ドイツ・ベルリンで進む物流デジタライゼーションの幕開け
商品を販売するにあたって必ず意識することのひとつとして、物流コストがある。
商品価格には製造にかかる費用もそうだが様々なコストが載っており、物流コストはそのうちのひとつだ。エンドユーザが望んでいるのは「少しでも安く商品を購入すること」である。このエンドユーザの要望に応えるために、何社もの物流会社から見積もりを取る作業が発生する。海外との輸出入をおこなう場合、フォワーダー※を通して見積もりを取ることもある。
※フォワーダー...荷物を海外へ輸出・もしくは海外から輸入したい企業などから依頼を受け、荷物を目的地まで運べるように通関・輸送手配などを采配する中間業者のこと。
見積もり依頼があると、物流会社は運ぶモノの種類、区間、輸送手段、ルート、大きさなどから概算の見積もりを算出する。海外との輸出入をおこなうのであれば、コンテナもしくは小口の混載として運ぶのか、また海送・陸送・空走にするのかでコストや配送日数も大きく変わる。
この見積もりはすぐにできるものもあれば、時間を要することもある。見積もりを依頼した企業は早く金額の見積もりを比較したいので、できればこの見積もりにかかる時間を省略したいと思っている。
今はIT技術を用いることによって、見積もりなどにかかる時間を短縮することができる。
以下では、ドイツ・ベルリンに本社を構えるふたつの企業について紹介していく。
見積もりから配送までオンラインで一元管理 FreightHub(フレイト・ハブ)
FreightHubは、ダッシュボード機能を用いて物流に関する管理を一元化し、ユーザーにとって使いやすい設計のプラットフォームを提供している。
FreightHubでは物流に関する見積もりの段階からオンライン上で確認することができる。さらに、(輸送中に発生する予想外の費用はあるだろうが)見積もりには隠れコストがないため実際の請求書を見て驚くことがない。
この見積もりの優れている点は、複数の物流コストを一括で比較することができることである。見積もりをすぐに参照できるのはもちろん、そのまま輸送のブッキングも可能だ。Port of Discharge(荷揚港)を複数指定して一番安いルートの料金を比較することもできる。
これらは非常にユーザー目線のサービスである。通常であれば見積もりを複数の物流会社から取り価格を比較したあとに決定することになるため時間を要するが、FreightHubでは「どの物流会社を使うか」から入るのではなく、都度様々な条件を指定して一番条件に合ったものを選ぶことができる。
またさらに良い点は、輸送中の貨物を同じプラットフォームからトラッキングできるところだ。輸送中の貨物は案件ごとにバラバラに管理していることもあるため、同じプラットフォームで管理することによってヌケ・モレを防ぐことができる。
●Amazon のFBAにも対応
AmazonのサービスであるFBA(Fulfillment by Amazon)は、Amazonの管理倉庫に第三者企業の商品を置くことによりAmazon上で商品を販売・出荷するAmazonの代行サービスである。Freight HubではFBAサービスのためにエリア限定で輸出入サポートを行っている。利用できるエリアはアメリカへの輸出と欧州への輸入で、コンテナは取り扱っていないがLCL(小口貨物)に対応している。
https://freighthub.com/en/amazon-fba/
Techcrunchの記事によると、FreightHubは設立わずか17ヶ月で650の顧客を獲得し、また設立1年半でシリーズAにて2,000万ドルもの投資を受けたと報じられており、同社への期待の高さが伺える。
https://techcrunch.com/2017/12/13/freighthub/
FreightHubのサービスは、これまでメーカーや商社が業務をおこなう上で面倒であった見積もり作業や貨物のトラッキングを容易に進めることを可能にする便利なサービスだ。
https://freighthub.com/
物流業者とフォワーダーをつなぐInstaFreight(インスタフレイト)
Instafreightの特徴は物流業者と物流を手配する企業を同社のプラットフォームを使ってつながることができることが最大のポイントである。
物流業者は自社の保有するトラックで常にモノを目的地に運んでいる状態が一番理想的である。さらに理想的なのが、行きだけではなく帰りも貨物を載せて運ぶことが最も収益を上げるのに効率的な方法である。しかしどうしても予約がない時も発生するため、トラックも運転手も待機させなければいけないという無駄が生まれてしまう。
一方、物流業者を手配する企業はできるだけ低い料金で納期に間に合う配送を望んでいる。配送の予約をするのはフォワーダーであったりメーカー・商社が直接おこなったりするが、予約する流れとしては同じである。
例えば、低いコストを設定しているA社に荷物を指定の日時に運んで欲しいとする。しかしA社はその日時に予約がいっぱいで運ぶことができない。そこでB社に連絡をするが、こちらも予約で埋まっており運ぶことができない。そして今度はC社に確認をとる、といった具合だ。
このように、繁忙期になると予約がいっぱいなため物流会社も輸送に対応できず、予約できる会社をしらみつぶしに探すという作業が発生し、時間がかかってしまう。物流会社への予約は非常に早い段階でおこなうのがベストだが、顧客から急な依頼が来たりすることもあるのでなかなか思うようにいかないのが現実である。
InstaFreightを用いれば、フォームに輸送する貨物の条件を指定していけば、すぐに見積もりを確認することができる。またトラックの予約が完了すると、配達完了まで貨物のトラッキングもおこなうことができる。
eutransportの記事によると、現在3,500もの物流会社が同社のプラットフォームに登録をしている。
https://www.eurotransport.de/news/cargoline-und-instafreight-arbeiten-zusammen-8989804.html
InstaFreightは2017年6月にはドイツ・フランクフルトに本社のある物流大手のCargoLine(カーゴライン)と業務協力し、同社とともにさらなる業績拡大を目指す。同年11月末には民間の投資会社から800万ユーロの投資を受け、これからの活躍が期待できる企業である。
https://www.instafreight.de/
まとめ
以上、FreightHubとInstaFreightの二つの企業を紹介した。
これらの企業が提供しているプラットフォームは、今まで貿易・物流業界で当たり前となっていた業務の非効率な作業を解消することにつながるだろう。
海上貨物でいうと、ヨーロッパにおける最大の貨物取り扱い港はオランダのアムステルダムであるが、第2位はドイツのハンブルクである。また航空貨物取扱量においてはフランクフルト空港がヨーロッパで最大であるため、物流ハンドリングにおける効率化はドイツならびに国際貿易において非常に大きな意味を持つ。
FreightHubとInstaFreightが提供しているプラットフォームは、デジタライゼーションによる物流効率化をより促進させることになるだろう。