弁護士より早く・正確に問題を解決するAIツール、LawGeex

AI(人工知能)はどの業界においてももちきりの話題であるが、弁護士がおこなっている業務の効率化にも役立つのではないかと言われている。

コンサルタント企業のマッキンゼーによると、弁護士の仕事の22%と法律事務所の35%の仕事は自動化できると予測している。

AIを活用することによりビッグデータの中から類似の過去の裁判の判例を探し出したり、トラブルの内容に適した法律に照らし合わせたりすることができれば、弁護士の業務を大幅に削減することにつながるのではないかと期待されている。

弁護士は膨大な法律の知識を持った法のエキスパートであり、私たちの日常生活における困り事やトラブルを解決してくれる頼れる存在である。弁護士の仕事は多岐にわたるため、例えば多くの書類を処理できるような弁護士の業務負担を減らすツールが必要だ。

以下ではペーパーワークの負担を軽減するAIを搭載したプラットフォーム「LawGeex(ローギークス)」について紹介していきたいと思う。

LawGeexとは

LawGeexはアメリカ・ニューヨークとイスラエル・テルアビブにオフィスを構える企業である。

同社は弁護士事務所や法律事務所で働く人、また一般企業の法務チームなどに向けて業務負担を軽減するプラットフォームを提供している。
AIを搭載した契約書などの書類チェックと承認プロセスを自動化するツールだ。

LawGeexのAIツールは機械学習と文章の分析、また自然言語処理といったテクノロジーを組み合わせることによって、膨大な文書を素早く・かつ正確に読み込むことができる。

法律にまつわる仕事は業務を進める上では正確さが必要とされるが、同時進行で案件を多数抱えているとキャパオーバーとなってしまう。またほとんどの業務においてペーパーワークが発生するため、業務を正確に進めるには多くの書類に目を通さねばならず、かなりの神経を遣うことになる。

LawGeexは、弁護士や法律事務所、一般企業法務チームなどのペーパーワークの負荷を軽くしてくれる。

LawGeexと弁護士の業務パフォーマンスを比較した実験

弁護士より早く・正確に問題を解決するAIツール、LawGeex

画像出展:LawGeex

LawGeexと人間の業務パフォーマンスを比較した興味深い実験がおこなわれた。

この実験は、米国で教育を受けた数十年の経験を持つ20名の弁護士とLawGeexの業務におけるパフォーマンスを比較をするために実施された。実験はスタンフォード大学、デューク大学、南カリフォルニア大学の教授らの協議により分析された。

実験対象者には4時間の制限時間が与えられ、契約の見直しや紛争の解決、秘密保持契約(NDA)、補償といった30件の問題に対するパフォーマンスが分析された。

分析ではLawGeexの方が人間より問題処理にかかる時間を短縮、また正確性も10%高いという結果が得られた。ある1件の契約書に関してはLawGeexは100%の正確性を記録したが、人間の弁護士で最も成績が良かった人の正確性は97%という結果であった。

スピードの点でも人間に優っている。LawGeexでは問題解決にかかった時間は約26秒。

人間の弁護士が問題解決までにかかった平均の92分であったため、LawGeexのAIツールを利用した場合大幅に時間を短縮できることが証明された。正確性については人間の弁護士の平均が約85%だったのに対し、LawGeexは94%とこちらも人間よりも良いパフォーマンスを示す結果となった。

LawGeexでできること

実験ではLawGeexが弁護士のパフォーマンスより上であるということが示されたが、具体的にはどのようなことができるのだろうか。

① 契約書類チェックの自動化

LawGeexでは、契約などにおける承認・否認事項をあらかじめ定義しておくことで書類の内容を自動的に読み込み、問題なければ1時間以内に承認される。否認されたものは内容を確認するための案件として回される。

② ポリシーをオンライン上で編集可能

LawGeexのAIツールでは企業の契約におけるポリシーをオンライン上で追加・変更することが可能だ。オンラインでの追加・変更は、書類を自動的に読み込む際にどの項目を承認し、またどの点で否認するのかといった定義を決めることができる。ポリシーの変更は自由に追加・削除することができるため、必要に応じて簡単に編集することができる。

③ 書類とポリシーの差異を分析

企業間の取引においてはまず契約書を締結することから始まるが、契約書にサインをする前には契約書に記載されている条件を入念にチェックする必要がある。もし後で相違を見つけたとしても、一度サインしたものを覆すことは非常に難しいためだ。

LawGeexでは企業のポリシーと契約書に記載されている文書の差異がないかを自動的にチェックする。問題のある箇所はマーカーで表示されるため、チェック漏れがないのに加え、契約書に盛り込んだ方が良い条項についても提案を受けることができる。これにより書類のチェックや承認にかかる時間を大幅に節約することができる。

④ ISO27001取得済、全てのデータを暗号化する

LawGeexのプラットフォームは情報セキュリティマネジメントシステム(IMSM)に関する国際規格であるISO27001を取得しており、全てのデータが完全に暗号化されるためセキュリティの高さも証明されている。

LawGeexのAIツールは高いセキュリティのもと、書類のチェックと承認プロセスを自動化することができる。

AIは弁護士の仕事を奪うのか?

弁護士より早く・正確に問題を解決するAIツール、LawGeex

画像出展:Pixabay

LawGeexのパフォーマンスの高さを知ると、その便利さから「弁護士の仕事はAIに取って代わられるのか」と不安になるかもしれない。

しかし、まだその心配はない。問題解決のためにはまず相談者から話を聞くことから始まる。人間の話にはあいまいな部分が多く含まれるため、様々な情報を集めた上で分類し、何が問題なのかを導き出す必要がある。

この部分はまだAIによって処理できる技術は出て来ていない。人の心情を汲み取るといった部分はまだ機械的に処理できるものではないだろう。まずトラブルを抱えた人に寄り添うことが弁護士の重要な仕事でもある。

LawGeexは弁護士や法律事務所、一般企業で働く人の業務を軽減するツールだ。書類を素早くかつ正確に読み込み、承認までのプロセスを自動化することによって業務の効率化を促す。LawGeexは法律にまつわることだけでなく、発注書の発行やソフトウェアライセンスの発行といったフォーマットが決まっている書類の発行にも利用されおり、幅広い活用も期待することができる。

LawGeexのAIツールを利用することによって業務にかかる時間を大幅に削減することができるため、人がより高度な仕事をするために時間を割くことを可能にする。

参考:LawGeex
https://www.lawgeex.com/