ふくしまで次世代農業、始まる

家族や友人を集めてゲーム『桃太郎電鉄』をやっていると、福島県に果樹園が多いことに気づかされる。

(BP-Affairs編集部)

それもそのはず、県北地域4つのJA合弁により誕生した「ふくしま未来農業協同組合」によると、12市町村に及ぶ同組合管内は、全国有数の果樹(桃、梨、りんご、あんぽ柿など)、野菜(きゅうり、トマト、にら、なすなど)の産地とのことだ。

大産地であるがゆえの苦労も多い。この地域では、果樹の栽培において、重大な被害をもたらす「霜」による凍霜害の対策として、降霜時の危険温度に達する前に果樹園地内で燃焼剤を燃やし空気を対流させ温度を上げる取り組みを行ってきた。JAふくしま未来では、毎年果樹の開花期となる4月から防霜対策本部を設置し、霜注意報が発令されると職員・組合員約60人が福島地区に点在する56箇所の観測地の温度を夜明けまで観測していて、その際に発生する人的負担が課題となっていたという。

これまでも温度観測の自動化を検討してきたが、圃場(ほじょう)における観測装置に電源が必要になることや、観測データの送信にモバイル回線を利用するため通信コストがかかることから、導入を見送ってきた。が今年、新たな取り組みを始めた。

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)の圃場センシングソリューション「eセンシング For アグリ」を導入し、この4月から運用を開始したのだ。
太陽光、機械の発する振動、熱などのエネルギーを採取し電力を得る環境発電技術"エネルギーハーベスティング"に基づく、LPWA(省電力無線通信技術)を利用したセンシングによる生産管理を行う、業界で初めての取り組みだという。

「eセンシング For アグリ」は、電源不要のセンサーと無線通信機器を圃場に設置することで、「温度」、「湿度」、「照度」などのセンシングデータをNTT東日本が提供するオンラインストレージサービス「フレッツ・あずけ~る」に自動収集し、スマートフォンアプリやPC等を用いて圃場環境を"見える化"するソリューション――。そして、収集したセンシングデータを活用し、農業の生産性向上をサポートする。

JAふくしま未来はこれを今後、 果樹の防霜対策以外に、水稲適期刈取り期や農薬散布の防除適期の提示、あわせて果実収穫適期診断など生産の質向上のために活用していくほか、福島地区での実績を踏まえ福島地区以外への導入を検討していくとした。
一方、NTT東日本は、防霜対策ソリューションの幅広い展開とともに、生産現場の要望をもとに利用可能なセンサーの追加、収集した環境データをより便利に活用できる仕組みづくりを行っていくとのことだ。