全ての人にARとVRが行き渡る世界に。「AR For Everyone」

拡張現実(AR)や仮想現実(VR)は、日本においてもエンターテイメント産業を中心に次々と導入が進んでいる。スマートフォンゲームやアミューズメントパークなどではもはやおなじみになりつつあるテクノロジーであるが、まだまだ世にリリースされたばかりであるだけに使いにくさを感じることも少なくない。

よくある話の一つに、装着するデバイスが重かったり大きかったりするもので、装着に手間取ったり長時間装着することがしんどいというものだ。現在の課題は機器そのものをスマート化させるということが一つにあると思うのだが、「AR For Everyone」は既存のデバイスの中では最もシンプルで使い勝手の良いデザインを持っているデバイスの一つであることは間違いなさそうだ。


進化する視覚テクノロジー

現在注目されている視覚効果については、主に三つのテクノロジーが挙げられる。一つは拡張現実(AR)で、これは現実世界に仮想のオブジェクトを表示し、現実世界をベースとした仮想的な空間を構築するのに用いられる技術である。スマートフォン用ゲームのリリースでポピュラーになった技術とも言えるだろう。

もう一つが仮想現実(VR)で、これはデバイスの装着者に完全な仮想空間を表示することで、非現実的な空間の中を身体活動を伴った形で体験できるというものだ。完全な仮想空間に装着者を連れてってしまうため、効果を十分に発揮するためにはある程度のスペースと設備が必要になるため、コストがかさんでしまいがちになるのも特徴だ。

そして最後に複合現実(MR)の存在である。MRはARとVRが混合したテクノロジーで、現実空間をベースとしながらもどこまでが現実で、どこからがバーチャルなのかの判別がつかなくなるほどのリアルさを提供してくれるというものだ。極めてレベルの高いAR・VR技術が実現すれば、到達するテクノロジーの一つであると言われている。

全ての人にARとVRが行き渡る世界に。「AR For Everyone」


AR For Everyoneは名前こそ「AR」となっているものの、実際にはAR・VR・MRのいづれにも対応したデバイスであるとされている。これまで開発されてきたVRのビデオゲームに対応できるのはもちろん、360度カメラやシネマティックワイドスクリーン対応の映像がある場合は、内蔵のシネマティックモードを用いてARシネマを楽しむこともできる。まるで映画館で見ているのかのように、立体的なワイドスクリーンが目前に現れ、どこでも映画館のような視聴体験に興じることができるようになるのだ。

いつでもどこでも使えるゴーグルを目指して

このような多機能性を秘めていながら、AR For Everyoneがこだわってきたのはスターターキットとしての優れたコストパフォーマンスだ。低コストで使いやすく、そして持ち運びやすいキットの存在は、より多くの人々に近未来的なこれらのテクノロジーに触れる機会を与え、技術の発展に寄与することができるのである。人口の増加は、直接エンジニアの増加にもつながるというわけだ。

AR/VR機器としてはおなじみのものの一つに、Google Cardboardの存在がある。段ボールで作られたハイテク機器というインパクトは当初話題となったが、AR For EveryoneもまたGoogle Cardboardから大きくインスパイアを受けた製品の一つである。そのため多くリリースされたGoogle Cardboard対応のアプリケーションにもAR For Everyoneは対応可能である。

AR For Everyoneはそのカスタマイズ性にも注目が集まっている。ARなどのテクノロジーはエンターテイメント産業だけでなく様々な分野での活躍が期待されているが、AR For Everyoneはあらゆる分野のニーズに合わせてその形状や使い勝手を変化させることができ、非常に汎用性の高いプロダクトとなることを目標に設定している。

普通の人間の頭に直接着用するのはもちろん建設現場で着用される安全帽や医療用シールド、バイクヘルメット、野球帽など、様々な被り物をしている場合にも臨機応変に着用方法を変えながら装着できるという展望があるのは期待大だ。

全ての人にARとVRが行き渡る世界に。「AR For Everyone」


これらはまだ実験段階だが、今後のバージョンアップによって実現されるだろう。

最終的には既存のデバイスに比べてはるかに洗練された未来的なデザインとなることが目標だ。エレガントで頑丈で、ポリマーのケースにスマートフォンを装着し、永久的に使用できるようなプロダクトの完成に向けて、現在も開発を続けている。

AR For Everyoneは現在Kickstarterで出資者を募集しており、今回は5千ドルの資金調達を目標としている。AR For Everyoneそのものはまだまだ未完成であるものの、現在は試作品のアップデートを重ねている最中であり、今回のプロジェクトでも出資者には最新モデルがリワードとして送られる予定だ。

開発チームは使用者からのフィードバックを重視しており、今回リワードで送られるデバイスもその使用感をユーザーから直接伺うという目的が大きい。

リワードも15ドル以上の出資から受け取ることができるため、興味がある場合は気軽にこのプロジェクトへ参加できるのもポイントである。