Future Blockchain Summitで発表された自動車に関するブロックチェーンコンソーシアム「MOBI」とは?

自動車業界ではブロックチェーン技術を活用した新しい技術の開発が注目されている。世界の大手自動車会社はこの流れに乗り遅れまいと積極的に動き始めている。自動車会社の中には、技術プロバイダーや新興企業と提携してコンソーシアムを形成しているところもある。

過去の記事では、新興企業であるXAINがポルシェと提携しブロックチェーン技術を活用した車を開発しているニュースについて取り上げた。

参考:ポルシェがXAINと共同開発を進めるブロックチェーン技術を活用した車とは?
https://bp-affairs.com/foresight-insight/2018/02/xain.html.preview.html

2018年5月2日と3日にアラブ首長国連邦のドバイで開催された「Future Blockchain Summit」というイベントでは、MOBI(Mobility Open Blockchain Initiative)というコンソーシアムが発表された。以下では、Future Blockchain Summit の概要、MOBIとは何か、またMOBIの目的は何かについて解説していく。

Future Blockchain Summitとは?

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画像出典:Future Blockchain Summit
https://www.futureblockchainsummit.com/

Future Blockchain Summitの目的は、ドバイのブロックチェーンシーンをアピールするためのイベントである。Smart Dubai Officeと Dubai Future Foundationという組織の協力の結果として生まれたもので、ドバイの皇太子であるSheikh Hamdan殿下によって設立された「Smart Dubai Technology」の一環である。

よりシームレスで、安全で、効率的かつインパクトのある街の経験サービスを提供する最新技術を持続的に調査するという目的がある。

参考:Future Blockchain Summit
https://www.futureblockchainsummit.com/

このイベントに参加した大手自動車企業は、先月トヨタの研究所を最高財務責任者に任命された自動車業界のベテラン、クリス・バリンガー氏、ゼネラル・モーターズ(GM)、BMW、ルノー、ボッシュ、ZFフリードリッヒスハーフェンなど自動車業界の大物を集めた。

MOBIの目的は何か?

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画像出典:MOBI
https://www.dlt.mobi/

MOBIの目的は、ブロックチェーン技術を活用した自動車の開発と利用だ。特定のタイプの分散台帳を勧めることはせず、カーシェアリングから自動運転車に至る新しいデジタルモビリティエコシステムを意味する自動車間の支払いやデータシェアリングといった共通基準を作ることを目的としている。

具体的に挙げると、MOBIは支払い、データの追跡、供給管理、消費者金融と価格設定、自律型車両やカーシェアリングシステムなどの未来的な分野に焦点を当てている。

Techcrunchの記事によると、MOBIの会長兼最高経営責任者であるChris Ballinger氏は以下のように述べている。

"Blockchain and related trust enhancing technologies are poised to redefine the automotive industry and how consumers purchase, insure and use vehicles," Chris Ballinger, who is MOBI's first chairman and CEO, said in a statement.

"By bringing together automakers, suppliers, startups, and government agencies, we can accelerate adoption for the benefit of businesses, consumers and communities," added Ballinger, who was formerly CFO and director of mobility services at the Toyota Research Institute .

(訳:「ブロックチェーンと関連するトラスト・エンハンシング・テクノロジー(信頼強化技術)は、自動車産業と消費者がどのように自動車を購入し、保険をかけ、利用するのかを再定義すると見られています。」とMOBIの最初の会長兼CEOであるChris Ballinger氏は声明の中で述べた。

Toyota Research Instituteで前CFO兼モビリティサービス責任者であったBallinger氏はさらに「自動車メーカー、サプライヤー、スタートアップ、政府機関を結びつけることで、企業、消費者、コミュニティの利益のために採用を加速することができます」と付け加えた。)

MOBIは30以上の創設メンバーで構成されており、メンバーにはBosch, Berkeley, Hyperledger, Fetch.ai, IBMやIOTAなども含まれている。

MOBIはオープンソースのビジネス設計を通じて、自律型車両およびモビリティサービスを開発または提供する企業のブロックチェーン採用を促進することを目指している。これまでのところ、同グループは様々な自動車メーカー、公共交通事業者、有料道路提供業者、ブロックチェーン企業、技術企業、学術機関、起業家、さらには世界の規制機関にも招待状を送った。

ルノーグループのグローバルディレクターでありMOBIのパートナーであるSophie Schmidtlin氏は、今日のブロックチェーンは技術的な創作において最も重要なことであると語った。

"Blockchain technology is by essence decentralized, and its full potential needs to be assessed by working in an open ecosystem," she stated. "That is why it is natural for Groupe Renault to take part in the MOBI consortium. This consortium will be a great opportunity to share and learn about the possibilities that can be opened by the Distributed Ledger Technology while applied to the automotive ecosystem. Ultimately, we aim to work together to define future standards and use cases that will make an easier everyday life for our customers."

「ブロックチェーン技術は本質的に非中央集権化されており、オープンなエコシステムにはたらきかけることでその潜在能力を十分に評価する必要があります。

そのためルノーグループがMOBIコンソーシアムに参加することは当然のことです。このコンソーシアムは、自動車のエコシステムに適用されている間に分散元帳技術によって開かれる可能性を共有し、学ぶ絶好の機会になります。最終的には将来における基準を定義し、お客様の日常生活をより簡単にするユースケース(使用事例)を定義することを目指しています」

ブロックチェーン技術は車の生産段階でも活用が期待される

ブロックチェーン技術を搭載した車の開発は利用者にとっても非常に便利な機能である。上にも触れたが、キーのロック/ロック解除、支払い、カーシェアリング、データの追跡といった機能を高いセキュリティ環境下で行うことができるため、安心して利用できるというメリットがある。

これに加え、ブロックチェーン技術は自動車の生産に関わるサプライヤー、部品調達企業、生産者といった膨大な企業のデータも一括で管理することができるとされている。自動車部品は世界中から調達されているため、複雑になりがちなサプライチェーンを可視化することにもつながる。原料の調達段階からトラッキングを行うことや、部品の仕入れに関する契約や発注、支払いといった細かい点についても一元化することができるかもしれないと言われている。

不具合品が発見された場合、修理工場に持ち込まれた車からどの部品が不良を起こしているのか解明する際に、問題のある部品の生産地情報や生産環境、出荷環境などを特定することでスピーディな問題分析・解明にも役立つとされている。

まとめ

Future Blockchain Summitで発表されたブロックチェーン技術を活用した自動車に関するコンソーシアムMOBIは、世界的に有名な自動車企業やブロックチェーン関連のスタートアップ企業などが協力し、ブロックチェーン技術を活用した自動車の技術的な開発と利用に照準が合っていることを改めて示した。今後このような複数の自動車関連企業やブロックチェーン関連企業やその他企業が協力して未来の自動車についての技術開発を目指すコンソーシアムの形成が加速していきそうである。