Raspberry Pi を活用したオーディオガジェットプロジェクト「Nano Sound」

Raspberry Pi は小さく、軽量でリーズナブルな世界で最もポピュラーなコンピューターの一つであるが、この汎用性の高いテクノロジーをオーディオ分野において活用させようという取り組みが「Nano Sound」と呼ばれるプロジェクトである。

三つのプロジェクト要素

Nano Soundは主に三つの要素に分かれている。一つ目のプロダクトであるNano Sound Digitalはオーディオとしての機能をオールインワンにまとめあげたもので、S/PDIF端子(デジタル音声入出力端子)と再生・停止などのメディアコントロールボタン、再生中の曲名などを表示してくれるディスプレイ、遠隔操作を可能にするリモコンと電源ボタンが搭載されている。

Raspberry Pi を活用したオーディオガジェットプロジェクト「Nano Sound」


Nano SoundはRaspberry Piに最適化されているだけでなく、Raspberry Piに対応するHifiberryデジタルオーディオドライバとも互換性を持っている。スペックとしてはオーディオビット数は16-24bit 、サンプリングレートは32-192hkz、超低ジッタークロック用27Mhz高精度クリスタル搭載となっている。

Nano Sound Digitalには二種類のバージョンが予定されており、それぞれBasicとProによって微妙にスペックが異なる。Proの場合はディプレイにはOLED(有機EL)ディスプレイが採用されているのだが、Basicは通常のディスプレイとなっている。しかしながらディスプレイに関しては後ほど換装可能であるため、最初は廉価版で様子を見たいと考えている人にとってはベーシックモデルが適していることだろう。


Raspberry Pi対応ということで、このプロダクトは完全なオープンソースとなっている。したがってディスプレイのようなハードウェアとしての側面だけでなく、ソフトウェアそのものも自由にオリジナルでカスタマイズすることも可能となっており、市販のオーディオとは違った独創性の高い楽しみ方ができるのはNano Sound Digitalの特徴と言える。

二つ目のプロジェクトがNano Sound Playerである。こちらはNano Sound Digitalに比べてよりオーディオマニア向けのターゲットを想定した音楽プレイヤーで、有機ELディスプレイを標準搭載しながら本体備え付けのボタンとリモコンでいつでも音楽を楽しめるよう最大限のサポートを行ってくれる。

Raspberry Pi を活用したオーディオガジェットプロジェクト「Nano Sound」


高性能のスピーカーのポテンシャルを最大限に引き出すためには、優れたアンプの存在も欠かせないのだが、Nano Sound Playerに付属するアドオンであるNanoSound AMPを直接繋げてしまうことで、パワフルなスピーカーの性能を余すことなく体験することができる。また無線・優先を問わずネットワーク接続に対応しているため、インターネットから直接音楽を流すということも可能である。近年はストリーミングサービスが音楽体験において重要な地位を占めているが、Nano Sound Playerはそのようなニーズにも上手く対応してくれている。

そして三つ目のプロダクトが、Volumio対応プラグインである。Volumioはオーディオマニアに向けた開発チームとパートナー関係にあるRaspberry Pi対応の音楽プレイヤーで、最高の音質と優れたユーザビリティのアプリケーションでの操作体験で評価を得ている。

Volumioもまたオープンソースでリーズナブルな価格でサービスを展開しており、ビジネスでの運用にも対応しているため興味のある方は公式サイトから詳細を確認することができる。

Volumio公式サイト:https://volumio.org/

Nano SoundのプラグインとしてのVolumioは、Volumioの使い勝手を更に向上させ、スタンドアローンの音楽プレーヤーとして機能させ、もはやPCやスマートフォンの接続をも必要とさせないようにすることも可能となる。こちらも本家と同様オープンソースで開発が進められ、Nano Soundのコミュニティによってアップデートが行われている。



無駄を取り除いたスリムなプロジェクト

Nano Soundのプロジェクトは以前にもほぼ同様の企画でKickstarterにおいて資金調達が行われていたのだが、そのぶんは失敗に終わっていた。その原因として、開発チームはターゲットを特定層に絞り込み過ぎたことを大きく受け止めており、今回のプロジェクトでは前回よりもより多くのマーケットを想定して改良が加えられたプランを公開している。

前回はスピーカーもバンドルパックの一部として採用していたのだが、スピーカーをプランに組み込む必要性はあまりなく、これがコストアップの要因になっているとして、今回のプロジェクトでは削除されている。オーディオマニア向けの製品を販売するなら、スピーカーはすでに所有していることが考えられるため、これは賢明な判断だったと言えるだろう。

プロダクト本体もすでにプロトタイプが問題なく求めていたパフォーマンスを発揮しているため、生産・流通にも支障をきたすことはないという。

Nano Sound Digital Basicは290香港(HK)ドル、Proモデルが320HKドル、そしてNano Sound Playerが1490HKドルで販売されており、無事規定数の購入を確保することができれば2018年の4月に順次発送が始まるとのことだ。