エアコンのあり方を再定義。太陽光でタービンが動く「SOLTAIR」

私たちが普段生活している地上の気温は、少しづつ上昇を続けている。日本では特に気温上昇による弊害が大きく、夏の季節になると30度を超えるのは当たり前で、地域や日によっては40度越えを記録するくこともしばしば見かけるようになった。

また単に気温が上昇するだけであれば、日差しを遮るだけでなんとかなるものだが、日本では湿度の問題もある。気温だけでなく湿度も高いせいで体の放熱がうまくいかず、日陰や室内にいても熱中症で倒れたり、時として命の危険にさらされてしまうこともある。

そういった事態を回避するためには、エアコンの利用が不可欠だ。使用頻度は人や場所にもよるが、今や日本では数少ない避暑地とされてきた北海道においても、夏場に備えてエアコンの設置が必要とされるようになってきている。

「SOLTAIR」はそんな温暖化時代を迎える上で活躍が期待できる次世代のエアコンとなっており、環境負荷を抑えながら室内の冷却を行うことができる。

省エネ・省コストを同時にこなすソーラーパネル

エアコンは確かに夏場は欠かせない装置かもしれないが、懸念されるのはエアコンそのものが発する熱や排気物、そして消費する電力である。

地球温暖化や気温の上昇は、全面的にではないにせよ、エアコンから放出されるガスや熱気、電力を供給する発電所によって引き起こされていた側面もある。今日ではフロンなどを輩出するエアコンや電化製品の使用は禁止されているため、オゾン層の破壊が著しかった時代に比べると環境への影響は抑えられているものの、都市部でのエアコンの使用は空気を温め、さらなる気温の上昇につながっている。

また、エアコンを使用すればするほど、夏場の電力消費量は増大し、発電所への負担も大きくなる。最近では節電を呼びかける動きもあるが、無理にエアコンの使用を控えてしまえば、文字通り生命に関わる事故が起きてしまいかねない。

できる限り少ない電力で各家庭を最大限冷却する必要があるのだが、SOLTAIRはソーラーパネルを備えることで、必要な時だけ冷却を行える。

エアコンのあり方を再定義。太陽光でタービンが動く「SOLTAIR」

SOLTAIRが備えるソーラーパネルは、通常の電力を生成するパネルとは勝手が異なる。SOLTAIRのパネルは太陽光から熱を生成することで、電力に変換するよりも効果的にエネルギーを蓄えておくこともできる。バッテリーに蓄電するのではなく、水を熱湯にして保管しておくため、効率が良いのである。

バッテリーではなく熱湯を蓄えておくというアイデアは、従来のソーラーパネルと比べて経済的にも優れている。まだ開発段階であるため、具体的にどれほどのコストカットに繋がるかは明確ではない。ただ、これまでよりもはるかに少ないパネル数と、バッテリーいらずの設置となるため、初期費用として必要な設備投資の額ははるかに小さなものとなるはずだ。バッテリーを使用しないことで、廃棄の際に生じる環境への負荷や経済的なコストも抑えられるため、導入にも廃棄にも必要以上の負荷を必要としない。

太陽光発電は、初期投資の回収に何年もかかっていたことがデメリットとして挙げられていたが、SOLTAIRであればはるかに早いタイミングで原価を回収することができそうだ。

世界基準の高品質なエアコンを目指して

そしてもう1つの目玉となるのが、蓄えておいた熱湯を効率よくエアコンの運用に生かすためのプロダクトづくりである。すでにデモンストレーション用のユニットは完成しており、2.5トンサイズのシステムは機能している。

現在の目標はシステムのさらなる小型化で、目下1.5トンサイズのものを製作している。新しく画期的な空調システムを表彰する、インド発のGlobal Cooling Prizeは1.5トンの空調システムを審査の対象としているため、この基準をクリアすることができれば、システムの一般販売と世界的な普及に大きく近づくことになるだろう。

エアコンのあり方を再定義。太陽光でタービンが動く「SOLTAIR」

空調システムの問題はインドのように、先進国よりもむしろ発展途上国において深刻な面もある。人口が多く気温も高い地域で、質の悪い空調をフルパワーで活用するよりも、最高レベルの空調を用意し少ないエネルギーで冷却を行うことができれば、結果的にその地域や地球環境にとってもプラスに働くのだ。

SOLTAIRプロジェクトは現在Kickstarterで資金調達を行なっており、10ドルからこの企画を支援することが可能だ。また出資額に応じて様々なリワードを受けることもでき、Tシャツやデカールなど、金額によってもらえるアイテムは異なる。