3Dプリンターの有害な煙を除去してくれるサポートキット「box3d」

しかしながら、インクジェットプリンタとは全く違うアプローチでデータを出力しているぶん、これまでのプリンターでは考えられなかった問題も噴出しつつある。それはプリンターが動作している時に、人間の生活に健康的な被害をもたらしているのではという懸念だ。

3Dプリンターが出力に使う原材料は樹脂などになるのだが、これらの材料に熱を加えることで形を変形させ、データに合わせた出力をしている。しかしながらこの熱を加える際に出てきてしまう1ミリにも満たない物質が蒸気とともに空気中に舞い上がり、人間に対して様々な悪影響を及ぼしてしまう。

「box3d」と呼ばれる3Dプリンタ専用のサポートキットは、このような有害物質の拡散を最小限に抑えられることを主眼に設計された、画期的な発明であると言える。

3Dプリンターから体を守ってくれるキット

box3dという名前の通り、このキットは箱のような形状になっており、実際に使用している3Dプリンタの上から被せるようにして使用する。3Dプリンターを丸ごと覆ってしまうことで、あらゆる排出物の出口を一つに絞り、無駄な拡散を防ぐことができる。

さらにbox3dに取り付けられている換気口にはカーボンフィルター、さらに空気孔を接続するためのコネクターが取り付けられており、放出される有害物質は最小限に、かつ野外へ放出することもできるようになる。

3Dプリンターがそういった空気汚染の可能性を秘めているのにもかかわらず、なぜ室内で使用しているのかというと、外の空気に必要以上に触れてしまうことで材質の温度低下を招き、出来上がりのクオリティを損なわせてしまう可能性があるためだ。

そのような理由から屋内での使用を推奨されている3Dプリンターだが、今回のbox3dを使用することで得られるメリットはいくつか存在する。

まず一つ目は有害物質を人間が吸い込んでしまう可能性が低くなり、仮に屋外へ放出するにしてもカーボンフィルターを通過させることで環境に無害なレベルの空気を放出することができるため、エコロジカルなシステムを構築できることだ。

そして二つ目にbox3dを被せることで、３Dプリンターは密閉された環境を維持でき、プリンティングのクオリティが損なわれる心配もなくなった。もちろんプリントの様子は外からでも確認できるよう一面が透明となっているため、きちんと管理下に置くことができる。

そして3つ目に3Dプリンタの放出する騒音を抑えることもできるようになった点だ。3Dプリンタを使ってみるとわかるのだが、通常のインクジェットプリンタに比べて大きなノイズが動作に生じるため、室内で使うぶんには大きな不快感を与える可能性を持ってしまっている。

しかしながらこの点においてもbox3dの密閉性は活躍できる。3Dプリンタをbox3dで閉じ込めてしまうことにより、騒音を大きく抑えることができるのだ。加えて箱の素材も絶縁にしてしまうことで、さらなる騒音吸収効果を想定して構成されており、そのノイズ削減効果は大きなものが期待できるだろう。

大量生産に見合うニーズの存在

現在box3dは３つのサイズレベルに合わせて制作されており、使用している3Dプリンタに合わせて好きなサイズを選ぶことができる。

以前も開発チームは同じような製品を開発し、実際に販売に移ったものの、反響は良かったが少数の販売ではパーツの高価格さゆえに採算を取ることができなかった。そのため今回は大量生産を前提とした展開を考えており、できる限りリーズナブルに、かつ多様なニーズにこたえられるようプロジェクトが進行している。

また、大量生産にあたっても、3Dプリンターに携わる多くの企業や個人が3Dプリンターのもたらす排出物に関する問題を解決することができていない様子から強いニーズを感じており、そのことが今回のプロジェクトを後押しすることにもつながっているようだ。

box3dは現在Kickstarterで出資者を募っており、5000ユーロを目標金額としながらもすでに1万ユーロ以上の資金調達に成功し、うまくニーズを捉えられている。

発送は世界各国に対応しており、IKEAの採用する買手組み立て式で送られるため、比較的安全かつローコストで発送されるとのことだ。

3Dプリンターの排出する騒音や有害物質は頭痛や吐き気、重症になると脳卒中や喘息をも引き起こしてしまう深刻な問題でもある。特に対策まで予算をかけられない個人レベルでの使用者はこの健康問題に頭を悩ませていたかもしれないが、box3dがあればリーズナブルに問題をクリアすることができそうだ。