マセラティの生産工程を自動化、Comauのロボットソリューション
Comau Roboticsは多関節ロボットをベースとした革新的なロボットソリューションと、複雑なボディーショップの操作を完全に自動化する高度なソフトウェアアプリケーションを開発。マセラティの生産拠点であるトリノで製造されているQuattroporte(クアトロポルテ)とGhibli(ギブリ)の2種類の生産工程において、このComauのロボットソリューションが活用されている。
Comauのロボットソリューションがどのようなものであるのかについて解説する。
Comauとは
Comauはイタリア・トリノに本社があり、15カ国に生産拠点を持つフィアット・クライスラー・オートモービルズ傘下の多国籍企業。Comauの名前の由来はConsorzio Macchine Utensilの頭文字からきている。創業は1970年代で、北アメリカと南アメリカ、ヨーロッパと拠点を増やし、アジア地域にも拠点を持つ。
Comauのロボットソリューション
Comauはイタリア・トリノにあるマセラティの生産拠点においてボディ・イン・ホワイト(塗装前のボディシェルのこと。車体を組み合わせた状態)、スポット溶接、その他重要な組み立てに関連する複雑な作業を実行するための産業用ロボットを提供している。
Comauはマセラティの組立プロセスに82台のロボットを導入することで構築時間を短縮し、手作業と自動化プロセスを完全に調整することができ、部品やシャーシ長が異なるモデルで部品とサブグループを同時に処理できる。
このシステムにより収集された履歴および統計データを使用して、保守およびコンポーネントの交換を管理することも可能だ。ロボット自体がオペレータとの通信を取れるように設計されており、部品の摩耗を報告することができる。 これによって処理能力の非効率性や休止時間につながる前にオペレータが介入できるようになり、迅速に問題に当たることができる。長期的な再現性と効率性また製品の品質を保証する。
またこのシステムでは生産する車両がクアトロポルテもしくはギブリのどちらかを自動的に判断するようプログラムすることができる柔軟性を持っている。生産ニーズに応じて2つのモデルのいずれか、もしくはその両方を連続フローで生成することができる。
高度な正確性
マセラティのプロセス全体では、各モデルに4785個の溶接スポットを挿入して部品とサブグループの組み立てを行う。このうち、1083個はあらかじめ実行されており、板金加工段階では3702個が作成されている(さらに言うと1025は手作業で2677は自動的に実行される)。ライン状では190個のリベットと243個のアーク溶接スタッドが各モデルに適用されている。
Comauの産業用ロボットによる生産工程の自動化は高度な正確性によって実行されている。Comauのロボットを活用した生産ラインの様子は、こちらの動画で確認することができる。
https://www.youtube.com/watch?v=iHM-oHuPe0U
マセラティの生産における課題とComauのソリューション
Comauの公式HPによると、マセラティの生産工程における目標とComauのソリューションについて次のように記載されている。
マセラティの目標
・中断のない連続フローでの複数モデルの並列生産
・溶接・サブコンポーネントの組み立てからタッカースタッドの取り付け・ローラーヘミングまでの工程の完全自動化
・同時溶接と組み立て作業によるシーケンス内処理
・高度な精度と正確性
この目標に対して、Comauは次のようなソリューションを提示した。
・シートメタル作業ラインとボディ組立ラインとのシームレスな統合
・完全自動化、複数モデル、並列生産ソリューション
・要求に応じて一方または両方のモデルを作成する柔軟性を競う
・マセラッティの品質基準を保証する包括的なテストとコントロール
提示したソリューションに対して、次の結果を得ることができた。
・構築時間を短縮し、手動プロセスと自動プロセスを完全に調整
・コンポーネントとシャーシ長さが異なるモデルでのパーツとサブグループの同時処理
・板金加工フェーズのでの最適な316秒のサイクルタイム
・各モデルの4,785個の溶接スポット:板金加工段階で3,702個が実行され、2,677個が自動的に実行
・各モデルに190リベットと243アーク溶接スタッドの自動適用
・ロボットで半構造接着剤を66メートルに広げた(手動では13メートル)
・年間50,000台の高級車の生産能力
Comauの開発したロボットによってマセラティの製造工程における活用が行われていることが非常にわかりやすくまとめられている。
スマート・ファクトリーによる生産性向上の期待
ドイツ政府が推進する製造業におけるデジタル化を目指す「インダストリー4.0」を機に、製造工場で用いる機器のIoT化や産業用ロボットを導入する「スマート・ファクトリー」に注目が集まるようになった。
フランスのコンサルタント企業のCapgeminiの最近の世界的な調査によると、スマート・ファクトリーによって世界の自動車産業は2023年までに年間1600億ドルの生産性向上がもたらされると推定されている。
この調査は2017年2月から2018年1月にかけて、自動車部門の上級役員326名を対象に行われた。調査に回答した役員は取締役レベル以上の人物から得られたもので、組織のスマート・ファクトリー・イニシアチブと密接に関連している。対象地域は中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカの8カ国。調査サンプルはOEMとサプライヤ間で均等に分配されている。
レポートの中では、自動車メーカーは2022年までに工場の24%がスマートファクトリーの実現を期待していると述べられている。自動車メーカーの46%はスマートファクトリー構想があり、スマートファクトリーのために2億5000万ドル以上の投資を行った自動車メーカーは49%にのぼった。グローバルなトップ10の自動車メーカーは、完全なスマートファクトリーの導入から5年以内に年間46億ドル、または年間50%の営業利益の増加実現を期待している。
自動車業界では今後数年で生産性向上のためにスマートファクトリーが急速に導入されていくと予想される。Comauが行ったマセラティの車両生産工程の自動化は、スマートファクトリーの取り組みの好例として挙げられるだろう。
・RT Insights
https://www.rtinsights.com/case-study-building-a-smart-car-smartly/
・Robotics and Automation News
http://roboticsandautomationnews.com/2017/06/16/comau-provides-insight-into-maserati-plant-in-italy/12926/
・Capgemini
https://www.capgemini.com/news/smart-factories-automotive/