コンパクトでも臨場感のある体験を楽しめるVR装置「Yaw VR」

2016年から2017年にかけて仮想現実、通称VRテクノロジーの進歩と普及のスピードは目まぐるしいものであった。この2年ほどでVR技術はより多くの人の注目を集め、ARやMRなどVRに付随する技術の進歩にも大きく貢献した。

視覚的な効果として注目されるVRだが、仮想空間の没入感が増せば増すほどニーズが高まるのが視覚に追従する身体的な臨場感である。現在普及しているVR機器はヘッドセットにとどまるもので、まだまだ限定的な効果にとどまっているが、北欧発祥の「Yaw VR」と呼ばれる装置は、視覚以上の仮想空間体験を与えてくれる可能性を秘めたプロダクトであると言える。

コンパクトでも臨場感のある体験を楽しめるVR装置「Yaw VR」


写真を見てもわかるようにYaw VRは非常にユニークで未来的な形状をしているVR装置だ。基本的な使い方としては、Yaw VRのヘッドセットを装着して半球型のシートに乗り込むというものだが、このシートが半球の形状を利用して滑らかな挙動でプレイヤーを上下左右に動かしてくれるのである。


コンパクトでダイナミックなVR機器

これまで映画館やエンターテイメント施設でシート連動型のコンテンツというものは存在したが、Yaw VRはそういったものを家庭で楽しめるように生み出された装置だ。

施設に設置されているVR機器に比べれば遥かにコンパクトなYaw VRだが、普段使用しない場合や持ち運びの際には各パーツを分解し、折りたたんで一つにまとめておくことが可能なため、さらに機動性の高いフォルムで取り扱うことができるのである。立体的な動きが必要とされるVR設備だが、このような複雑な動きを必要とする場合でもドームという形状をうまく活用し、快適な動作とコンパクト性という二つの特性をもたらすことに成功したプロダクトである。

折りたたんだ際のサイズは直径29インチ、高さ15インチという、人が乗り込んで高いパフォーマンスをこなすとは思えない大きさになることは驚きであるが、サイズに見合う軽さを備えていることも特徴的である。

コンパクトでも臨場感のある体験を楽しめるVR装置「Yaw VR」


重さは約15キロで、力のある人であれば一人で、女性や子供でも二人で取り掛かれば難なく持ち上げられる重量である。まるでテレビゲーム機器を片付けるように、体感型のVRもコンパクトでカジュアルに機器を移動させたりして取り扱うことができることが普通になっていくことを予見させる特徴である。

どこにでも持ち出せるという特徴は、屋内に限らず野外でも取り扱うことができる可能性も示唆している。より臨場感を求めて野外でのVRにトライするという試みもYaw VRは可能にしてくれるだろう。

ドーム状になっている本体部分の可動域も大きく、最大24度まで傾斜することができる。体験型アトラクションのクオリティが高まっている中、多少の立体運動では驚いたりしなくなった現代人でも、360度左右に動き、上下最大25度の可動域が確保されてダイナミックな動きをするYaw VRを体験すれば、誰もが驚き、そして満足することは間違いない。

動作に余計なノイズが生じることもなく、動きは滑らかかつ限りなく無音に近い。大型の筐体はその動作音から家庭用で用いるには敬遠される節もあるのだが、Yaw VRに関してはその問題はなさそうだ。


そのスピードも素早く、最大で1秒あたり160度回転が可能なほどの加速ができる。スピード感は没入間のあるVR体験には欠かせず、パイロットシミュレーターやドライブシミュレーターなど、実際に操縦席に座っているかのような体験のためには機動力の要求されるスペックが必要になりそうだが、Yaw VRはそれもクリアーしている。


少しでも多くの人がVRを楽しめる環境のために

機器の性能を最大限発揮し、かつ楽しむためにはソフトの存在も欠かせない。Yaw VRはSimToolsやその他80を超えるシミュレーターアプリケーションに対応している。加えてPCを介さないプラットフォーム、例えばOculus GoやSamusung Gear VR、Playstation VRへの対応も現在進行形で進めており、いずれは自分の所有するVR機器、あるいは好みの機器をえらんでYaw VRを併用することができるようになるだろう。

コンパクトでも臨場感のある体験を楽しめるVR装置「Yaw VR」


Yaw VRはオープンソースとして開発されたということもあり、企業だけでなく個人でも好みのVRコンテンツを制作し、Yaw VRで楽しむこともできる。まだ世間に自分が満足するようなYaw VR向けのコンテンツがないと感じれば、自分で開発して世にリリースするというのは夢のある話である。

実際Yaw VRのように機器として新しい機能を秘めており、かつクラウドファンディングでリリースする小規模なものに関しては、クローズドよりもオープンに開発を促す仕組み作りがその後の発展においても大きな役割を果たす。コンテンツとしてユーザーを獲得するだけでなく、デベロッパーの醸成にも貢献することができるためだ。

Yaw VRは現在Kickstarterで出資者を募っており、目標金額の15万ドルに向けて着実に資金提供者を獲得している。

通常1190ドルでYaw VR本体をリワードとして受け取れるところ、早期出資者には890ドルで入手できるプランも用意されている。

世界各国の発想に対応しているため、興味のある方は一台購入してみるのも良いかもしれない。