品質+愛着を創る クロコダイルタンナー

AIによるデザイナーやミュージシャンもが登場し、人の手を介さないクリエイティブが注目されている昨今。そんな中で、驚くほどの手間と工程をかけて、made in Japanのクロコダイル革を発信している、東京・墨田区のクロコダイルタンナー、藤豊工業所へ。ものづくりの現場から「クオリティー」という言葉の意味を探ります。専務取締役・藤城耕一さんにお話を伺いました。

インタビューをご覧いただいたbp-Aメンバーの皆さまには、藤豊工業所提供のクロコダイルレザー製品が当たるプレゼントキャンペーンにご応募いただけます。

クロコダイルタンナーの仕事

クロコダイルレザー製品のことはよく知っていても、クロコダイルタンナーという言葉は初めて耳にする方も多いと思います。そもそもタンナーとは何をさすのでしょうか?
クロコダイルタンナーの仕事

藤豊工業所 専務取締役 藤城耕一氏

タンナーという言葉は、いわゆる「なめし」と言われる加工を行う業者や工場を意味します。なめしは、牛、羊、豚、オーストリッチ、パイソンにサメに...、あらゆる皮の加工に共通する工程で、生の原皮(げんぴ)を腐らない状態で安定させるための加工であると同時に、完成形のクオリティーを底上げする工程でもあります。あまり注目はされないのですが、レザー製品独特の風合いや手触り、堅牢度は、このなめしの品質にかかっているんです。

クロコダイルを扱うタンナーは、国内でたったの6社。世界で30社もないと聞きました。

クロコダイルの皮は、なめしに使う薬剤が特殊かつ複雑で、工程の数も、他の皮と比べてかなり多いんです。なめしにはじまって、あとは縫うだけの「革」として完成するまでに、最低でも3か月かかります。世界中のクロコダイルタンナーが長年かけて、独自のレシピを改良しながら品質を競っている状態で、クロコダイルを扱うタンナーが増えることはそうそうないような気がします。

作業場を見学させていただいて、様々な加工方法があるのに驚きました。

技術の多くは、クライアントのオーダーによって引き出されてきたようなものです。いただくオーダーは、定番もありますが、同じくらい、新しくて難しいものも多い。でも、困難なオーダーを叶えることは、フジトヨが腕を上げるチャンスでもあります。実際に、オーダーを受ける中で、数々の新しい仕上げの開発に成功してきました。でも、オーダーをただ待つだけということでもなく、新しい加工を自主的に開発するのも実は得意なんです。たとえば、ヌメ革って昔からありますが、数年前にクロコダイルでヌメを作ったんです。もうそれは大変でしたが、独特の焼け感や経年変化を楽しめる、ものすごく美しい革になりました。

幾度となくトライを繰り返す、進取の精神こそが新しいモノを創り出すモチベーション
幾度となくトライを繰り返す、進取の精神こそが新しいモノを創り出すモチベーション
幾度となくトライを繰り返す、進取の精神こそが新しいモノを創り出すモチベーション
幾度となくトライを繰り返す、進取の精神こそが新しいモノを創り出すモチベーション
「FLEDGE (フレッジ)」という自社ブランド製品も?(ブランドサイトはこちら https://fujitoyo.co.jp/fledge)

FLEDGEは、ワックスが滲むような仕上げの「ブライドルレザー」と、それを現代版に進化させた「リッチエイジング加工」という、2種類の仕上げのクロコダイルをベースにしています。ここまでのみずみずしいツヤとコクをたたえたクロコダイルはなかなかないと思います。ミツロウや牛脂といった温度で状態が変わってしまう天然の薬剤を使うので、さらに手間がかかっていますが、手間の甲斐あって、クロコダイルが本来もっている機能性をじゅうぶんに引き出し、増幅させることができました。革の内部にオイルワックスを含ませることで、軽い引っかき傷程度であれば軽くこするだけで回復してしまうんですよ。あと、クロコダイルは、縫製にも特殊な技術を必要とします。凹凸があって、革がほとんど伸びないためです。だから、このワックスが滲むブライドルレザーは縫製も超高難易度(笑)。そういう意味でも、FLEDGEは、究極の自社ブランドなんです!

FLEDGE
ブライドル加工

ブライドル

リッチエイジング加工

リッチエイジング

新技術が生まれる過程

新しく産まれる技術は辛抱強さが必要なのでは?

気の遠くなるようなトライアンドエラーがつきもので、たしかに辛抱が必要です。ただ、世界中で誰もなし得なかった技術を獲得できた時の喜びはものすごいもの。それこそがものづくりの醍醐味で、モチベーションそのものです。その革でつくられた製品を手にした方にも幸せを感じていただけるなら、苦しみよりも喜びのほうがずっと大きいです。

藤豊工業所ブランドアイデンティティ

AIとタッグを組むなら?

AIやロボティクスの台頭が次の産業革命と言われていますが、これら新しい技術についてどのように考えますか?
AIとタッグを組むなら?

原産国から原皮が到着すると、まず、硬いうろこがついたままの塩漬けの段階で、触ったりにおいをかいだり、薬剤に浸けたりしながら、皮の状態を正確に把握します。同じ原産国で同じ品種であっても、状態が異なることがよくあるんですが、どんなにクセの強いような皮でも、美しい革に仕上げてみせるぞと腕がなるのが我々職人です。でも、AIは少なくとも腕がなるようなことはないでしょうし、むしろ、我々の腕がなるようなタイプの皮は、エラーの要因になる気もしますが、どうなんでしょうか?新しい技術はつねに興味がありますが、とりいれる領域ととりいれない領域を、我々職人が見極めることが肝心だと考えます。

工程をAIがカバーすることはできない?

なめし、染色、仕上げと、レシピは増えていく一方なので、このピックアップをAIに任せられたら間違いなく効率的です。もしかしたら、薬剤の調合までできるかもしれませんね。ただ、AIがどんなにスピーディーに正確に調合してくれたとしても、それをそのまま使うことは、少なくともフジトヨでは絶対にしませんね。皮の状態に合わせて、微調整したり、別の薬剤をプラスしたり...。料理と同じです。本に書かれた分量の通りに作ればおいしくなるけども、食材の状態に合わせて分量を加減すればもっとおいしくなる!

天然素材の無限大ともいえる個体差のパターンを、AIはどこまで正確に学習できるのか、もちろん興味はあります。ただ、AIがよしと判断するクオリティーと、生きた人間を感動させるクオリティーは、完全には一致しない気もします。いいところまでは近づけるのかもしれませんが...。人間を感動させるクオリティーを追求するのは、やはり、繊細な五感とインスピレーションを備えた我々職人の役割であるべきだと考えます。

AIとタッグを組むなら?
AIとタッグを組むなら?

AIには絶対に任せられない領域とは?

海外に買い付けにも行かれるそうですね。

年に数回タイ、ベトナム、カンボジア、オーストラリア、フィリピン、マレーシアなどのクロコダイルの原産国を訪れますが、そういえば、この業務もまた、AIには絶対に任せられない領域です。取引先がどんなにグレードの高い原皮を持っていても、信頼関係を築けていない相手には見せてさえくれないものですが、信頼関係は人間同士でないと築けませんからね。

どうやって信頼関係を築く?

相手の目をしっかり見て話すとか、食事を一緒に楽しむとか、当たり前のことですがやっぱり大事です。昔、カンボジアの取引先でクロコの生き血で乾杯したこともありましたよ。ところが、クロコダイルの生き血に免疫のない私は翌日病院に運ばれるはめに...。帰国後もしばらくお見舞いの連絡がやまず、恐縮しきりでしたが、このハプニングをきっかけに関係性がぐっと深まったのも事実です。ものづくりの誠意と熱意がきちんと伝わっていれば、ハプニングさえ味方してくれる気がします。彼らとまた乾杯したいけど、今度はお酒がいいですね(笑)。

「クロコの生き血」で乾杯

クオリティーとは?

手間と時間を惜しまずに丹念に創りあげるクロコダイルレザーはきっと利用者の心に響くと思います。
最後に藤豊工業所にとって「クオリティー」とはどのようなものを指しますか?
クオリティーとは、この一連の結果で評価されるもの

日本人が考えるクオリティーは、作りや素材のよさを示すことが多いですよね。ところが、海外との取引を重ねる中でわかってきたのは、彼らが言うクオリティーには、「愛着がわく」とか「感性に響く」とかいうような情緒面でのニュアンスを含むということでした。ある時このことに気づいて、フジトヨが長年かけて追求してきた理想のクロコダイルに、さらに自信をもつことができました。

理想のクロコダイル?

クロコダイルの革は、繊維質が細かく密で、伸びたりよれたりしづらくて、製品になったあとの劣化も著しくゆるやかです。大げさでなく、親子三代で使うことのできる丈夫さです。ところがかつての日本では、革がピカピカに輝くグレージング仕上げが主流で、バッグなどは特に、艶が手の脂で曇らないように、よそゆきの時にしか使わないような風潮が強かったようですね。でも、私の父が、それではクロコダイルの恩恵をじゅうぶんに享受できなくて勿体無いと感じ、30年ほど前にヨーロッパの技術を取り入れて、マット仕上げという技術をラインナップに加えたんです。以来、フジトヨではその技術をブラッシュアップし続けているのですが、革本来のしなやかさを生かす仕上げなので、デザインする時の自由度がとても高いんです。あと、新品の時はおとなしめの艶なんですが、他の革と同じように、普通に触っていいんです。そうやって使い込むほど艶が深まっていくんですが、艶が深まったクロコダイルって、本当にきれいなんですよ。

仕上げ技術のラインナップは少しずつ増やしていますが、使い込むほど美しさが増して、新品の時よりも愛着が深まるような仕上げにこだわり続けます。それが、革のことを誰よりも知っているタンナーにしかできないクリエイティブであり、私たちの考える最高のクオリティーです。

本日はありがとうございました。

bp-Aメンバーズ スペシャルプレゼント

高級クロコダイルレザー仕様のbp-Aオリジナルキーホルダーとシューホーンをbp-Aメンバーズの皆様の中から抽選で各3名様へプレゼントいたします。

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長年の技術の結晶から産み出された藤豊工業所のクロコダイルレザー製品を是非、ご堪能ください。

ご応募は以下のフォームよりお願いします。

応募締め切りは2018年10月末となります。

抽選結果は発送をもってかえさせていただきます。

カテゴリー: 特集 , OPINION , インタビュー , Cutting Edge   

川名 雄介

川名 雄介Author

bp-Affairs理事。コーポレート及びプロダクトブランディング&マーケティングの専門家。Webマーケティングに精通。15年以上のキャリアを持つ。bp-A理事とともに、unChain代表を務める。

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