機器、接続先(クラウドサービスなど)、接続技術などが多様化することで、企業におけるネットワーク設定のための新たなスキルの習得、セキュリティ対応、トラブル発生時の切り分けなどが難しくなっていることがあると考えられる。
ユーザー部門がその機能や価格に魅かれ、信頼性や品質が十分ではないパブリッククラウドを契約する――ケースの増加といったことも、WAN管理者の負担を増やしている一因だという。

IDCは、スキル面で「負担感が増加しておりアウトソーシングを拡大したい」を選択した企業が約2割だったことから、この実情が、徐々にアウトソーシング市場の拡大につながっていく、その可能性を示唆しているとみている。

「負担増を回避するには、パブリッククラウド選定に当たって、ユーザー部門とIT部門が連携し、パブリッククラウドの機能や価格面だけでなく、信頼性や品質面もしっかり評価すべきである」
と提言するのは、IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野 陽子氏だ。

「WAN市場でSD-WAN(Software-Defined WAN)のような新たな技術を浸透させるには、従来の運用管理体制をいかにスリム化または効率化できるかが問われる」と同氏が述べる、詳細は、「浸透するクラウドとクラウド接続ネットワーク」、「WANの見直しと運用管理」、「モビリティ活用の広がり」、「新たな技術と投資」の4つのテーマで分析されたレポート、『2017年 国内マネージドICTおよびネットワークサービス市場 企業ユーザー調査』にて確かめられる。