Teslaの最大のライバルとなるか?中国の新興EVメーカーByton

中国の新しいEV自動車メーカー、「Byton(バイトン)」という企業がある。このBytonという企業は2016年に設立されたばかりのスタートアップ企業である。同社は車に完全に接続されたスマートデバイス搭載のEV車によって時代のグローバルパイオニアとしての地位を築くことを目指している。

Bytonの名前は「Bytes on Wheels」を掛け合わせたものから来ている。本社のある南京以外には北京、上海、香港と生産拠点を構えているが、ヨーロッパにはドイツ・ミュンヘン、アメリカではサンフランシスコに拠点を構えている。以下ではBytonのEV車の特徴などについてまとめていく。

BytonのEV車は2タイプ

Bytonのホームページ上に掲載されているのは2種類のタイプのEV車で、ラグジュアリーなデザインのセダンK-ByteとクールでスポーティなデザインのSUV、M-Byteがある。

Teslaの最大のライバルとなるか?中国の新興EVメーカーByton

K-Byte

画像出典:Byton

Teslaの最大のライバルとなるか?中国の新興EVメーカーByton

M-Byte

画像出典:Byton

同社はTeslaのライバルと呼ばれており、今のところ売り出す価格帯は45,000ドルと発表されている。

毎年世界中のコンシューマー・テクノロジー・ビジネスに取り組んでいる企業の製品を紹介するCESというイベントがある。2018年のイベントはラスベガスで開催され、Bytonのコンセプトカーはこのイベントで発表された。

BytonのEV車の目を引く特徴は運転席から助手席まで49インチの長さがある巨大なダッシュボード画面を備えていることだ。この横長のダッシュボードにジェスチャーで指示を送ったり、音声による操作やタッチスクリーンに触れることによって操作をすることができる。スクリーンには動画やカーナビ、ドライバーの健康状態やカレンダーなども表示することが可能である。さらに、ステアリング・ホイールの後ろにタブレットが取り付けてあり、フロントシートの背面にはさらに別の画面が備わっている。

車内では自律運転モードの際に運転席と助手席に乗っている人同士で会話ができるように、中央に向かってシートを12度回転することができる。5Gの高速接続で映画やビデオを楽しむことも可能だ。運転席には運転手の心拍数や体重を測ることができるセンサーが組み込まれている。

また、完全自動運転モードのためのハードウェアが搭載されている。まさに「未来の車」を具現化したものである。

2018年2月には自律運転技術を持つスタートアップAuroraと提携

Bytonは2018年2月に自律運転技術を持つスタートアップのAuroraと提携したことを発表した。両社は今後2年間に渡りByton車でAuroraのL4自律走行システムのパイロット展開を行う予定。

Auroraは2016年に設立されたシリコンバレー発のスタートアップ。自動車メーカーと協力して、センサ、ソフトウェア、およびデータサービスのパッケージを設計し、開発を行なっている。2017年の終わりにはフォルクスワーゲンと現代自動車が自律運転技術のソフトウェア開発のためにAuroraとの提携を発表している。また、Googleが開発しているドライバーレスカーのWaymoはAuroraのCEOであるウルムソン氏によって率いられている。設立されて間もないスタートアップ企業であるが、自律運転技術において名の知れている企業である。

Bytonの抱える問題

BytonのEV車はシングル・チャージで250マイルの距離を走行することが可能である。
バッテリーは30分で80%の急速充電を行うことができるが、Bytonは大きな問題を抱えている。バッテリーのチャージポイントだ。

BBCの記事によると、Tesla社は世界に8,496の急速充電器を設置しているが、Bytonのチャージポイントは今のところゼロである。

新たにチャージポイントを設置するには時間と費用がかかるため、企業間における充電器のシェアも考慮に入れないといけないだろう。EV車にとって欠かせないのチャージポイントがないことは頭が痛い問題だ。Teslaは急速充電器の設置には多大な努力を払ってきたため、ライバルである企業と充電器を共有することはしたくないだろう。チャージポイントの問題をどう解決するかによってBytonのEV車の売れ行きを左右すると考えられる。

ARでシミュレーションできるユニークなアプリ

Bytonは独自のアプリもリリースしている。このアプリで利用できるARビジュアライザーは非常にユニークである。

ARビジュアライザーではユーザに適した塗装や合金、内装の色を指定することでARで視覚化することができる。利用できるデバイスはiOS11とiPhone6以上でしか動作しないが、車好きならぜひ試してみたいアプリである。

アプリではARビジュアライザーの他にBytonのイベント情報通知を受け取ることやチャット形式によるカスタマーサポート、また購入予約を行うことができる。

Bytonのメンバー

Bytonのメンバーは過去に有名自動車メーカーや航空会社、証券会社に所属していた多彩なバックグラウンドの経歴の持ち主が多い。

Bytonの会長/最高経営責任者/共同設立者は機械工学の博士号を持つ有名な専門家であるCarsten Breitfeld氏。氏はBMWグループの副社長として10年以上にわたりシャシー開発、パワートレイン開発、および企業戦略の中で一連の重要なエンジニアリング部門を率いてBMWで過ごした。BMWでは20年のキャリアを持つベテランである。

もう一人の共同設立者兼社長はDaniel Kirchert氏。
マーケティング、セールス、ブランディング、ビジネス開発、およびオペレーションに関する豊富な経験を持つ中国の高級自動車業界で最も経験豊富なエグゼクティブの一人である。Bytonに入社する前は中国Infinityの常務取締役、東風インフィニティ自動車のCEOであった。

同社の車のデザインを行なっているのは過去にBMWのプロダクト・マネージャであったBenoit Jacob氏が担当している。

まとめ

世界では高級EV車の開発競争が激化している。既存の世界的に有名な自動車会社から、Bytonのようなスタートアップ企業までEV車の覇権争いは熾烈を極めている。Bytonの競争相手はTeslaだけではなく、Lucidというアメリカの新興企業もある。LucidはEV車を2019年に販売する予定だ。また近年発表されたものではイギリスの老舗自動車メーカーであるAston MartinもLagondaというEV車の生産を2021に開始する予定で、新しいEV車に関するニュースは続々と出てきている。

BytonのEV車は2019年から生産に入る予定だ。同年には中国におけるシェアを高め、2020年からは世界に向けて販売を開始する。同社は2018年6月11日には500万ドルのシリーズBの資金調達を完了させ、2019年のマス・プロダクションに向けて着実に準備を整えている。