ガソリン自動車をカスタマイズして水素自動車へ「Hydrogen Add On solution」

二酸化炭素の排出は、地球環境に大きな影響を与えているとされているものの、世界全体でこの問題に取り組むことは難しい。

特に自動車の排ガス問題は深刻で、先進国では比較的排出の抑制は進んでいるものの、先進国の中でもアメリカのような自動車大国ではその抑制は難しく、ヨーロッパ諸国や日本のようにCo2対策が進んでいる国の中でも、自動車への依存度が大きく、所得が都市に比べて低い傾向にある地方ではその進みは遅い。

自動車の排ガス抑制が今ひとつ進まない理由としては、自動車の買い替えコストの問題が挙げられる。新型のハイブリッドカーなどは減税措置なども進んでいるものの、それでも自動車の買い替えとなる以上は決して安い買い物ではなく、今使っている自動車が動いているうちは買い替える気にならないものだ。

それでもエコ意識には関心があり、今の車を使いながら新エネルギーを活用したいという人に向けて誕生したのが、「Hydrogen Add On solution」プロジェクトだ。


水素燃料システムを外付けで導入

このプロジェクトの特徴は、何と言っても既存のガソリン自動車を水素自動車に変えてしまうという大胆な発想にあるだろう。

現在、世界には15億台ものガソリン自動車が使用されているとされており、Co2排出抑制が叫ばれるようになった今でも、毎年1億台ものガソリン自動車が新たに生産されている。

一方でCo2排出ゼロの自動車は、世界でいまだに300万台程度にその数は止まっており、まだまだ自動車の排ガスゼロには程遠い現実が数字からうかがえる。

一般的にガソリンが安いのは産油国やその近隣諸国で、こういった地域では自動車の需要も高く、どうしても燃料代を抑えられるガソリン車の需要が高まってしまう。

そのためわざわざエコカーを購入するメリットは小さく、同時に燃料を補給できるステーションもガソリンスタンドの他にないため、まずはエコ意識が比較的高く、新エネルギー開発が進んでいる先進国から積極的に進めていく必要があるだろう。

ガソリン自動車をカスタマイズして水素自動車へ「Hydrogen Add On solution」

そこでこのプロジェクトでは、外付けの機構を新たにガソリン車に取り付けることで水素自動車にしてしまい、Co2の排出を抑えるという方法が採用されている。

この外付けの機構を取り付ける上では、すでに備え付けられている車のエンジンに手を加えることはない。ガソリン供給部分を取り替え、水素によってエンジンが動作するよう設計するものとなっている。

低コストで導入するための取り組み

現在はまだプロトタイプモデルの運用となるため、量産体制は整っていない。しかしながら仮に製品版が完成した場合、その価格は定価で5000ドルに満たない価格になるだろうと推測されている。

もちろんこれは外付けの機構となるため、運用には取り付けのためのコストも発生する。しかしこのプロジェクトが製品化するほどの成功を収めれば、各国の減税措置を受けられることも考えられるため、消費者が支払うことになる金額はこれよりも安く収まってくれることになるだろう。

もちろん、この水素機構を導入したからといって、もうガソリンで走ることができなくなるというわけではない。水素が切れてしまった時などは、ガソリンへと切り替えて走行を継続することができるので、いわゆるハイブリッドカーとしての運用も十分に可能だ。

実際、この機構の開発者は自家用車であるビートルに水素機構を導入し、二酸化炭素の排出を大きく抑えることに成功している。その数値は導入前と比較して15%程度にまで排出が抑えられており、最大で0.1%にまで排出を抑制することに成功したそうだ。

もちろんこれは実験段階での数字であり、ビートルのような小型車でこれだけのパフォーマンスを出せるようになるためには課題も多い。だが、このプロジェクトのポテンシャルはその結果から、かなり期待できるものになっていると考えられそうだ。

この水素燃料プロジェクトは現在Kickstarterで出資者を募っており、調達した資金は中古車を購入し、新しい水素デバイスをガスコンバーションキットを導入するための実験に使いたいとしている。