DNA検査データで個人向けの栄養管理を行うGenoPalate

DNAは両親から受け継いだ遺伝子情報が子に渡される。髪の毛の色や目の色、体型といった目に見える外見的な特徴や目に見えない病気の有無など様々だ。

人間は遺伝子が原因の病気のリスクや、普段食べるものが誘因となって将来発症しやすい病気リスクを持っているが、これには個人差がある。後者についてはどの食べ物もしくは飲み物をどれくらい摂取すれば良いのかという情報はあくまでも目安で不確かである。不確かだからこそ人々は「健康に良い」という情報に振り回されやすい。

しかし、その人に合った食事内容を的確に教えてくれるサービスがあったらどうだろうか。

アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーに拠点を構える「GenoPalate」という企業は、DNAを検査してパーソナライズされた食事の提案を行うユニークなサービスを提供している。以下ではGenoPalateについて解説していく。

Geno Palateとは

DNA検査データで個人向けの栄養管理を行うGenoPalate
画像出典:Geno Palate

GenoPalateは分子生物学者のSherry Zhangによってそのアイデアが実現された。Zhang氏は肥満や代謝異常の因果関係についてDNA技術を活用して収集したデータから分析・研究を行なった。同社のサービスでは個人の遺伝子データ、人口統計情報、ライフスタイル情報を分析し、DNAベースのプロファイリングを行うことで、食事に関してパーソナライズされたアドバイスを得ることができる。

Zhang氏は同社のサービスについて、ヘルスケアというよりはDNA検査結果に基づいた栄養状態に関する意思決定を手助けすることを強調している。同社の検査キットは2017年から販売開始され、約500名のユーザが栄養状態に関するアドバイスを受けたと報じられている。

Geno PalateのDNA検査キット

同社のユニークなサービスはDNA検査とライフスタイルに関する質問を行うことでパーソナルデータを導きだし、将来発症しやすい疾患を予測。また個人に合った食事内容を提案する。DNA検査を受けるためには、同社のHPに掲載されている検査キットを購入する必要がある。採取した唾液からDNA検査が可能で、結果は4〜6週間で返却される。

キット自体は199ドルで購入可能(2018年8月現在)だが、DNAを検査する23andmeやancestry.comといった他のサービスで分析結果を得ているのであれば99ドルで栄養に関するアドバイス結果を受け取ることができる。またこれとは別で「Personalized Menu」は3回分もしくは5回分の食事キットを選ぶことができ、毎日のメニューについてアドバイスをもらえる「One-to-One menu」は199ドルだ。

Zhang氏は「もし私たちが人々の遺伝子構成を知ることを手助けすれば、それは本当に食事療法を計画することを手助けすることができます」と語っている。また「遺伝子情報に基づいた食事をすることやメタボリックシンドロームの発症につながるリスクを避けることを手助けすることができます」とも述べている。
DNA検査データで個人向けの栄養管理を行うGenoPalate

画像出典:Pixabay

2015年にアメリカ疾病予防対策センター(CDC)が20歳以上のアメリカ人約10万人を対象に行った調査では肥満率が30.4%と過去最高を記録し、アメリカ人の肥満率が深刻であることがわかった。

肥満は心臓病や糖尿病や脳卒中といった他の病気を誘発する原因となるため、これを避けるためには日々の食事内容に敏感になる必要がある。

アメリカに限った話ではないが、肥満解消のために行うダイエットは人によって効果がまちまちなため極端な方法に頼る人も多い。極端に偏ったダイエットは失敗につながりやすいので栄養状態を保ちながら健康的に減量することが一番良い方法だが、具体的にどういった食事内容ならば良いのか知る機会がなかったのではないだろうか。その意味では、Geno Palateのようなサービスは遺伝子情報に基づいた栄養管理を行うことができるため画期的なアイデアだろう。

DNAに基づいた栄養や運動に関するアドバイス提供サービス

Geno Palateのサービスの目的は「DNA情報に基づいた、個人に合った正しい食事の提案」である。しかしDNA検査を元にした健康管理サービスを提供している企業はGeno Palateだけではなく、フィットネスや肥満解消のためのサービスを行っている企業はいくつか存在する。以下では2つの企業について取り上げて簡単に説明する。

・Fitness Genes

Fitness Genesは70万のDNAデータポイントから洞察とアドバイスを得ることができる。同社のサービスでは利用者の運動、栄養、ライフスタイルの目標を達成するために40以上のDNAを分析する。利用者のライフスタイルに関する質問と組み合わせて、筋肉繊維のタイプ、代謝、有酸素能力、インスリン機能、乳酸分解、カフェイン応答、睡眠サイクルなどについて分析結果やアドバイスを得ることができる。

検査を受けるためにはDNA検査キットで唾液サンプルを採取しイギリスにある研究室に送付すると2~3週間で分析結果が届く。DNA分析、パーソナライズされたトレーニングアドバイス、遺伝的に調整されたダイエットプランといったアドバイスを得ることができる。

・Azumio

Azumioは健康とフィットネスに関する複数のアプリを開発・提供している企業で、アプリのダウンロード数は7,000万回以上を記録している。

同社が開発したアプリケーションで「Calorie Mama AI」があるが、このCalorie Mama AIはカメラで食事を撮影することでカロリーと栄養の摂取量をユーザに教えてくれる。さらにウォーキングやジョギングといったユーザの身体活動を自動的に追跡することもできるため、ダイエットにも効果があるとされている。Azumioはユーザがよりフィットネス目標を達成しやすくするためにDNAベースの洞察を得られる機能を導入した。新しい機能ではBMIの傾向、オメガ3脂肪酸の必要性、飽和脂肪と加糖飲料が体重に及ぼす影響やグルテン感受性や筋肉の種類と強さなどのデータを確認することができる。

参考:Azumio
http://www.azumio.com/

まとめ

Geno Palateをはじめとして遺伝子検査を活用した健康管理や運動管理サービスをいくつか紹介したが、スタートして間もないものばかりであるため有用性や信頼性についてはまだ不透明である。

巷には眉唾的なものも含め様々な健康管理・改善に関する情報があふれているが、全ての人が膨大な情報を正確に理解したうえで最適な方法を判断することは難しい。不確かな情報や誤った情報を盲目的に信じるよりは、遺伝子検査データに基づいた最適な食事や運動のアドバイスを得ることのほうがより有効であると言えるだろう。遺伝子の検査結果を活用することで個人の健康維持につなげられる可能性も大いにあるが、個人のデータを収集することで遺伝子と外的環境の相互作用についての研究も進められていくことだろう。