誕生! LTE互換プラスの5G向け通信方式

TOKYO2020、そしてその向こうに広がるマーケットを目指して、「高速・大容量化、超多数端末接続、超低遅延、超高信頼性など」を要求条件とする第5世代移動通信システム(5G)の研究開発が国際的に進められている。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」社会、超高画質の静止画や動画を配信するニーズなどが5Gの推進力である。いま、課題がみえている。

(BP-Affairs編集部)

移動通信に適した周波数は現在逼迫しており、限りある周波数資源を有効利用するためには、現在利用可能な第4世代移動通信システムLTE/LTE-Advancedとも互換性があり、さらに周波数の高密度配置が可能な通信方式の開発が急務となっているという。
京都大学の水谷圭一 情報学研究科助教、松村武 同特定准教授、原田博司 同教授らの研究グループは、5Gシステム向けの新しい通信方式である、UTW-OFDM方式(ユニバーサル時間軸窓直交周波数分割多重方式)の実証実験に世界で初めて成功した。

計算量の少ない「時間軸窓処理」を用いることにより、現行の4Gシステムで採用されているCP-OFDM方式と比べ、帯域外不要輻射(無線周波数の利用効率劣化の要因となる割り当てチャネル帯域外への漏洩電力)を1000分の1以下に削減する――ことが可能な方式は、注目されているものの、これをリアルタイムで動作させる実システムが構築できておらず、その実現可能性について更なる研究開発が必要になっていた。

そこで同研究グループは、現行LTE/LTE-Advancedシステム対応のリアルタイム波形整形処理装置を開発し、実際のLTEシステムにおける送信信号のUTW-OFDM方式化に世界で初めて成功。さらにこの新方式を導入したLTEシステムの評価を実施し、従来のLTEシステムのスループット(通信速度)を劣化させることなく、帯域外不要輻射を約20dB(約100倍)抑圧することに成功した。

今回の実証実験により、現行の4GシステムLTE/LTE-Advancedで問題となる帯域外輻射を、簡単な信号処理の追加のみで大幅に抑圧できることが証明された。移動通信に適した周波数(6GHz以下)において、これまで以上に高密度な周波数利用や、5Gが目指す超多数端末の同時接続やチャネルあたりの通信速度の向上が期待できるという。