全てのボート保有者に向けた記録用スマートデバイス「Boatrax」
普段から陸上や大都市のど真ん中で生活していればそのようなインターネットの恩恵を大きく感じることはないかもしれないが、このありがたみは山の中や空の上など極端な環境においては一気に増大してくるものである。
あるいは海の上という環境も当てはまる。海水以外に何もないような海上では、そのあまりの隔絶されている状況から孤独を感じてしまうものだが、ネットワーク接続さえあれば常にコネクションを持った状態を維持することができる。
アメリカで開発された「Boatrax」は、そんなインターネットサービスをより身近にしてくれる役割を果たしてくれ、クラウドコンピューティングを用いて常に航行中の船の情報を常に記録し続けてくれる。
海上活動を支えるクラウドコンピューティング
クラウドコンピューティング技術はインターネットの使い方を大きく変えてくれたテクノロジーの一つであると言っても過言ではないだろう。
これまではデバイス本体にデータを記録したり、ソフトウェアをインストールしてアプリケーションを起動する必要があったものだが、クラウドはインターネット環境さえあればデバイス本体とは別の場所にあるサーバーへデータを記録したり、サーバーにインストールされているアプリケーションを利用することを可能にし、使用者のデバイスにかかる負担を大きく軽減することとなった。
このことにより生まれたメリットは、何と言ってもデータの共有が行いやすくなったことと、データの喪失の心配がほぼなくなったと言える点である。
これまでデータを複数人で共有する場合は直接メールで送り合うなどの作業が必要となったものだが、クラウドストレージ機能を利用すればわざわざデータを送りたい相手に送信せずとも、ストレージに保存しておくだけで複数人で同じデータを共有しておくことができるようになったため、簡単に情報のやり取りが行えるようになった。
また、データの保存を手持ちのデバイスやUSBメモリなどのハードウェアではなく、別の場所にあるセキュリティレベルの高いサーバーに依存することになるため、データが個人の過失により失われてしまうリスクはほとんどないと言える。
たとえ手元のデータが何らかの理由で破損してしまっても、クラウド経由でサーバーにあらかじめ保存しておけば、世界中の電力が一度に停電すると言った事故がない限りはそのデータが失われるリスクはほぼないに等しい。
このデータ破損のリスクに関する問題は特に海上のような極端な環境下で活動する人々にとっては非常に有効で、彼らは都会で生きる人々に比べてハードウェアが破損してしまうリスクがはるかに高いためだ。
クラウドコンピューティングは一般的な生活を楽にするために有効であることはもちろん、広大な自然環境で活動する人にとってはそれ以上に大きなメリットをもたらしてくれるテクノロジーなのである。
データをクラウド保存することのメリット
Boatraxもそんな自然環境でのクラウドコンピューティングを可能にしてくれるプロダクトで、電子ユニット(NMEA 2000)に接続することで利用することができる。
ユニットに接続し、あとは手持ちのスマートフォンに専用のアプリケーションをダウンロードすれば使用準備は完了だ。
記録できるデータは水深や船のスピード、回転数、エンジン温度、油圧にバッテリー状況など、多岐にわたる。それらのデータはネットワークに接続されている限り自動的にクラウドサーバーへ保存され、閲覧が可能となる。
保存されたデータだけでなく、現在の船のステータスもリアルタイムで閲覧することができるため、船舶状況をシンプルに確認するための手段としても非常に有効なデバイスとなるだろう。
記録されたデータはストレージ上で保存されることになるが、リアルタイムのデータと照らし合わせることで蓄積されたデータは真価を発揮する。平常時のデータが長期間にわたって記録されることで、仮に異常が発生した時にどの部分のデータが変化したことで異常が起き始めたのかを素早く確認し、トラブルシューティングを迅速に行うことができるようになるためである。
特に海上では迅速な判断と対応が船の命運を分けることもあるため、データをうまく活用できることは非常に有利に働くことになるだろう。
Boatraxは現在Kickstarterで出資者を募っており、300ドル以上の出資で一台入手することができる。
世界各国への発送にも対応しているため、船舶保有者は試しに導入してみるのも良いだろう。