物流改善が期待できる自律移動ロボット3つの活用事例

Eコマース市場は世界的に伸びが大きく、経済産業省の「平成 29 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2017年における世界のBtoC取引額(物販系、サービス系を含み、旅行関連とイベントチケットを含まない)はUSD2.3兆を記録し、その後も市場規模は拡大する予測で2020年にはUSD4.1兆に届く見込みである。

いま、世界の大手Eコマース企業やロジスティクス関連企業ではロボット自動化による物流改善がいたるところで行われている。これを可能にしているのが「自律移動ロボット(Autonomous Mobile Robot、以下AMR)」だ。物流業界で活用されているAMRは、人間の代わりに商品の照合作業やピッキング、また運搬を行うことができる。

以下では、物流の自動化を手助けするAMRについて3つの例を取り上げていく。

inVia RoboticsのInVia Picker

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画像出典:Vimeo

アメリカ・カリフォルニアに拠点を置くinVia Roboticsは、商品ピッカー用のトート(ボックス)回収、在庫補充、サイクルカウント、品目照合を含むいくつかの倉庫業務を一貫して実行するAMRの「inVia Picker」を開発している。さらに、Robot-as-a-Service(RaaS)によりロボットを完全にコンピュータ制御された状態で用いることができる。

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画像出典:inVia Robotics

inViaPickerは商品をピックアップする際、吸盤で商品全面に取り付けられたテープ部分を吸着し40ポンド(約18kg)までの商品をピックアップし運搬することが可能だ。さらに梯子を伸ばすことで最大8フィート(約24m)の棚の高さまで伸ばすことができるため、人間の作業員が梯子を登ることなしに商品を手にすることができる。

またinVia Pickerに取り付けられたセンサーは商品コードや棚コードを読み取ることが可能で、暗所でも機器に内蔵されているライトによって作業することもできる。

同社の共同設立者兼CEOのLior Elazary氏は「洗練されたAIとヴィジョン・アルゴリズムを利用することによって、当社のロボットは既存の倉庫環境に適合することができます。これは当社のロボットが異なる棚と同じように全ての種類のトートで動作することができることを意味しています」と述べている。

同社のRaaSは米国最大の3PLであるRakuten Super Logisticsでも活用されている。

参考:inVia Robotics
https://www.inviarobotics.com/

Fetch RoboticsのFetch Core

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画像出典:Fetch Robotics

カリフォルニア州サンノゼにあるFetch Robotics社のAMRは倉庫内での在庫の特定と追跡、また運搬が可能だ。同社は商品の形状や運搬用途に合わせたロボットを複数開発している。

HMI Shelfという製品では、ラック部分に運搬物を載せたあとに機器に取り付けられたモニターで目的地を指定することで自動的に移動を開始する。他にもパレタイズされた重量のある荷物を載せて運搬するFreight500/Freight1500や、Fetch Cartという製品と組み合わせて用いるCart Connect、また新しく加わったRoller Topという製品はベルトコンベアで流れてきた商品をそのまま受け取って移動させることができる。

フェッチシステムには、モバイルロボットベース、モジュラーアタッチメント、独自のクラウドベースのソフトウェアシステムが含まれている。

同社の「Fetch Coreクラウドシステム」はインフラストラクチャを変更することなしに既存の倉庫環境に即座に適応させることが可能で、ロボットデータから洞察を得て物流改善に役立てることができる。操作には難しい知識が必要なく、シンプルなUXで誰でも簡単に操作できる仕様となっている。例えば、同社ソフトウェアを使ってPC上でAMRに侵入してほしくないエリアをドラッグ&ドロップで指定することで簡単に侵入禁止エリアの設定をすることができる。

Fetch CoreはオランダのDHL流通センターや米サンフランシスコのRKロジスティクス、またドイツの部品メーカー・Mahre Behrで活用されている。RKロジスティクスではFetch Roboticsのロボットが30%から50%の商品をハンドリングしており、Mahre Behrでは在庫トラッキングにRFIDロボットを活用している。

参考:Fetch Robotics
https://fetchrobotics.com/

Vecna RoboticsのAutonomy Robotics

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RT4500 Tugger
画像出典:Vecna Robotics

米マサチューセッツ州ケンブリッジに本社があるVecna Roboticsは、自律的なスタッキング機能を備えたAMRをいくつか開発している。同社の開発したAMRは多くの異なるセンサーとセンサーから得た情報を組み合わせてロボットの位置情報やタスクの処理を理解することができる。

物流大手のFedExでは、VecnaのAMRを利用して大型の荷物を地上の配送地点への輸送や並べ替えを行う例が知られている。FedExが導入しているVecnaの製品で「RT4500 Tugger」と呼ばれる運搬車両があるが、フラットベッドカートもしくはカートの列車を使用して大きいサイズの品物を2拠点間で自動的に移動させることが可能で、生産性を最大化するように設計されている。RT4500 Tuggerはスイッチのフリックで手動もしくは完全自律的に動作するように設計されており、ラック・ビン・パレット・サイズオーバーまたは運搬が難しい品物のラインサイド補充や水平輸送などの輸送に適している。

参考:Vecna Robotics
https://robotics.vecna.com/

物流に自律移動ロボットを導入するメリットとデメリット

倉庫におけるハンドリング作業は人間の作業員がピックアップ表を確認しながら在庫のある棚へ取りに向かい、必要な商品の数量をピックアップすることを繰り返す作業が行われている。この作業は時に退屈で、出荷間違いなどの人的ミスや、倉庫内での荷崩れ、高い場所にある商品を落とす、また作業員が高い場所から落下するリスクや、フォークリフトなどの運搬機器と接触するといった事故も起こりうるため作業員には危険も伴う。

ロボットによる自動化を大規模に実施すれば多くの人間の作業員を投入することなしに24時間体制の作業も可能で、作業員が怪我をするようなケースも減っていくだろう。AMRは多くがシステム制御によって遠隔地から操作ができるため、導入によって少ない人員で作業を行うことができる。

ロジスティクスにロボットを導入し自動化をはかることで次のようなメリットがある。

・人件費削減
・商品照合作業を容易にする
・正確な商品のピックアップ
・ピックアップ後商品を棚へ返却する
・タイムロスを減らすことで生産性アップ
・倉庫内で起きる労災件数を削減する

逆に、デメリットもある。

・導入コストがかかる
・機器トラブルがあった際の修理に時間がかかる場合も
・高度に自動化された倉庫ではシステム不具合で作業がストップするリスクもある

デメリットももちろんあるが、AMRを物流において活用することで人間の作業員が行なっていた作業の大部分を代替することができる。現在、世界の大手ECサイトや物流企業では物流の大部分を自動化するために多額の設備投資や研究・開発を行なっており、倉庫内だけでなく運搬用のトラックも自動運転技術によって実現させようとしている。物流における自動化は非常に早いスピードで開発が進んでいる分野で、生産性と効率化を高めるためにはAMRの活用がキーとなっていくだろう。