学校内のいじめや暴力に対抗できる革命的なシステム「3S」
いじめは子供達の心に傷をつけるだけでなく、時として身体の健康や命をも脅かしてしまう事件に発展しかねないが、そういった大きな事件を未然に防ぐためには周囲の大人が状況を把握し、かついじめの被害を受けている子供やいじめを察知した子供がすぐに適切な対処を受けられるような環境が整っていなければならない。
フランスで開始されている「3S」プロジェクトは、テクノロジーの力によって世界中の学校や機関からいじめや暴力を根絶するために立ち上げられた。
世界中で終わることのないいじめ
UNESCOの調査によると、世界中のいじめの数は2億4千600万件にも昇ると言われており、世界の総人口が70億人であることを考えるとあまりにも多い数であると言える。このうちの13%ほどの報告は11~13歳の子供がいじめの被害に遭っているというもので、過去30日以内にいじめを受けたというものであった。そして8%はいじめの被害を日常的に受けているという、残念な結果となっている。
学校内におけるいじめは、子供の行いゆえにいきすぎた暴力に発展してしまいやすい。いきすぎた暴力は被害者に大きなストレスを与えたり、悲しみや恐怖、怒りといったマイナスの感情を呼び起こし、のちの発育にも大きな影響を与える。
短期的な症状としては学校への欠席の増加や体調不良の常態化、成績の低下などのリスクが大きくなってしまい、健康的な学生生活を送ることが難しくなる。
そして恐ろしいのは、時として取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうこともあるケースだ。生命に関わる怪我を負わされたり、復讐として加害者の命を奪ったり、あるいは被害者が自ら命を立ってしまうケースなど、こういった自体は世界中で頻発し、日本においても年に数回はニュースで目にする痛ましい事件である。
こういった事態に遭遇するたびにいじめ対策の徹底が叫ばれるが、21世紀に入って20年近く経とうとしている今日でも全く改善が見られないどころか、今はスマートフォンやインターネットが普及したことによりSNSいじめなどの新しい形式のいじめも生まれてきているというのが現状だ。
3Sの目指すテクノロジーによる救済
ここまでいじめが改善されなかった原因の一つとして大きいのは、学校や子供達のコミュニケーションの不透明さがあったことが大きい。
大人が状況を把握し、子供たちがいじめを安心して訴えられる状況は、動向を透明化することによって第三者がきちんと監視できる仕組みが整えられていなければ機能しない。これまでであればそれも難しいものであったのだが、インフォメーションテクノロジーの登場は、技術的に学校内の関係や動向の可視化を可能にしてくれることとなった。
3Sが注目するのはテクノロジーによる透明性確保の可能性である。特にインターネットによる事態の透明化の可能性と、被害者・加害者などの関係者のプライバシーを守ることもできるという秘匿性の高さが同時に確保されるため、これを学校へ積極的に取り入れない選択肢はない。
インターネットはその匿名性の高さゆえに陰湿ないじめの温床となる可能性を持っている一方、いじめ被害者やいじめを察知した子供が内密にしかるべき機関や大人へ連絡することのできるライフラインとしての役割も持っている。きちんとインターネットによるライフラインを整備してあげることで、多くの子供がいじめから脱出する手がかりを得ることができるはずだ。
また、大人にとっても校内へのテクノロジーの導入はメリットが大きい。子供達の関係性をデータによって教師は状況を客観的に把握し、いじめを未然に防ぐこともできるほか、子供達の両親も自分の子供がどのような学校生活を送っているのかを具体的に知ることができるようになることで、いじめの防止だけでなく子供たちをどのように教育していくのが適切かという教育の指針にも活用することができる。
専門機関にとっても、いじめを受けていると感じている子供がどのような理由でいじめや差別を受け、適切な解決策を把握するのに集積されたデジタルデータは非常に有益である。少しでも素早い問題解決を図ることで、多くの子供たちを救えるとともにいじめによる症状の悪化をも防ぐことができるためだ。
いじめが学校内でなくならないことは、子供にとっても大人にとってもメリットのない避けるべき事態である。テクノロジーを積極的に導入することを3Sは推進することで、子供達の人権を保護していきたいというのが3Sのミッションでもある。