CATVイノベーション調査結果分析

全国のケーブルテレビ局を対象に、一般社団法人ビジネス&パブリック アフェアーズと放送業界誌の「放送ジャーナル」が合同でケーブルテレビ局のサービス進化に関わる「第一回目CATVイノベーション」アンケート調査を実施した。この結果を受けて、世界有数のODM専業メーカーであるサーコム社(本社・台湾台北市)の日本法人、サーコム・ジャパン代表取締役社長の伊藤信久氏に改めてケーブルテレビ市場のビジネス課題について話を伺わせてもらった。

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地域人口5~10万規模は新サービスの導入がしやすい

「第一回目CATVイノベーション」アンケート調査の実施期間は2018年2月、回答社数は131社に上った。調査の目的は現在、さまざまな課題を抱えるケーブルテレビ局が環境の変化によるサービス進化に対し、どのような影響や対策方法に関心を示しているのか、その実態を探るものである。アンケート調査結果からどのような感想を持ったのか、まずは伊藤社長に伺わせてもらった。

伊藤:「ある程度は想定内の結果でしたが、実際にどのようなお考えをお持ちなのか伺わせてもらいたかったので、アンケート調査後、近畿や中国、四国などを中心に12局ほど個別に訪問させてもらいました。すると、新たなサービスに対して迷っていらっしゃる部分もありながら、前向きな面もお聞きすることができました。訪問した局はおしなべて地域の人口が5万から10万件規模という共通点がありました。こうした規模は新たなインフラが導入しやすいというメリットがあることを教えていただきました。数千万規模の人口になると、インフラにかける投資規模が大きくなりますから、慎重にならざるを得ませんが、5万程度の人口規模であれば、初期投資は低く、回収もある程度期待できるというわけです。また日頃から契約者とコミュニケーションが図れている様子も伺うことができました。顧客との関係性を築いていることによって、新しいサービスが求められているのかどうかの判断もしやすいと思います。お祭りなど地域のキラーコンテンツを持っていらっしゃる局の多くはコミチャンに注力し、経営努力されていることよって多少なりとも収益が確保できることから、新しいサービスを導入する余力を自局で生み出していました。」

IoT・スマートホーム他、新技術への取り組み

IoT・スマートホーム他、新技術への取り組み

今回の調査では注目されているイノベーションサービスのひとつ「IoT・スマートフォーム」など新技術や新サービスに対する関心度についても重視した。「IoT・スマートフォーム他、新技術への取り組み」に対して「興味があり取り組み中」は51.5%、「取り組みに意欲的」は12.4%、「興味が無く、実施は未定」は36.1%という結果を得たことから、回答社の約6割は新技術サービスへの取り組みに関心を示していることが明らかになった。
さらに、「AIによるIoT・スマートホームサービスを提供するもしくはしている場合の課題」に対する答えに「緊急時対策サービスの向上」が30%、「防犯・防災サービスの向上」が28%、「省エネルギー化サービスの提供」が9.7%という回答を得た。伊藤社長はそんな結果や訪問によるヒアリングから新たに気づかされることがあったという。

伊藤: 「FTTH接続サービスの延長線上にIoT・スマートホームを考える図式を想定していたのですが、実はIoT・スマートホームにたどり着く前にマイグレーション期間があることに気づかされました。マイグレーション期間には例えば高齢者向けに電球取り換えサービスをはじめ、地域生活課題を解決するサービスを細かく揃えることをしっかりとやってらっしゃっていました。IoTにすぐに移行させてしまってはメーカー側の単なる押し付けになってしまいます。地域の商売を手堅くおさえていくことが重要です。」

地域BWA活用は人だけでなくモノにも注目

関心度の高さが結果に表れたのは「地域BWA」や「地域向けドローン、ロボティクス」「ネットワーク仮想化」「オールIPマイグレーション」に対する問いだった。「地域BWAを活用したサービス」を「すでに展開している」割合は回答社全体の20.6%に上り、「非常に興味がある」「興味がある」に対する回答も合わせると8割以上だった。この結果にも伊藤社長は注目している。

地域BWA活用は人だけでなくモノにも注目

地域BWAを活用したサービスに関心があるかまたは既に展開しているか?

伊藤:「実は意外な結果でした。訪問した局も実際に地域BWAを活用したサービスに力を入れていました。エリア内に大型観光スポットを抱えるあるケーブルテレビ局さんはインバウンド顧客への通信回線の提供などに役立てられないか、検討していらっしゃいました。このことから、地域全体でIT化を進めることからスタートし、使いやすいサービスになってから、自宅利用に入っていく流れが作られていくと感じました。また地域BWAをBtoB活用として十分に考えているところも多いです。林業が盛んな地域は、切り出しの時期などをデータ化することで、育成に活かすこともできるという具体的な活用案もお聞きしました。農業も同じことが言えます。経験値だけでなく、コンピューターによって生産性を高めることも可能になるでしょう。こうした構想をお話している局が実際にありました。地方の場合、人口が集積されていない地域も多く、人に対するサービスで費用対効果が見込めなくても海や山、川などモノに対するサービス展開に発想を変えていくことで広がっていくという発想を教えていただきました。」

一方、シティプロモーション事業に対する関心度は「行わないもしくは行っていない」が8割を近くを占め、関心度は低い傾向があった。これに対しても伊藤社長は結果を受け止めつつ、ケーブルテレビ局の現状を捉える考えを示す。

地域コンテンツ海外提供事業は行っているか?

地域コンテンツ海外提供事業は行っているか?

伊藤:「多くのケーブルテレビ局は地域のためのサービスを考えていらっしゃるからでしょう。例えば、だんじり祭りはケーブルテレビ局にとってスーパーコンテンツだと思いますが、あくまでも地域のために提供するコンテンツとして捉え、地域の外にも発信していくといった積極的な考え方はお持ちのようではありません。地域のなかでサービスコンシェルジュのポジショニングを持つことは本来のケーブルテレビ局の役割に近いかたちとも言えます。国や県と組むか、シティプロモーションを企画する企業とタイアップすることで可能性は高まりますが、自局だけで取り組む事業としては現実的ではないのかもしれません。」

ネット映像配信の参入が活発化し、「CATV多チャンネル市場へのネット映像配信参入についてどう思うか?」という問いには約半数が「脅威に感じる」と答え、25.2%が「規制緩和に伴い協業が可能」と回答した。ケーブルテレビ局にとって若年層の取り込みも重要な課題になると思われる。

CATV多チャンネル市場へのネット映像配信参入についてどう思うか?

CATV多チャンネル市場へのネット映像配信参入についてどう思うか?

伊藤:「JCOMがNetflixと提携したことが先日話題になりましたね。若年層への対応はさまざまなやり方が考えられます。許諾が取れていることが前提ですが、契約世帯の家族の成長過程をみながら、合法的にいろいろなアプローチも可能です。コミチャンの広告を通じて、サンプルなどを渡すこともできます。そんな対応策のヒントになる話を訪問した局からお聞きしました。大阪府にあるテレビ岸和田さんは自社キャラクターを活用したオリジナルれんらくちょう」をエリア内小学校新一年生全員に毎年配布しています。地域性での世代間でも継続した関係をユーザと構築するためにこういったOne to one marketing(ワン・トゥー・ワン・マーケティング)の様な活動も行われていています。こうしたビジネスをデジタルサービスに応用することもできるでしょう。若年層の対策は家族ぐるみで付き合う地域サービスからも生み出すことができます。」

アンケートにご協力いただいた回答社131社はイノベーションに対する意識の高さを伺うことができる結果になったのではないだろうか。改めて、アンケート結果を通じて、ケーブルテレビ局の現状をどのように捉えているのか、最後に伊藤社長のご意見を伺った。

伊藤:「現在はIoT・スマートホーム導入前のマイグレーションの期間であることが明らかになりました。全体的に新たなサービスの導入を悩みながら、地域にあったサービスを見つけ、地域でしっかり行うことができるサービスを取り組みたいという方向性です。あるところはそれが地域BWA、あるところは介護をテーマにアナログなサービスを展開していくことで、それをデジタルサービスに移行させていくための大事なマイグレーション期間になります。このマイグレーション期間においても地域性が特徴となっています。今後もケーブルテレビ局のヒヤリングを継続し、具体的な情報を掴むことで、さらにマイグレーションのトレンドや具体的な生活課題解決型の新サービスもみえてくるでしょう。」

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