Raspberry Piに対応するモジュラー式スマートフォン「Pi Talk」

DIYで遊んだり学習できるエレクトロニックキットは様々存在する。例えばイギリスで開発されたARMプロセッサ搭載のRaspbebrry Piというシングルボードコンピューターは、コンピューターサイエンス教育を促進することを目的に制作された製品で、2012年の発売以来1100万台以上販売されている。

モデルチェンジを繰り返して来たRaspberry Piは大人も子供も関係なくカジュアルにサイエンスを学ぶ事ができるという事で人気を博して来たが、今回発表された「Pi Talk」もRaspeberry Pi の知識を応用して取り扱うことのできるモジュラースマートフォンだ。


Pi Talkは世界で初めてRaspberry Pi に対応するモジュラースマートフォンで、開発にはこれまで培われて来たRaspberry Piの知識とスキルをそのまま用いる事ができる。Raspberry Piにはいくつかのモデルが存在するが、Pi zero、Pi 2、Pi 3にはいずれも対応している。これらはPythonによってコーディングする事ができるのだが、Pi Talkは3Gモジュールを使用する事により始めて音声とデータのコミュニケーションを3G回線で可能にしたのである。

コミュニケーションという以上、Pi Talkは一方的な情報送信ではなく双方向的な用法のやりとりができる。電話をPi Talkから普通の電話にかけることもできれば、普通の電話からPi Talkに発信することもできる。また、電話回線を用いた情報通信といえばSMSの存在も忘れてはならないが、SMSの送受信もPi Talkは可能である。

あるいは、写真やビデオの撮影もPi Talkは行う事ができる。カメラを装着してしまえば、一般的なスマートフォンと同様に撮影が可能となる。

Raspberry Piに対応するモジュラー式スマートフォン「Pi Talk」


Pi Talkは専用のソフトウェアでコントロールする事ができる。モジュールの設定やSIMカードの情報などはこちらから閲覧する事が可能だ。

Raspberry Piに対応するモジュラー式スマートフォン「Pi Talk」


最近ではテザリング機能を持ち合わせているスマートフォンも多いが、Pi TalkはWi-Fiのアクセスポイントとしても効果を発揮する事ができる。Wi-Fiを用いたIoTデバイスなどは、Pi Talkを介して操作することもできるだろう。

Pi Talkを用いて行えることは多岐に渡るのだが、これは決して実験レベルではなく、普段の生活にも深く関わる実践的なレベルで活用することもできる。現在の家電製品や電子機器はWi-Fiネットワークを用いたIoT機器としての機能を持ち合わせているケースも増えており、Pi Talkを家庭のIoTネットワークに組み込む事で、Pi Talkを通じた一元的なネットワークの管理をすることも難しくはないだろう。

ホームセキュリティやスマートライトのコントロール、子供のモニタリングや家庭菜園の水やりなど、ネットワークに接続しているあらゆる事が一つのデバイスからマネジメントする事ができるようになるのだ。

Pi Talkは一般的な携帯電話ができることであればほぼ全てのことができるといっても過言ではないだろう。加えて、私たちが普段使用しているスマートフォンには不便を感じることもあり、自分のライフスタイルに適した操作性を求めることも少なくないケースであるが、Pi Talkの最大のメリットはこのカスタマイズ性の高さにあるとも言える。

Raspberry Piに対応するモジュラー式スマートフォン「Pi Talk」


いわゆるiOSにおける「脱獄」のように、正規ルートで使用できる機能では満足できず、サードパーティによってイリーガルにハードウェアを使いこなす手段が存在する。こういった行為はもちろん公式のサポート適用外であり、そのリスクをとって新たな拡張性を手に入れるというものであるが、Pi Talkは初めからこのようなウーザーによる独自のカスタマイズを前提として開発されたデバイスである。

Pi Talkのディスプレイをより大きなものしたければ、すぐにディスプレイを自分の好きなサイズに変更することができるし、お望みであればPCモニターのようなサイズで取り扱うことも可能だ。

あるいは現在のカメラの性能に満足できなければ、新しいレンズを購入するだけで、内蔵カメラの性能を向上させることができる。市販のスマートフォンであれば本体丸ごとの交換が必要であったが、Pi Talkはその必要が失われたと言えるだろう。

スマートフォンのスピーカーも話題となりやすい性能の一つである。スマートフォンに音楽プレーヤー並みの再生能力を求めるのであれば、Pi Talkなら自分のニーズにあったスピーカーを購入し、搭載するだけで求めていたスマートフォンを手に入れることができてしまうのだ。

市販の普及しているOSは汎用性が高く、誰でも便利に使えることは間違いない。しかしそれでも使い込めば使い込むほど不便に感じることも多くなり、アレンジを加えたい部分も出てくるものだが、Pi TalkはOSのカスタマイズも自在に行えてしまうのは魅力的である。

こういったカスタマイズの例はあくまでも一例に過ぎず、アイデアとスキル次第ではさらに優れていてユニークなオリジナルのスマートフォンを手に入れることができるだろう。

Pi Talkは現在Kickstarterで出資者を募っており、目標金額は1万ポンドに設定されている。42ポンドでPi Talkを一基、125ポンドでカメラキット付きのものを1セットリワードとして受け取ることができる。

教育用とはいえここまで実用的なデバイスを製作できるキットは珍しく、ユーザーを夢中にさせること間違いないキットになりそうだ。