ヒッタイトも驚く製法へ

なぞなぞです。46億年間この星の中心で渦を巻いているとみられ、人間の体内にも巡っているものは何でしょう? 現代社会の至るところにある。 人類になくてはならないもの――と、かつてドイツの宰相ビスマルクが話題にしたそれは、「国家なり」といったふうに伝えられています。

日本では、戦後の高度成長期を支えるよりもずっと前、奈良時代頃から木炭を燃やし鞴(ふいご)を使ってそれが作られていた。そして世界ではさらに遡ること二千数百年、紀元前15世紀頃に生まれたヒッタイト王国がその製法に優れていて、結果メソポタミアを征服した。大空から降ってきた隕石にヒントを得たかどうかはわからない。が、地球上に偏在する砂鉄とか鉄鉱石を炉で溶かして加工し、青銅器よりも軽くて強靱な農具や武器にしたと考えられる。

鉄は、文化文明を転換させ、多くの国とその経済の基盤を支えてきた。けれども近ごろ雲行きが怪しい。鉄を上回る性能の素材が開発されはじめたから――ではなく、原因は地球温暖化にある。太古から製鉄時に使われた火、それが鉄の利用範囲と量の拡大および増加とともに盛んになり、二酸化炭素(CO2)を膨大に排出していて環境破壊している、とされているのだ。

鉄鋼業は国内の産業部門の中でCO2排出量の約44%、国全体の約14%を占める(2014年度)最大のCO2排出業種であり、その中でも特にエネルギー使用量とCO2排出量の多い高炉法による製鉄プロセスでは地球温暖化対策として抜本的な省エネルギー化とCO2排出量削減が求められているという。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、製鉄所のCO2発生量を抜本的に削減し、地球温暖化防止に貢献するため、高炉からのCO2の発生量を減少させる技術や発生したCO2を分離・回収する技術の開発プロジェクトを進めていて、新たにフェロコークス活用製銑プロセス技術開発を開始した。

製鉄プロセスの一部である製銑プロセスにおいて、一般炭と低品位鉄鉱石の混合成型・乾留(空気を遮断して木材、石炭、ピッチ、油頁岩などの個体有機物を加熱分解する操作)により生成されたフェロコークス中に含まれる金属鉄の触媒作用を活用して、高炉内の還元効率を飛躍的に高めることで、従来よりも高炉内に入れるコークス量を削減することができる。今回の省エネルギー技術では、エネルギー消費量10%削減を目指すという。

「環境調和型製鉄プロセス技術の開発/フェロコークス活用製銑プロセス技術開発」事業におけるさまざまな研究開発の助成先には、JFEスチール株式会社、株式会社神戸製鋼所、新日鐵住金株式会社が挙げられている。