AIの処理能力を加速させる力を手に入れるために「UP AI Edge」

AIやモノのインターネット、すなわちIoTと呼ばれる技術は、ここ数年で劇的な発展を見せた。電子機器に人工知能が搭載されていることは次世代のプロダクトとして当たり前となりつつある。

インターネットとは無縁であると考えられていた家電製品でさえ、インターネットに接続することによりお互いに情報を共有しあい、必要に応じてユーザーにとって最善の環境を提供してくれるようプログラミングされている。

このようなテクノロジーは最初にこのシステムを構築した人物こそ偉大かもしれないが、それを発展させるためにはアイデアよりも、ハード面による処理速度の向上などがなければ、それ以上の発展は望めない。現にスーパーコンピューターと呼ばれるものが研究の世界において重宝されるほど、充実したハードウェアはAI研究やロボティクスを効率よく発展させるためには不可欠な要素であると言えるだろう。

UP AI Edgeはそのようなニーズを考慮して誕生したアクセラレーターの一種で、既存のシステムに大きな力を付与し、研究開発の手助けとなるだろう。

AIの処理能力を加速させる力を手に入れるために「UP AI Edge」


研究プロジェクトを加速してくれるプラットフォーム

そもそも既存のコンピューターは計算機であり、何も人間には真似できないような魔法を使って優れた成果を生み出しているわけではない。コンピューターもまた人間と同じように計算を行うのだが、人と違うのはその計算スピードである。

コンピューターは膨大な計算を一瞬のうちにやってのける処理速度を備えているために重宝されるのであり、魔法が使えるから重宝されているわけではない。そのため、より複雑な計算をできるだけ素早く行ってもらうためには、彼らの能力を底上げするようなハードウェアを用意してやる必要があるのだ。

特に人工知能のように複雑な計算を要するシステムは、膨大な処理が必要となるため、プログラムを最適化することでその処理速度を高めるのと同時に、処理能力を底上げすることで素早い計算を可能にする必要がある。

そこでUP AI Edgeは、優れた処理速度をもたらすために様々な要素を機械学習等に応用できるハードを備え、研究開発の手助けをしてくれる。まず、インテル社の先端ハードであるIntel Apollo Lake SoCやIntel® Movidius™ Myriad™ 2 VPU、そしてIntel® Cyclone® 10GX FPGAを搭載することで、機械学習には最適の処理環境を用意することに成功している。

機械学習には大量の情報をビジュアルなどから収集する必要があるのだが、これらはその効率を最大限に引き上げてくれるだろう。


また、三つのIntel® Movidius™ Myriad™ 2を統合し、USB3.0、3G/4G接続なども備えられているVision Plusはコンパクトな基盤として付属しており、シングルUP AIコアモジュールの三倍のパフォーマンスが期待できる。

同時にビジュアル情報を獲得する手段として、UP AI Edgeにはセミインダストリアルモデルのビジョンカメラも付属する。AIが機械学習において情報を獲得するためには、直接視覚情報を取り込むためのハードウェアも欠かせない。USB接続のビジョンカメラを搭載することで、より効果的な処理速度で機械学習を行っていくことができるようになるだろう。

AIの処理能力を加速させる力を手に入れるために「UP AI Edge」


このプロジェクトはユーザーの様々な研究開発のニーズに対応できるハードを提供することが目的となっている。そのため、各ユーザーのニーズに対応できるよう、プロジェクトで提供されている全てのハードを購入する必要はなく、それぞれの運用方法に応じて各ハードを購入することができるだろう。

他のプロジェクトへの互換性

そしてこのプロジェクトは、OpenVINO™ toolkitへオフィシャル対応していることも特徴である。OpenVINO™ toolkitはニューラルネットワーク最適化を取り扱うキットとなっており、人間の視覚処理などをコンピューターでエミュレートするためのプロジェクトだ。

この企画にUP AI Edgeがアクセラレータとして合わされば、より効果的な機械学習・深層学習を行い、たとえ小規模のプロジェクトでも高いパフォーマンスで優れた結果を導くことにも繋がってくることが期待できる。

公式サイト:https://software.intel.com/en-us/openvino-toolkit

UP AI Edgeは現在Kickstarterで出資者を募っており、1万ユーロを目標金額に設定している。プロダクトの価格はプランによって大きく異なり、49ユーロから679ユーロまでと幅がある。そのぶん豊富な出資プランが用意されているので、出資者は必要に応じたプランから必要な製品を選び、購入することができるようになっている。

発送は2018年の10月を予定しているが、地域限定発送となっているため日本への発送は受け付けていない点は留意しておきたい。