DHLのロボティクスとIoTを活用した業務効率改善のための取り組みとは?
ベルトコンベアに配送物が載せられると、郵便物の大きさによって自動的に仕分けされる。また、計7桁の数字を瞬間的に読み取り、郵便物の配送先の仕分けを機械がおこなっている。読み取りにかかる時間は1通あたり0.1秒。1時間で約3万〜4万通の郵便物を仕分けすることができる。たとえ郵便番号が手書きで書かれてあったも非常に高い確率で数字を読み取ることができる。
配送業やECサイトの配送部門は毎日大量の貨物を配送先に届ける必要がある。毎日発生する業務であるため配送間違いを少なくし、同時に効率化を進めなければいけない。人による確認作業は時間がかかり、ミスも発生しやすい。
フォワーダー・運送大手のDHLは、ロジスティクス業務に積極的にロボットを取り入れることで効率化を目指している。以下では、DHLの配送におけるロボットの活用事例やIoTの活用による業務効率改善について見ていきたい。
ロボットを活用した業務効率化
DHLはロボットなど最新テクノロジーを活用することで業務の効率化に積極的に取り組んでいる企業のひとつである。
同社はLocusBot(ローカスボット)とSawyer(ソーヤー)というロボットの活用をおこなっている。
●LocusBotsの活用
LocusBots(ローカス・ボッツ)は商品のピッキングや倉庫の案内役として役立つ。広大な倉庫や配送センターの中にある商品を素早く見つけ出すことができるため、商品の管理場所がわからず無駄に探し回る時間を減らしてくれる。
LocusBotsは自動的に指定の場所へ移動するため、人はこれに先導されて付いて行くだけで良い。カゴを置くスペースがあるので商品をそのまま入れることができ、ピッキングが完了したらタッチパネルでチェックをおこなう。
LocusBotsを使うことで従来の人間の知識と経験に頼ったピッキング方法と比べて2倍~5倍の業務効率改善につながると期待されている。
●Sawyerの活用
Sawyerは単純業務を自動的におこなうロボットである。Sawyerはマサチューセッツ州のRethink Roboticsが開発した。日本では住友重機械工業がSawyerの独占販売権を持っている。
Sawyerの特徴は、単純な手作業を複雑なプログラミング知識なしに設定することができることである。繰り返しの単純作業を自動化することに役立つため、倉庫や配送センターでも活用することができる。DHLは複数の商品の梱包テストをしたあとにSawyerを4つ購入し、人間の従業員と共にテストをおこなうなどしている。Sawyerは予期せぬものに触れると停止するため、従業員が怪我を負う可能性は少なく一緒に働くこともできる。
http://www.rethinkrobotics.com/sawyer/
こちらの動画はSawyerが実際に商品を箱詰めしている様子をまとめたものである。ゆっくりではあるが、決められた動作を自動的におこなっている様子がわかる。
DHLはこれらのロボットを実際に使うことによって、業務効率化にどう繋がるかを評価している。同社はロボットを用いた業務効率化のために2017年5月から12ヶ月間に100万ポンドの設備投資を計画している。
情報通信分野での業務効率化への取り組み
DHLはロボットだけではなく情報通信分野でも様々な取り組みをおこなっているが、以下では近年発表された2つのニュースについて取り上げたい。
●HuaweiとIoT分野で提携
2017年2月に中国の情報通信企業であるHuawei(ファーウェイ)とDHLグループがIoTデバイスを活用することやネットワークインフラの活用することで合意した。配送業務では常にアップデートされた貨物情報が必要とされるため、常にどのようなプロセスやステータスであるのかを監視しなければならない。このためには情報の有効活用が欠かせないため、Huaweiとの提携はDHLにプラスに働くであろう。
DHLのニュースリリースでは覚書の合意内容について次のように紹介されている。
ファーウェイは今回の合意を踏まえ、ドイツポストDHLグループがファーウェイのIoTデバイスと、通信に関する専門知識を備えた人材、ネットワークインフラを活用できるようにするとともに、より高度なセンシングや自動化機能を倉庫業務や貨物輸送、ラストマイル配送サービスに導入するための継続的な取り組みを進めていきます。また、両社は欧州および中国でのパイロットプロジェクトなどを通じ、こうしたイノベーションの成果の商用化と販売に向けた取り組みにも協力していきます。
On Demand Deliveryで配送物の受け取りがさらに便利に
近年は世界的にEコマース市場が伸びており、配送業務はますます需要が高まっている。DHLではOn Demand Delivery(ODD)というサービスを発表した。ODDは顧客側で貨物配送のステータスや配送先の変更などの指定をすることができる。たとえば、配送物を受け取れない場合近所の特定の場所に預けたり、休暇中に貨物の配送をストップすることなど柔軟に配送物を配送先に届けるようにできるサービスである。
これは顧客にとってカスタマーサポートに電話する手間を省き確実に荷物を受け取れるようにするという意味もあるが、同社の業務効率化にとっても良い影響を与える。
ODDで顧客からの問い合わせを減らせることによってスタッフが対応する時間を減らすことができ、配送先で荷物が受け取れないことを減らすために二度手間を省くことができる。
まとめ
ロボティクスによる業務プロセス最適化はある程度決まった定型業務をこなすことに非常に役立つ。業務を進めるにあたって考える必要がないものであれば、あえて人間が行う必要はない。ロボットを活用することで労働者に危険が伴う現場作業の労災事故を減らすことにもつながり、労働力不足も解決することができる。
また、業務において最新のデータが常に必要である場合、情報通信分野の整備をおこなうことで業務効率を高めることができる。DHLはファーウェイとIoT分野でインフラとネットワークの活用をおこなうことによって業務効率をさらに高めていく方向である。
DHLは業務効率向上に向け様々な取り組みを行なっている企業であり、業務効率改善の際に同社の取り組みを参考にしてみてはどうだろうか。