48時間のホバリングが可能な持久力を持つ新型ドローン「DARS」
無人かつ省エネルギーで動作することが可能なドローンは、競技用や娯楽用だけでなく、社会的に意味のある職務を全うするのにも非常に有益な働きをしてくれるポテンシャルを秘めている。
今回開発が進められているDARS(Drone Aérostatique Rigide Solaire)はアフリカにおける密猟や乱獲を阻止するべく発案されたドローンで、ソーラーパネルを駆使した48時間にもわたる滞空時間の長さが最大の特徴だ。
終わらないアフリカでの密漁
生命の宝庫とも言われているアフリカ大陸において、今多くの動物たちが生命の危機にさらされている。それは病気でもなく環境問題でもない、人間による乱獲が主な原因である。
アフリカでは15分に一頭の像が狩猟され、10時間に1頭のサイがツノを目当てに密猟されてしまっている。これまでアフリカ各国においても密猟の取り締まりは行われてきたが、未だに確実な取り締まり方法や防止手段は確立されていない。
アフリカゾウはこのままのペースで密猟が行われると今後10年の間に絶滅してしまい、アフリカゾウに限らず他の動物たちも同様である。仮にゾウが狩りつくされたとなればそのターゲットが別の動物へ向かうだけで、密猟そのものがなくなるということは、ただ待っているだけでは決してあり得ない話なのである。
地上での警備の増加は抑止力にはなるものの、広大なアフリカ大陸を全て監視するためにはあまりにもコストがかかり過ぎてしまう。そこで現在注目が集まっているのが空からの監視であり、長時間飛行可能なドローンの可能性である。
空からの監視はこれまでも検討されてきたが、ドローンの登場以前はあまり有効な策であるとは言えなかった。
最も効果的であると考えられていたのはヘリコプターによる巡回だが、これも多くの欠点を伴う施策であったため、効果を上げられていない。
欠点としては、まずヘリコプターの飛行はあまりにも音が大きすぎるために、遠くから察知されてしまいやすいので抑止力としての効果を持たないこと、そして有人の飛行になる上機体の維持費もかかるなど、コストが大きくなり過ぎてしまうという点が挙げられる。
そこでドローンを監視に用いるという案はこれらの問題を解決しうるとして大きく注目を集めていたが、既存のドローンではまだいくつかの問題を抱えていた。
一つは飛行可能距離が短く、監視するほどの持久力を持ち合わせていないこと。二つ目にサイズの小ささやパワーの小ささゆえに運搬能力に欠けていること。三つ目に天候によってそのパフォーマンスは大きく左右され、安定した運用が難しいこと。四つ目に夜間の飛行が難しいことである。
動物保護に特化したドローンであるDARS
広大な大陸を監視し、動物の命を守るためにはこれらの課題を解消できるドローンの開発が必要であった。そんな中DARSはそれらの問題を解決し、動物の保護に最適化された次世代のドローンとして開発が進められてきた。
動力はソーラーパワーを主としながら、特許申請済みの独自のフォルムでこれまでのドローンにはなかった安定性で様々な環境においても飛行可能な形状をしており、最大で48時間の自律飛行を可能、毎時65キロの風速にも耐えられるタフさを持っている。
搭載可能重量は最大で25キロにまで及ぶため、監視に必要な機材を積み込むのには十分なキャパシティを持っていると言える。
また、ヘリコプターの際には欠点であった騒音もDARSは出してしまうことはなく、ソーラーパワーをソースとする電気駆動となっているため、飛行は実に静かで地上には聞こえない。
動物を保護するために必要な装備としては、様々な機器が想定されている。例えば全方位の監視が可能な360度カメラにスタビライザー機能とスローモーション機能を設けて、不審者の特定などをより鮮明に行うことができれば、迅速な犯人の逮捕や現場への急行を確実なものとできるだろう。
あるいはナイトビジョンやサーマルビジョン機能を取り付けたカメラは夜間における監視を確実なものとしてくれる。密猟者は人目につきにくく動物もおとなしい夜間を狙って保護区に侵入してくるケースが多いためだ。
あるいは高性能GPSを搭載することで、リアルタイムに現場の位置を把握し、犯人逮捕の迅速化や動物の密猟を事前に防ぐことができる機会を増やすことができるかもしれない。新型ドローンの導入により、多くの保護のための施策を導入するきっかけになるのである。
DARSは一般販売される予定は今の所ないが、Kickstarterのプロジェクトを通じて支援し、さらなる性能の向上と動物保護に貢献することができる。テクノロジーを売るのではなくテクノロジーを用いた環境プロジェクトへの参加を呼びかけるのは、クラウドファンディングならではのプロジェクトであると言えるだろう。