国際貿易xブロックチェーン、貿易実務はどう変わる?

国際貿易の現場では、毎日大量の書類のやりとりが発生する。モノの輸出入にはインボイスやB/L(船荷証券)、パッキングリストといった基本的な書類が必要で、原産地証明書といった各種証明書、必要添付書類、輸入許可が降りれば輸入許可書が発行されるため、1件の輸出入につき書類が数十枚発生することも珍しくない。まさに書類に埋もれることになる。

国際貿易は1件の輸出入につき様々な企業が関わることになる。貿易実務においてはスピーディな対応が求められるが、常に印刷された書類ベースでおこなわれるために業務をおこなう上で効率の悪さを招いている。

貿易業界ではブロックチェーン技術の活用が活発になっている。ブロックチェーン技術を活用することができれば、ブロックチェーン上に契約情報は記録・保存され実行される。また貿易業務に関わるそれぞれの企業が素早く、安全なセキュリティ環境で必要な情報にアクセスすることができる。

以下では、貿易業界におけるブロックチェーン技術の活用についての最新ニュースをいくつか紹介していきたい。

ブロックチェーンでペーパレス化を目指すコンソーシアム

国際貿易xブロックチェーン、貿易実務はどう変わる?

画像出典:Pixabay

アメリカの大手船会社APL(American President Line)、アイルランドのコンサルティング企業Accenture(アクセンクチュア), スイスの大手フォワーディング企業Kuehne + Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル)などで構成されるコンソーシアムは、大量の書類を減らす目的のためにブロックチェーンの活用を進めている。もしこれが実現すれば、年に数億ドルもの節約につながると考えられている。

輸出入にまつわる書類を確認するのは輸出者・輸入者のみならず通関業務をおこなうためのフォワーダー、税関、また物流業者、倉庫業者など様々な企業・機関である。全ての企業や機関が必要な書類をデジタルまたは印刷した紙でチェックしたり、必要な処理をおこなったあとファイリングをして保管しなければならない。

もしブロックチェーン技術を活用することが可能になれば、物理的にデジタルまたは印刷された書類を企業間で送信・送付する必要がなく、企業同士で関連するデータを共有することができる。

参考:The Maritime Executive, APL Tests Blockchain Solution
https://maritime-executive.com/article/apl-tests-blockchain-solution#gs.mQKem3s

ブロックチェーン活用は中国の重要な経済・外交政策:一帯一路にもかかわる

Pacific International Lines (PIL), PSA International とIBM Singaporeは2017年8月にブロックチェーン技術を活用した貨物のトラッキングテストに関する覚書に基づいてプロジェクトを進めた。このテストは2017年8月から12月まで実施された。

テストの目的は、リアルタイムでの貨物のトラッキングと限定された企業による貨物情報へのアクセスである。ブロックチェーン技術を活用することで、業務効率・セキュリティ・透明性の向上を期待できるとのことで進められたプロジェクトである。

中国では習近平首相が経済・外交政策の「一帯一路」を打ち出している。この一帯一路は経済成長戦略のための重要な構想である。一帯一路では、中国西部からヨーロッパを結ぶルートと、アフリカ大陸北東部を結ぶルートの整備や貨物ハンドリングの強化により、活発な物流を促すことで経済成長を目指す。

トラッキングテストでは中国・重慶とシンガポールを結ぶ南ルートにおける貨物の追跡が実施され、テストは成功したと報じられている。

ブロックチェーン技術を活用した貨物のトラッキングが実用化されれば、中国西部からシンガポールを通る海上輸送ルートの貿易が活発になることであろう。

参考:Global Trade Review、Singaporean entities complete blockchain for supply chain trial
https://www.gtreview.com/news/asia/singaporean-entities-complete-blockchain-for-supply-chain-trial/

MaeskとIBMがブロックチェーンセキュリティ技術を物流サプライチェーンに導入

2018年1月に、デンマークの大手船会社Maesk(マースク)がIBMと共にブロックチェーンセキュリティ技術を物流サプライチェーンに導入するプロジェクトを進めることで合意した。2016年6月から始動していたこのプロジェクトでは、デュポン、ダウ・ケミカル、テトラパーク、ヒューストン港、ロッテルダム港コミュニティシステムポートベース、オランダ税関、アメリカ税関と国境警備局など様々な企業・機関がIBMのブロックチェーンとクラウドベースのプラットフォームを試験運用した。

このプロジェクトは、輸出入における複数の企業・機関での業務効率化や高いセキュリティ下での取引を目的としている。

IBMのプレスリリースでは、次のように発表されている。

コンテナ輸送のグローバル・リーダーであるMaerskと、ブロックチェーン、サプライ・チェーンの可視化、および相互運用性ソリューションを企業向けに提供するリーディング・プロバイダーであるIBMは、新しいプラットフォームを強化するためにブロックチェーン技術を利用すると共に、人工知能(AI)、IoT、アナリティクスを含む、クラウド・ベースのオープン・ソース技術を利用します。

IBM Serviceは国境を超えた商品の輸送とデジタルでの貨物トラッキングを目的としており、最終的には関連する企業・機関もこの恩恵にあずかることができると述べられている。

ブロックチェーンを活用しB/L(船荷証券)をデジタル化するテストも

モノの輸出入に欠かせない書類のひとつとしてBill of Lading (B/L, 船荷証券)がある。B/Lは証券のひとつであり、この書類と引き換えに貨物が輸入者側に引き渡される。B/Lはオリジナル書類の発行が必須であるが、これをデジタル化させようという動きがある。ブロックチェーン技術の活用である。

イスラエルの海運会社ZIMは、同じくイスラエルのIT企業Waveとフランスの運送会社Sparxと協力し、ブロックチェーンをベースにしたアプリケーションWaveを用いて書類の発行・転送・受信を可能にした。この試みはテスト運用ではあったが、ペーパレス化への期待を一気に高めた。

まとめ

このように、貿易業界ではブロックチェーンの活用が急速に進んでいる。

世界的に有名な船会社や運送会社がこぞってブロックチェーンの活用を打ち出しているため、将来的に貿易業界ではどの企業もブロックチェーンの活用・導入を検討せざるを得なくなる可能性が高い。

大手船会社などがブロックチェーンを活用したプラットフォームを用いた業務の効率化を目指しているが、それを活用しない企業は全体的な業務効率化を阻害することになる。

スムーズに取引ができないことで商取引から外れる可能性もあるため、ブロックチェーン活用は貿易にかかわるすべての企業・機関が意識しなければいけなくなるだろう。