ゴムロボットがやってくる

ロボット革命実現会議――。コミックやSF映画の一場面を想像してしまう響きだが、「人手不足やサービス部門の生産性向上という課題解決の切り札にすると同時に、世界市場を切り開いていく成長産業に育成していく」ことが、平成26年9月~27年1月まで都合6回首相官邸でまじめに話し合われていた。

ロボット革命とは、① センサー、AIなどの技術進歩により、従来ロボットと位置づけられていなかったモノ(たとえば自動車、家電、携帯電話や住居)までもロボット化し、② 製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用され、③ 社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現すること、だそうだ。

人工知能(AI)の進歩は目を見張るものがあり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の広がりとともに各種センサも進化している。いま、これらを備えたロボットの躯体はどうだろうか。画面に映るロボットはソフトだが、イベント会場や受付にいるロボットは、金属などでできていて硬い。部屋の掃除中はともかく、介護や運搬作業を補助する際にも「ウィンウィン」とうなるモーター音が気になる。一度気になった音はきっと耳にこびりついてますます気になる、人間のように、しなやかに動けないものか、と思っていたら――。

豊田合成株式会社は、2013年に低消費電力で振動を発生できるゴムシート「e-Rubber」をサンプル出荷していて、義手などの人工筋肉として高分子誘電アクチュエータの開発をしている。
理科の実験でカエルの足に電気を流したときピクリと動いた、あの原理で動くゴム(正しくはエラストマー、ゴム弾性を示す高分子物質)vs.電磁モーター――スマホのバイブレーションはどちらで動いているのだろう、近未来のロボットはゴムでできているに違いない。と、想像が膨らむ発表をきょう、同社はまたしても行った。
e-Rubberの主材料、東京大学の開発したそれを事業化するために設立されたアドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社との間で、「スライドリング マテリアル」を、誘電アクチュエータ、誘電センサ用途で排他的に使用・販売できる、独占ライセンス契約を締結したのだ。

柔らかく軽量、高出力、省エネルギーといった特長から、ロボットの人工筋肉などへの適用を目指す「誘電アクチュエータ」。
「誘電センサ」も、柔らかさを活かした触覚・圧力センサやモーションセンサとしての実用化が期待される。だが両者には、材料に起因する課題(内部摩擦や耐久性など)があったという。豊田合成は、超分子構造のスライドリングマテリアルの活用と、高分子分野の専門メーカーとして自動車部品等の開発で培った材料設計技術により、これらの課題を打ち破る性能を獲得し、様々な領域での実用化を追究する。その段階に至ったとのことだ。

ロボット革命会議で話題になった未来のクルマはもう、エアバッグカー「Flesby」で始まっている。