中国のヘルスケア分野を牽引するPing An (平安)グループ、「Instant Clinic」「Good Doctor」で利用者の利便性を高める

「病院に通いたいけど、時間がないから行くことができない」多忙な現代人にとって共通の悩みではないだろうか。一番良いのは間違いなく病院に行くことであるが、その場をしのぎたい場合もあるだろう。そんなとき、役に立つのが現代の最新技術を搭載したデバイスの活用である。

中国のヘルスケア企業Ping An Healthcare & Technologyは、「Instant Clinic」というAIを駆使したデバイスを用いて利用者の利便性を高める。また、同じくPing AnグループのひとつであるPing An Good Doctorはヘルスケアアプリ「Good Doctor」によってスマホから医師に相談できるサービスを提供している。

以下では、Instant ClinicとGood Doctorがどのようなはたらきをするのか解説していく。

Instant Clinicとは?

中国のヘルスケア分野を牽引するPing An (平安)グループ、「Instant Clinic」「Good Doctor」で利用者の利便性を高める

画像出典:PR News Wire

Instant Clinicは一見すると「医薬品を販売している自動販売機」だ。しかし、利用者が自由に医薬品を購入できる自動販売機ではない。

Instant Clinicの特徴は、①機器を操作することで利用者の病気をオンラインで照会することが可能②手軽に医薬品を購入できる点である。

この自動販売機は、タッチパネルが付属しており利用者が音声ガイダンスに合わせて質問に対する答えを操作していくことで使うことができる。最終的には、人間の医師から診断を下してもらい適切な医薬品を処方してもらったのち医薬品をそのまま自動販売機から購入することができる。

Instant Clinicは音声照会をトリガーにして"AIドクター"が利用者の病歴を確認したあと、専門の医師につなぐ。最初の段階でAIの自動応答によって患者の相談すべき専門分野の振り分けをおこない、専門の人間の医師に直接つなぐことで、病院に行くまでの時間や病院でおこなわれる煩雑な事務手続きや待ち時間を省略することができる。

Instant Clinicは人間の医師の助手としてはたらくAIを搭載した機械で、利用者は軽度な症状であれば病院に行かずとも処方の必要な薬を手にすることができる。

Ping An Healthcareのスタッフはこのように説明している。
「インスタントクリニックはどこにいようとも、道路の路肩にある自動販売機でドリンクを買うのと同じくらい簡単に診断と治療をおこなうことができます」

Instant Clinicは2018年4月11日に中国・上海でおこなわれた医療機器に関するイベントPharmaChinaで発表され大きな注目を集めた。

Ping An Good Doctorが提供しているスマホアプリ「Good Doctor」

Good Doctorはスマートフォン向けアプリで、2015年にサービスの提供が開始された。今では中国国内で1億8千万人が利用する最大のオンライン医療サービスプラットフォームとなっている。

このアプリの特徴は、無料の診断・治療・オンライン予約が可能な点で、テキスト・画像・ビデオを通じて医療従事者とコミュニケーションを取ることができる。ターゲットユーザは中国の都市部や小都市部に在住している人で、病院における慢性的な待ち時間の長さや、病院に通うことが難しい患者の不満を解消することに役立つ。

アプリ内には健康管理に役立つ記事のデータベースを持っており、健康関連のトピックに関するマイクロブログスタイルのディスカッションフォーラムを用意している。さらに、医薬品・化粧品・ヘルスケア商品、医療サービスのギフトバウチャーを購入できるオンラインサイトもある。

Ping An Good Doctorの設立者で会長兼CEOであるWang Tao氏は、同アプリが2017年に機械学習技術を搭載したサービスを開始し、医学的診断と治療を支援するデータのパターンを特定できる自己学習機能について発表をおこなった。機械学習が搭載されたことによりこれまで以上に便利で素早いサービスの提供を可能にした。

Good Doctorには1,000人の医師からなるチームに加え国内の私立・公立病院に勤務する何千人もの医師とコンサルティング契約をしているため、利用者がオンラインで相談することを可能にしている。

中国の国家戦略「Healthy China」とは?

Instant ClinicやGood Doctorのような最新技術を搭載した便利なスマートデバイスは中国政府が掲げるアジェンダのひとつである「Healthy China」に貢献することになるだろう。

中国主席の習近平氏は政策を掲げる際に『健康』を重要視しており、2016年8月に行われた国家保険会議では政府の健康への投資における政治的意義が主張された。習主席は健康が人々の全面的な発展のため、また経済社会発展のための前提条件であると説明した上で、保険分野の問題が効率的に解消されなければ国民の健康は深刻に損なわれることになり、潜在的に経済発展と社会的安定を損なう可能性があると主張。

国家保険会議に続いて中国共産党中央党委員会と国務院によるHealthy China計画の承認を得て、健康を国家政治優先事項とした。

Healthy Chinaは4つの原則があり、以下の原則をベースとして成り立っている。

・健康優先
・改善とイノベーション
・科学的発展
・正義と公平

Healthy Chinaの計画を実行するためには最新テクノロジーの活用が必須である。最新テクノロジーの活用によって患者数が過密状態にある病院で効率的な診察をおこなうことを可能にし、便利なサービスが利用可能になれば都市部と農村部における不公平な医療サービスの是正も実現することができる。

Ping An グループの概要

中国のヘルスケア分野を牽引するPing An (平安)グループ、「Instant Clinic」「Good Doctor」で利用者の利便性を高める

画像出典:中国平安

Ping An(中国語では中国平安と表記される)は様々な分野において事業を展開しているグループ企業で、大きく分けて保険・銀行・投資・インターネットファイナンスの分野で事業をおこなっている。

Ping Anグループは1988年に中国・深圳で保険会社としてスタートした。中国で株式保有構造を持った最初の保険会社である。その後、保険・銀行・投資の3つのコアビジネスを持つパーソナル・ファイナンス企業として成長。金融コングロマリットとして有名である。

今後の中国のヘルスケア業界

Bloombergの記事では、アメリカの持株会社であるBerkshire HathawayによるとPing An Insuranceの市場価値が世界第2位を記録したと報じられている(※Berkshire Hathaway内部の市場価値)。

South China Morning Postの記事によると、中国のヘルスケア業界は2020年までに2兆3,000億USドルを記録すると予測されており、順調な伸びが期待されている市場である。

現在中国国内で医療的アドバイスをおこなったり病院に予約するようなヘルスケアに関するアプリは2,000はあると言われている。市場調査会社のカンタール・ヘルスが調査したところによると、このようなオンラインのヘルスケアサービスを利用する中国人はアプリを操作するのに1週間で平均29.3時間を費やしており、このうち26%の利用者は治療やサービスに関するフィードバックを受けるといった医療に関連する活動に向けられているという結果を得た。

Ping Anグループは中国国内での成長はもちろん、今後世界においてもそのプレゼンスを存分に発揮していくことだろう。