シエナCEO、ジャパン・メディア・ラウンドテーブル開催

ネットワーキング用のシステム、サービス、ソフトウェアを手掛けるネットワーキング業界の先駆者であるシエナは6月11日、ジャパン・メディア・ラウンドテーブルをシエナ東京オフィスで開催した。来日したシエナ社長兼CEOのゲーリー・スミス氏からは「デジタル革命が世界を変える」をテーマに昨今のデジタル環境についてグローバルな視点から説明。さらに日本シエナコミュニケーションズ代表取締役社長久米博之氏は日本市場におけるイノベーション展開について説明した。

NTTグループとの取引20年以上、シエナと日本、世界市場顧客

シエナはネットワークのシステムとサービスを提供するソフトウェア企業である。シエナの取引先は全世界。その数は北米、ラテンアメリカ、欧州、中東アフリカ、アジア太平洋全体で1500以上に上る。その内、サービスを提供する大手サービスプロバイダの割合は85%を占める。また35か国以上でネットワークの拠点を置くシエナの従業員数は6000人以上を数える。主にAdaptive Network™を生み出し、展開することで、取引先の顧客がエンドユーザーにとって価値ある経験を提供し、よりよい結果を引き出せるようサポートするのがシエアの役割にある。

日本シエナコミュニケーションズ久米博之社長は「6000人の従業員を有するシエナは、本社はドイツ・ハノーバーにあり、開発拠点は1500人規模のカナダ・オタワにある。また新たに1300人規模の開発拠点をインドに構えたところだ。世界中にネットワークを広げているが、中国で売らない、買わないこともモットーのひとつにある」と説明した。続いてシエナが目指すビジョンについては「ネットワークの進化形を生み出すために、投資の大半はAdaptive Network™に集中している。具体的にはインテントベースの方針設定において、ソフトウェア制御と自動化、分析とインテリジェンス、プログラマブル・インフラストラクチャーはオペレーターの意図を柔軟に対応できるネットワークを築いている。そのベースとして、ビッグデータとスモールデータの組み合わせによって、テレメトリー、イベント、リクエストを反映させている。またインフラ部分は光伝送装置など、常に進化させ、ソフトウェアでコントロール制御できるのがキーポイントだ」と解説した。

さらに、主要の取引先についても紹介していった。ネットワーク市場においてリーダーシップ的存在であるOvum、HIS Markit、Cignal AI、Dell'ORO Groupの4社との取引関係を持つ。またアジア太平洋だけでも主要顧客は20社以上に上る。なかでもシエナとNTTグループの取引関係は20年以上にわたり、グループ各社それぞれにソリューションを提供し続けているという。久米社長は「NTTグループとの取引はシエナジャパン事業の根幹となっている。シエナジャパンと日本のキャリアとのこうした長いお付き合いがあることは、日本の厳しい品質条件にどれだけ応えることができるのかということがわかるものにもなる」と述べた。このほか、楽天のエンドユーザー向けに完全なクラウドネイティブを実現し、現在の4Gから今後の5Gへの展開もスムーズに移行できるように、帯域の拡張も柔軟に対応できることを強調した。具体的には楽天がシエナのデジタルコヒーレント光プラットフォームとネットワーク管理機能を導入。柔軟で回復力のあるネットワークを構築していく。また九州エリアの主力プロバイダーであるQTnetを通じて、九州全土にわたり家庭から企業まで幅広いエンドユーザーを対象にしたサービス提供が行われている。

スミスCEO「経済活動がアジアに戻るのは重要な動きだ」と語る

では、最も急進的かつ破壊的な産業革命の時代をシエナはどのように捉えているのか。シエナのスミス社長兼CEO自ら説明を行い、「大変動を可能にしたのがデジタライゼーション。このデジタライゼーションは人口の変動にも政治経済にも大きな変化を生み出している。なかでも、3つの大きな動きがある。それはアジア経済の復権と、都市化&人口集中、クラウド&モバイルである」と答えた。3つの動きのうち「アジア経済の復権」においては、「世界で最も人口の多い地域の吸引力に経済開発とグローバリゼーションが加わり、2025年までの10年間で新興市場はグローバル成長の70%以上を占め、2025年までに世界のトップ100都市のうちアジアの年が54になる」とさらに補足された。また「都市化&人口集中」については「世界のGDP成長率の半分近くは振興市場となる440の都市が押し上げることになり、そのうち95%は中小規模の都市に集中、人口が密集すれば成長速度とイノベーションの勢いは増し、インフラ需要も増す」と解説した。そして「クラウド&モバイル」の動きについて「かつてないスピードとスケールでビジネスモデルにおける根本的な変化を可能にすることは言うまでもない。20年前、携帯電話を所有していたのは世界の人口の3%未満、インターネットを利用していたのは1%未満だったが、現在、世界人口のうち携帯電話を持つ割合は3分の2、インターネットで通信できる割合は約2分の1にまで伸びた」と説明した。これらを踏まえてスミス社長は「この3つの柱がそれぞれ連携しながら、大きな変化が生まれている。これまでにないスピード感がある。また経済活動がふたたびアジアに戻っていることはとても重要な動きだろう。なぜなら、人口の中心がどこにシフトしているかという点に注目することで、デジタライゼーションの動きもわかるからだ」とまとめた。

デジタル革命が始まったことで、コネクティビティは増大し、大変動のスピードは急上昇。こうした環境にこそ「チャンスが生まれる」とスミスCEOは考える。また組織が生き残るにはすばやく順応し、敏捷でなければならないという。今はデジタライゼーション第1フェーズの段階にあり、『世界の75%がつながっている』『世界には50億人のユーザーがいる』『平均スピード8Mbps』『モバイルAI市場は50億ドル』『グローバルなデータセンタートラフィックは年に5ZB』『データセンタートラフィックの75%がクラウドを利用』という状態である。第2フェーズに到達すると、世界の95%が繋がり、ユーザー数は60億人に増え、平均スピードは30Mbps、モバイルAI市場は200億ドルまで成長、データセンタートラフィックは年に20ZB、そのうち95%がクラウド利用にまで伸びていく」という。

これについてスミス社長は「今は第1フェーズが終わりかけている。データ保存よりも接続が注目されるようになり、ネットワークのトピックが増えているからだ。第2フェーズは分析、自動化の時代になる。今まで過去30年はプラットフォームを提供することが着目されていたが、スマホ時代は分析も自動化も早くなり、スマホという概念も広がっていくだろう。大きな変化が生まれる、ビジネスモデルも変わり、業界全体も生活も変わる。前向きな変化になることを願いたいところ。シエナは社会的な集団として、こうした変化を見通していくことも役割にある」と解説した。

さらに、シエナは競合他社との差別化も図り、「ハイスピード技術は世界屈指。データセンターの数の上でも世界ナンバーワン。政府からエンタープライズ企業まで、取引先の幅広さも強みにある。エンジニアリングとセールス、顧客サポートのエキスパートまでそろえ、世界のすみずみまでカバーしていることがシエナの本質的な強みである」と、最後にスミスCEOは述べた。