車載機は64ビット、オープンソース時代へ

あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」。なかでも交通事故をなくし、渋滞を緩和する自動運転技術には大きな期待が寄せられていて、そのプラットフォーム、「つながるクルマ」の開発が急がれている。

つながるクルマ(コネクティッドカー)は動力・駆動・制御系のシステムと、情報・通信系のシステムとで構成されている。相互にデータをやりとりしてこそ自動運転が実現されるので、本来分けて考えるべきではないのだが、両者には、工場で生産ラインに使われる数値制御システム(CNC)等と、本社ビル内で受発注処理や販売管理などをするシステムのように、機能と用途、ときには形態にも違いがある。ダウンサイジングの波にのまれてどちらの現場でも同じ形のPCが見られるにしても、端から小型軽量を旨とするコネクティッドカー搭載の、システムOSは、WindowsやLinuxが主流である。

PC(パソコン)OSと、そのアプリケーション開発の裾野は広い。音楽や映画を楽しむように趣味でパソコンを自作する人がいるし、もっと便利なソフトウェアが欲しいとか一発当てて有名になりたいとか、業務命令だからとか動機は様々だが、オープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティに参加する人がいる――という筆者の原稿をおくるメーラーも、とあるOSSコミュニティ製だ。
Windowsと同様、Linuxも64ビットOSになっていて、32ビットマシンの4GBというメモリ空間の制約から解放され、開発者たちはその43億倍の広さを駆使して、新しい時代のソフトウェアを生み出すことができる。

つながるクルマの情報・通信系システムは、カメラやレーダー、ITSと連携した自律および協調型自動運転の要である一方、運転者と同乗者に情報と楽しみを届ける役目を担っていて、特にそれは「インフォテイメント」システムと呼ばれている。
昨秋その礎となる車載ソフトウェアの開発環境を1人1台持てるようになる「R-Car スタータキット」を発売した、ルネサスエレクトロニクス株式会社はきょう、同開発キットが、Linuxベースの車載情報機器のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)のソフトウェア開発用標準リファレンスプラットフォームのひとつに採用されたことを公表した。

AGLプロジェクトが今年1月にリリースしたLinuxのUnified Code Base(UCB)3.0に対応していて、64ビット環境における仮想化技術でITプロフェッショナルも注目のコンテナ技術など、最新のITソリューションを、シームレスに車載向けへ応用可能になるという。最新の開発環境は、今月31日から東京コンファレンスセンター(有明)で開催のAutomotive Linux Summit (ALS)にて展示、そして最先端のコネクテッドカー用コクピットコンセプトのデモンストレーションも予定されている。