3D印刷を自動化するVoodoo ManufacturingのProject Skywalker

アメリカ・ニューヨーク州ブルックリンに本社を構えるVoodoo Manufacturing(ヴードゥ・マニュファクチャリング)はオンデマンドの3D 印刷サービスを行っている。


同社は3Dプリンターとロボットアームから構成される「Project Skywalker」を完成させた。Project Skywalkerは巨大な3Dプリンタから成り、ほぼ自動化された状態で3Dプリントを行うことができる。以下ではProject Skywalkerについて解説していく。

Voodoo Manufacturingとは

Voodoo Manufacturingは2015年に設立された新しいスタートアップ企業。200台以上の3Dプリンタを備えており、オンデマンドの3Dプリントサービスを展開している。機械部品からおもちゃに至るまで、様々なタイプの商品の3Dプリントを行っている。同社の3D印刷システム(「クラスタ」と呼ばれている)は3Dプリンタを結合することで「ロボット工場」を構築することができる。これによって膨大な数の単一部品を印刷することができるため、小ロット生産しか向かないという3D印刷の前提を覆した。

同社は製造にかかる期間の短さや依頼の容易さなどもあり設立後間もなくして2000人以上の顧客に利用されるようになり、40万個の商品の出荷を記録している。

Voodoo ManufacturingのCEOジョナサン・シュバルツ氏は、同社の設備について「これはデジタル工場です」と語っている。「多くの製造工場は、鋳型を作る必要があるか工場設備を一新する場合部品AからBを製造するところから始めなければいけないといったように、いくらかの固定された設立費用がかかります。」と説明したうえで、このように商品の大量生産のために従来型の設備投資を行っている企業は、移り変わる市場に反応することにおいて比較的ハンディキャップを負っているとも述べている。

同社の3DプリンタはWi-Fiに接続されており、印刷内容はコンピュータから指示される。プリントを依頼したい場合、同社のHPのDirect Printingから3D画像ファイル(oblかstl形式)をアップロードして料金見積を請求後、依頼するかどうかを決めることができる。また大量生産を行いたい場合はVolume Printをリクエストすれば1万個までのパーツの印刷を依頼することができる。Volume Printにはデザインサービスも付加することも可能だ。

Project Skywalkerとは

3D印刷を自動化するVoodoo ManufacturingのProject Skywalker

画像出典:Voodoo Manufacturing

Project Skywalkerは完成した制作物を「収穫」できるシステムで、完成後にビルドプレートを取り外して交換することができる完全機能のロボット操作3Dプリンタクラスタである。ビルドプレートの交換はほとんどが人間の作業員が行う作業であり、この作業工程で従業員の労働時間の15%が消費されていることから、同社はこのプレートの交換を自動化したシステムを構築した。

Skywalkerは9台の3Dプリンタと回収されたプレートを従業員が回収できるトラック、また必要に応じて新しいプレートをロボットに供給する「ホッパー」で構成されている。3Dプリンタとロボットアームは専用ソフトウェアと同期しており、印刷が終わるとすぐに制作物が回収されて次の印刷がスタートする。

前述のシュバルツ氏はこのSkywalkerについて「これを初めて完全に運用することは驚異的でした。一晩無人で運用してみたところ、(翌日の)午前中までに14時間連続でパーツを生産していました。私たちは現在これを大規模に展開し、工場の能力を400%近くまで引き上げることができて嬉しく思っています。」と語っている。

実際に同社の3Dプリンタが動いている様子はこちらの動画から確認することができる。

Voodoo Manufacturingの最終目的

同社はProject Skywalkerの技術に満足しているが、最終目標ではない。同社の目標は3D印刷プロセスを自律的かつ無人で実行できる「Lights-Off(消灯)」システムの構築である。照明がない環境下でも低コストかつ短いリードタイムで3D印刷物を大量生産することが可能になり、大きなバッチ生産でより効率的に製品を作り上げることができる。

製品を作る際に金型を用いて行われる射出成形の方が製品のクオリティは高いが、最初に製品を作るための設備投資が必要になる。Voodoo Manufacturingは射出成形で製品を生産する企業と競合関係になることを目指しており、より良い機械の開発を続けている。

Fulfilment By Voodooもスタート

Voodoo Manufacturingは「Fulfilment By Voodoo(フルフィルメント・バイ・ブードゥー、以下FBV)」という新しいサービスをスタートさせた。このサービスは同社でプリントした3D制作物をオンラインで販売できるドロップシッピングサービスで、より消費者がビジネスしやすい環境を整えるものである。

FBVは直接Eコマースストアフロントとつなげるサービスで、3D印刷と品質保証、組み立て、出荷を含んでいる。これにより商品の製造とEコマースをアウトソースすることができる。

FBVの優れているのは「ジャストインタイム」製造と呼ばれる注文が依頼者から行われるとすぐに商品の生産が行われる点だ。

通常製造業においては継続して商品の発注が行われる場合、依頼者側から発注数量の内示が提示される。これは商品の生産計画や製造におけるリードタイムに基づいて算出されるが、発注が近くなると数量が振れる場合もある。そのため商品が足りなくなった場合も考えて倉庫に在庫が保管されるが、これには保管料やハンドリング料といったコストがかかってくる。

しかしFBVでは発注後すぐに商品の製造を行うことが可能なため前もって販売数量と発注単位を事前に予測する必要がなくなり、企業は継続的に製品を製造することができる。これによって高価な倉庫保管料やハンドリング料の発生をなくすことにつながる。

まとめ

3Dプリントは少量生産にしか向かないと考えられがちだが、Voodoo Manufacturingは複数の3Dプリンタを用いた制作物の大量生産が可能である。依頼プロセスもシンプルでわかりやすく、ほぼ自動化された3DプリントのSkywalker Projectは画期的だ。将来Lights-Offシステムが実現すれば完全に無人の状態で連続した商品の製造が可能になるだろう。

FBVも依頼者にとってはビジネスにおける手間を省いてくれるサービスである。特にジャストインタイム製造では継続して商品の発注を行いたい企業にとって使い勝手のよいサービスではないだろうか。すぐに商品の製造が行えるため、在庫の保管料やハンドリング料をカットできるのもそうだが発注量の予測をする時間や手間も省くことができるはずである。

Voodoo Manufacturingの3Dプリントは依頼者のニーズに合わせた商品製造とサービスを用意している。今後の同社のニュースに注目が集まる。