アートをブロックチェーン技術を利用して所有する「Maecenas」

ブロックチェーン技術により絵画の購入は簡単に、自由にできるようになるのかもしれない。共和制ローマ期から活躍した政治家で、芸術の守護神と呼ばれたガイウス・マエケナスに名前をちなんだ新興企業「Maecenas」は、ブロックチェーン技術と仮想通貨の送金を利用して絵画を購入・所有できるプラットフォームを持っている。

一言で言うならアートとブロックチェーンを融合させたシステムだ。Maecenasはアートとブロックチェーンを組み合わせたプラットフォームだが、一体どのような仕組みになっているのだろうか。以下ではMaecenasがどのようなはたらきをおこなうのかについて解説していく。

Maecenasとは?

Maecenasとは、非中央集権型のアートギャラリープラットフォームである。
このプラットフォームを使うことで、誰でも絵を購入し所有することができる。

プラットフォーム上では多くのアート作品が販売されており、仮想通貨で支払うことにより自分がアート作品のオーナーになることができる。絵画の販売価格は一人が購入しなければいけないわけではなく、ユーザが払いたい金額を支払うことでアート作品を一部所有していることになる。アート作品を所有することはこれまで一部の裕福な人たちのものであったが、部分的にアート作品に投資することによって、誰でもアート作品のオーナーになることができる。

また、個人および博物館、美術館は仲介業者に頼ることなくアート作品に投資することが可能だ。

Maecenasのビジネスモデル

Maecenasのビジネスモデルは、主に発行手数料と流通市場の2つの収益源に基づいている。

●発行手数料
Maecenasに掲載されているアート作品は、資産保有者に対し1回限り手数料6%を請求される。またアート作品のオークションに参加する投資家は1回限り2%の手数料を支払う。これらの手数料は、決済された取引にのみ請求される。

●美術市場
美術品の権利を表す株式または証明書は、Maecenas Fine Art Exchangeという取引所で取引される。購入者はコミッション(手数料)を支払わなければいけないが、オークションで取得した株式または証明書を売るときは無料で行うことができる。

Maecenasの手数料と他のチャンネルの手数料の比較

オークションハウスは最も安全なチャンネルであると認識されており、12〜25%の高額な手数料に反映されている。これらのオークションは伝統的な方法で行われているが、入札単価を引き上げるだけでなく、テレビのモニタリングや入札単価の使用方法の変更もほとんどない。アートギャラリーや他のアートディーラーは、6%から10%の範囲で購入者に料金を請求する。

Maecenasのプラットフォームでは、従来のオークション会場などで取引される場合と比べて手数料を低く抑えることができる。次の表はMaecenasのホワイトペーパーに記載されているアート作品の取引に関する手数料の比較だ。

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オークションで有名なサザビーズやクリスティーズは12-30%の取引手数料がかかり、アートギャラリーでは6-10%の手数料がかかる。一方Maecenasは取引に関する手数料はかからず、それ以外の手数料が2-6%と仲介業者を通したアート作品の購入より低い手数料が適用される。

アート市場とアートファイナンス市場の規模は増加傾向

Maecenasのビジネスモデルは、いわばシェアエコノミーである。投資家が共同で芸術作品を所有することを可能にしている。アート関連の新興企業への投資は年間500万ドル以上と過去2年間で4倍になっている。また、仮想通貨への投資はここ数年で指数関数的に増加しており、デジタル資産は1年で50倍増加。この動きは減速の兆しが見えてこない。

アート価格は先物取引や資産担保貸付など投資銀行でより一般的に見られる資金調達手法を利用しているディーラーや財務に精通したコレクターの助けを借りて、近年記録的な高値を打っている。
アメリカの芸術担保貸付市場は過去5年間で15%~20%の伸びを見せており、アートファイナンスは大幅に成長すると予想されている。

ブロックチェーンで高いセキュリティ環境下で取引が可能に

アート作品は信頼された機関の管理下に残っているため、この新しいエコシステムは既存のソリューションと同様に機能する。すべての投資は、発生しうる紛争を解決するための保険と法的枠組みによって保護されている。情報の改ざんができないため、投資者は安全に取引を行うことができる。

Maecenasのプラットフォームは現在開発中で、具体的な時期までは発表されていないが2018年に一般利用が開始される予定だ。

MaecenasのARTトークン

ブロックチェーンベースのプロジェクトには、独自のネイティブトークンが必要だ。 Maecenasの場合、「ART」トークンとして知られており、いくつかの異なるユースケースがある。実際、このトークンはブロックチェーン上のすべてのMaecenas関数に必要であり、このエコシステムにおけるスマートな契約のためには、ARTの運営を必要とする。さらに、これらのスマート契約によって投資された資金は、投資が処理される前にまずARTに変換される。これはアート業界全体に革命を起こす興味深いアプローチである。

Maecenasのプラットフォームは不透明で非効率なアート作品の取引を変える?

アート投資家がアート作品を購入するときに安全で信頼できる方法で美術に投資することについては、選択肢が限られている。アート作品は主にオークションハウスやアートディーラーを通じて年間約650億ドルが取引されている。

アート作品が流通している市場は閉じられた世界で、通常オークション会場やギャラリーで取引が行われているが、透明性と流動性がなく情報へのアクセスが困難である。売上は手動で行われるため、決済は数週間かかることもある。高い買い物の割には、投資家が満足できるようなシステムになっていない。ブロックチェーンを使用したトランザクションコストは非常に低く、理論的にはMaecenasはトランザクション手数料の支払いをする必要がなく暗号化技術を利用することでアート作品に対する投資を可能にする。

Maecenasのプラットフォームとその仕組みは非常に興味深く、この不透明で非効率なシステムを変えるきっかけとなるのかもしれない。Maecenasは2018年に、ファインアートへのアクセスを民主化する最初のオープンブロックチェーンプラットフォームを立ち上げる予定である。