オーダーメイドで組み上げる電気自動車SUV「Electric SUV prototype」

電気自動車の実現と普及は世界中の至る所で現実味を帯び始めており、ガソリン自動車から電気自動車への切り替えを望む業界や人は多い。

今日でも電気自動車はしっかりと運用が行われてはいるものの、まだまだその燃費はガソリン自動車におよばなかったり、充電できる場所が公共の場に提供されておらず、日常的な仕様で不具合を覚えることも多いこと、そして価格が高いということは、これから乗り越えていかなければならない課題として取り上げられている。

また、電気自動車はガソリン自動車ほど普及が進んでいないこともあり、そのバリエーションにもあまり幅がないのだが、ブルガリア発の「Electric SUV prototype」プロジェクトでは、そんな電気自動車をオーダーメイドでカスタマイズして届けようという取り組みが進んでいる。

環境負荷の小さい、お気に入りの一台を使い続ける理由

現代の乗用車の多くは、本体を選んだ段階である程度のカスタマイズをドライバー自身がリクエストすることによって行うことができる。量産型とはいえ、自分なりに色々と個性を発揮できるよう手を加えることで、お気に入りの一台に仕上げることができ、いつまでも乗っていられる車となってくれるのだ。

自家用車に愛着を持つということは、環境保全の側面からも重要な意味を持つ。何度も車を買い替えるのではなく、一台の車を長年乗り続けることによって、買い替えのコストを削減し、新しい車を製造する際に生まれる環境へのダメージを抑えるのである。

少しでも長く車を乗り続けるためには、耐久性の高い車を購入する必要があるが、多くの乗用車は、長年乗りつづけているとガタがきてしまい、定期的なメンテナンスを行っていても、いつかは廃車にしなければならない時も来るものだ。

車の寿命を伸ばすためには、大切に乗り続けることも重要だが、簡単には壊れてしまわない、質の高い車に乗り、それでいていつまでも飽きない一台を選ぶ必要がある。

そこでElectric SUV prototypeのプロジェクトチームが目をつけたのは、オーダーメイドによる電気自動車の製造だ。一からクライアントの注文を受け付け、組み上げることで、ドライバーの納得のいく仕上がりを担保するだけでなく、一つ一つのパーツの質が高く、故障率の低い自動車としていつまでも運転が可能で、愛情を持って乗り続けることができる。

オーダーメイドによる手作業での自動車の組み上げは、フェラーリなどの高級ブランドが続けてきた、非常に手間のかかる製法の一つである。

トヨタやフォードのように、大量生産を基調とする製法とは対照的で、こちらがベルトコンベアによる均質のクオリティを追求する一方、ハンドメイドとなると、一台づつ自動車を組み上げていくため、生産速度は前者に劣る一方、一台一台の完成度は非常に高いものとなることが期待される。

効率的なハンドメイド製法を目指す

そして、現代ではハンドメイド製法とはいえ、テクノロジーの進歩によって、手作業組み上げの作業効率やクオリティも飛躍的に向上している。

3Dソフトの運用による設計作業の効率化や、3Dプリンターによるパーツの生産など、工程の多くは職人の技術がなくとも十分に携わることができるものだ。

Electric SUV prototypeもまた若いチームによるプロジェクトだが、こういった技術を用いた工場の用意と、プロトタイプの生産を計画している。

まず、チームは3Dモデルによる製造自動車の設計を行い、粘土を用いた原寸大スケールの模型を製造する。これによってイメージを掴み、模型から車のパネルの鋳型を生成する。

車の外観パーツの切り出し、および塗装や組み上げを終えたのち、バッテリーなどの内部機構を搭載し、シートの設置などを最後に行うという手順で一台の車を製造するのだ。

これらは手作業で行われるため、クライアントは一つ一つの工程に参与し、自分好みの一台となるようカスタマイズすることができる。

Electric SUV prototypeは現在Kickstarterにて出資を募っており、25万ユーロの資金調達を目標にプロジェクトを進めている。