データから最適なスキンケア商品を提案する「Proven」
アドバイスを求めて化粧品カウンターへ訪れると美容部員が最適な商品を勧めてくれるが、様々なユーザの肌質とたった数種類のスキンケア商品が完全に適合することはそう多くない。もちろん、美容部員はユーザの希望にこたえようと親身になって商品選びを手伝ってくれるが、来店した客の肌に商品が合うかどうかはまた別の話である。
女性であればわかると思うが、効果の出なかったスキンケア商品を買うことほどもったいないことはない。なぜなら効果が出ないとわかった途端、購入する価値がないものを買ってしまったと後悔するからである。
このようなミスマッチを解消させる合理的かつ理論的な技術を生み出したスタートアップがある。
2016年に設立されたアメリカ・サンフランシスコの企業「Proven Beauty」だ。
Provenのテクノロジーとは
Proven Beautyのサービスである「Proven」では、膨大なデータの中から最適なスキンケアを提案する。Provenのウェブサイトにアクセスし、簡単な質問に答えていくことでユーザ一人一人に合ったスキンケア商品を推薦してくれる。
https://www.tryproven.com/
Provenは800万人の女性のデータをもとに、10万点もの商品と2万の成分からユーザにとって最適な商品を機械学習とディープラーニングを駆使して分析。
スキンケア商品の提案を受けるためには、まずProvenのWebサイトを訪問し質問に答えていく必要がある。ユーザが質問に答えていくことで、Provenではこのような点について分析する。
・季節や地域による天気パターンの変化
・ライフスタイルの変化(ストレスレベル、睡眠レベル)
・ホルモンバランスの変化(妊娠や生理など)
従来のスキンケア商品の販売方法は「あらかじめ予想される肌質のトラブルに向けた商品」で、ユーザの生活環境や細かい肌質については汲み取れないものが多い。そのため、ほとんどのユーザはスキンケア商品を購入後も完全に満足することはなく、効果が確認できなかった商品の使用は諦めてまた一から商品を探すというループを繰り返している。
肌質の違いは様々で、乾燥肌+脂性肌の人もいればアレルギー持ち+乾燥肌、脂性肌+毛穴が開きやすい肌...など、挙げればきりがないほど人の肌質は多様である。
Provenが提供しているサービスは、全世界のユーザに向けたパーソナライズされたスキンケア商品の提案と販売である。
Proven設立の経緯
Provenの共同設立者であるミン・ツァオ(Ming Zhao)氏とエイミー・ユアン(Amy Yuan)氏は、共に自分の肌質に悩みを抱えていた女性であった。ツァオ氏は多忙な仕事によるストレスで肌がボロボロになり、ユアン氏は元々アレルギーから来る肌のトラブルを抱えていた。
ツァオ氏は数々の化粧品に投資して試してみた結果、ようやく効果のあるスキンケアに出会ったが、有効なスキンケアはほとんどなかったと語っている。
「私はとても怒りを感じ、美容業界に裏切られたような気がしました。そして実際に私の肌に効果的だったのが、数人の異なるフェイシャリストによって作られたカスタムされた商品だったのです。このため、誰かの状況、誰かの肌に合わせた商品を仕立てるという最適化されたアイデアが何年も前に私の頭に最初に思い浮かびました」
https://techcrunch.com/2018/02/22/proven-wants-to-sell-ai-distilled-custom-skincare/
ユアン氏は自身の計算物理学のバックグラウンドをもとにして、Provenのシステムの元となるビッグデータの活用をツァオ氏に提案。最適なスキンケア商品を見つけるためのレビューを収集するAIエンジンの開発に取り組んだ。
Provenの特徴
Provenの最大の特徴はユーザに最適のスキンケア商品を勧めることだが、それ以外にも以下のような特徴がある。Provenのスキンケア商品では肌のトラブルを引き起こしやすい以下の成分を含んでいない。
・ラウリル乳酸ナトリウム(SLS)
・パラベン
・香料
・アルコール
・トリクロサン
・DMDMヒダントイン(防腐剤)
これらの化学物質を排除し、さらに動物由来の成分を使用しない・かつ動物テストをおこなわないという明確なメッセージを打ち出している。
Provenの使い方
Provenで最適なスキンケア商品を見つけるためには、3分もあれば十分だ。
Provenのウェブサイトにアクセスし、用意された設問に答えていくことでユーザの情報に基づいた肌データの結果がわかる。
最後の画面では、Provenが肌トラブルを改善するために推奨することと避けるべきことについてアドバイスを提示する。その上で、ユーザの肌質にあったスキンケア商品を提示する、という流れである。
診断結果では下の図のようにユーザの肌に合う化粧水やクリームといった商品が提示される。
Provenのスキンケア商品を一式試すのは少々ハードルが高いと思うのであれば、2~3週間程度使うことができるトライアルキットをオーダーすることが可能だ。今回試してみたところ、トライアルキットは49.99ドルという価格であった。それほど高価でもないため、Provenを初めて試す人にも手が届きやすいのではないだろうか。
最後の注文ページから商品を購入することができるため、外出することもなく全てのプロセスがオンライン上で解決する。
まとめ
Provenはオンライン上で肌質の分析・商品の提案・商品の注文までを一貫しておこなうことができる便利なプラットフォームである。世界中の誰でも利用することができ、ユーザ一人一人に合ったスキンケアを提案してくれるProvenのような機能は、今までスキンケアに悩む女性が求めていたものではないだろうか。
近年はユーザが手軽にコスメ商品の使用後のイメージを得ることができるスマートフォンアプリを介した美容に関する技術が注目を集めている。スマホカメラでメイクをしていない顔を写すだけでフルメイク後の顔を映し出すアプリであったり、資生堂が2017年に発表したものでは肌のキメを診断する「肌パシャ」などがある。
Provenはまだローンチしたばかりのサービスで実際の製品についてのレビューはまだないが、今後美容業界においても最新テクノロジーを駆使した便利な機能が次々と発表されていくだろう。