近ごろ金融と情報技術(IT)の融合、いわゆるフィンテック(FinTech)分野のニュースが、新聞紙面などを賑わしている。
その最たるものはブロックチェーン技術を用いた仮想通貨だろう。そしてここにきて、各国の中央銀行の動きが伝えられるようになり、デジタルコインが法定通貨になるかもしれない、という想いが働くようになった。
世界最古の中央銀行、スウェーデンの「The Riksbank」(リクスバンク)は北欧の各中銀と連携しつつ、通貨クローナを法定デジタル通貨「eクローナ」として発行する検討に入った。英国や香港、シンガポールでも、法定デジタル通貨に関し、中央銀行が動いている。カナダ連邦ではカナダドルのデジタル通貨「CADコイン」を銀行間取引に用いる、実証実験を中銀がすでに始めている。
だが、それら中央銀行の話は我々庶民には縁遠い。銀行同士の話だし、たとえ法定デジタル通貨「円コイン」なんてものが生まれても、それが一般企業の決済に使われたり、市中に流通したりするのはまだ先のことだろう。一方、仮想通貨は、いまここにある事実だ。
今年4月1日に改正施行された「資金決済に関する法律」の第二条5にはこうある。
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この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
1.物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
2.不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
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現状仮想通貨として流通していないが、企業間取引などで使えるデジタルトークン(デジタル認証/暗号通貨)というものがある。
金融機関、IT企業、サービス企業、監査法人や法律事務所、大学など130以上の企業・団体が加盟する「ブロックチェーン推進協会」(BCCC)発行の「Zen」がその一つだ。
そして同協会は、Zen取扱仮想通貨取引所において、ユニークかつ有意義な取り組みを始める。Zenと仮想通貨ビットコインなどとの交換レート、ひいては日本円との高い為替連動性を保持する社会実験。その第1フェーズを9月までの半年間行うという。たとえば「ブロックチェーン大学校」の授業料は、Zenのみで支払うことができるようにするなど――。
為替レートはFX(外国為替証拠金取引)における「ミセス ワタナベ」だけでなく、その変動と安定は、多くの企業と国家の関心事なのだ。