世界の省エネ化を促進してくれる新しいソーラーパネル「Senergy Force」

過度の化石燃料への依存により、現代ではエネルギー資源の枯渇が叫ばれるとともに、化石燃料を消費することで生じる環境へのダメージにも配慮する必要に迫られている。

石油や石炭、天然ガスといった化石資源は、その使い勝手の高さゆえに依存性が高く、これまでに様々な代替エネルギーの研究開発が進んできたが、現在ではいずれも化石燃料ほどのエネルギー効率の高さを維持するには至っていない。

しかしそれでもうまく新エネルギーを活用できるような技術開発を進めていくことで、環境へのダメージを軽減させていくことはできる。ポルトガルで開発された「Senergy Force」は、これまでのソーラーパネルよりもさらに効率の良いエネルギー変換を行ってくれる可能性を持っている。


小さく、使いやすい次世代のソーラーパネル

ソーラーパネルは太陽光を集積し、それを電気に変換して様々な用途に用いる発電システムを採用している。太陽エネルギーの持つ力は偉大で、太陽が1時間に放出するエネルギーは、地球全体で人間が消費するエネルギーの一年ぶんに相当すると言われており、これほど強大なエネルギーが絶えず地球に訪れているという事実を見逃すわけにはいかない。

Senergy Forceは従来のソーラーパネルをさらに効率よく運用するために開発されたシステムを導入しており、「Facade」と名付けられたパネルの一枚一枚はあらゆるスケールに最適化することができる汎用性の高いプロダクトとなっている。

太陽光を集めて生活のためのエネルギーとして再利用するという発想は、当初は革新的であると賞賛を集めたものの、現在抱えている問題としてはソーラーパネル一枚を製作するためのコストが高く、かつパネルの重量が重くなりすぎるために汎用性にかけてしまい、結果的にパネルを作成し、設置するためにかかるコストが太陽光発電によって得られるコストの削減量を上回ってしまうということで、しばらくは太陽光発電も下火になっていた。

しかしポルトガルにおけるSenergy Forceプロジェクトの中で開発された新たなソーラーパネルは、パネルを構成するいくつかのレイヤーにアルミニウム核と銅を使用することで、エネルギー生成に必要な面積を削減し、小さい表面積でも大きなエネルギーを生み出すことに成功したのである。

世界の省エネ化を促進してくれる新しいソーラーパネル「Senergy Force」


この発明により、まず一つの建物の運営に必要なエネルギーの80%を削減することができるようになり、従来のソーラーパネルと比べても20~50%のエネルギー削減効果をもたらすことに成功した。

加えてサイズが小さくなったことで、ソーラーパネルのために必要以上に大きなスペースを取る必要がなくなったため、建築の際の制約も取り払われ、一枚のパネルが小さいために必要なぶんだけ無駄なくパネルを設置することができるようになった。ソーラーパネルを設置するためにはやたらと大きな建物でなければ採算が取れないという皮肉な状況もSenergy Forceのパネルであれば解決されることだろう。

加えてFacadeは設置する場所も融通が効きやすい。これまでのソーラーパネルであれば屋根の上など日当たりの良い部分に、上に乗せる形で設置するのが一般的であったが、Facadeはあらかじめ建築物に組み込む形で設置し、かつ屋根や壁、内張として扱うことができる。つまり、垂直な場所であっても太陽光を集積できるようになったということだ。

世界の省エネ化を促進してくれる新しいソーラーパネル「Senergy Force」


あるいはカラーリングに関しても変更が可能で、個人の好みや建物の雰囲気に合わせて色を変え、デザインの画一化を防止してくれる。

Senergy Forceのもたらすエネルギーの使い道

Facadeによって集積されたエネルギーは、様々な使い道で私たちの生活をサポートしてくれる。暖房や冷房、換気といった空調設備はもちろん、ヒーティング機能を応用した湯沸しやサウナ、洗濯乾燥機やハンドドライヤーと、熱を必要とするあらゆる設備に直接熱を送ることができるのである。

世界の省エネ化を促進してくれる新しいソーラーパネル「Senergy Force」


また、換気などの設備のコントロールは自動で調節してくれ、いつでも快適な生活が送れるよう人の手がなくとも機械的にサポートしてくれるよう設計されている。もちろん人間が直接システムを管理することもできるが、管理方法も手持ちのスマートフォンからとなっているため、わざわざ専用のリモコンなどを用意せずとも快適に調節ができるようになっている。

ポルトガルではすでにSenergy Forceの技術を使った建物も存在しており、室内の空調に使われているほか、2018年にはFacadeが組み込まれた建物の建築も予定されている。大量生産が始まれば、今後はまずますこの技術が多くの建築物に採用されていくことだろう。

Senergy Forceプロジェクトは現在Kickstarterで出資者を募っており、出資者にはモジュール仕様の割引などの様々なリワードが用意されている。

プロジェクトそのものはポルトガル国内でしばらくは進行していくものと思われるが、今後は世界展開も行われていくことが予想される。日本のような資源の少ない国において、太陽光を活用したエネルギー開発は大きな重要性を持つが、Senergy Forceもまた日本のような資源を持たない国にとっては大きな発明の一つとなるだろう。