インドでもフィンテックは伸びる?インドの注目すべきフィンテック企業
旧紙幣は銀行口座に預入れをおこなうか新紙幣と交換する必要があることも併せて発表された。この発表はテレビで生中継され、実際に4時間後に旧紙幣が廃止されてしまったというウソのような本当の話だ。
この高額紙幣廃止の理由は①脱税・マネーロンダリングをなくす②電子マネーの普及を進めるという2点であった。政府は突然発表をおこなうことで焦った国民が銀行に持っている現金を預入れもしくは新紙幣と交換に来ることを計算していた。事実多くのインド国民が銀行に長蛇の列をつくることとなった。
ところで、インドの業界団体ASSOCHAMとビジネスコンサルティングファームのEYが2017年に発表した共同調査によると、インドでは貧困のため銀行口座を保有していない国民の数が全体の19%以上はいるという結果が出た。
http://www.assocham.org/newsdetail.php?id=6397
インドの全人口が約13億人のため19%だと2億4千7百万人、日本の総人口数の2倍近いインド国民が銀行口座を持っていないことになる。
ここで期待されているのが、フィンテック技術を駆使したペイメントサービスの発展だ。インド国内で電子マネー普及の動きが進むことで、今後はフィンテックがインド国内で伸びていくことが予想される。発展途上国では銀行口座を保有していない人が多く、スマホの普及率が高いことからフィンテックの利用が広がっている。その最もたる例が中国である。WeChat PaymentやAlipayといったスマホベースのペイメントサービスはもはや中国人の生活になくてはならないものになっている。
以下ではインドのフィンテック企業と提供しているサービス内容について紹介したいと思う。
ItzCash Card(イッツ・キャッシュ・カード)
ItzCash Cardはインドのフィンテック企業として2006年にいち早く誕生した。Web、モバイル端末、IVRS、 POS、ATMと様々なツールから利用することができる。またItzCash Cardはインド国内に75,000箇所のタッチポイントを設置している。プリペイドのキャッシュカードやギフトカード、デジタルウォレットなどのサービスを提供しており、請求書の支払いや送金、旅行の予約にも用いることができる。
公式ページによると利用者数は約1億1,000万人、1日あたりの取引は約5万件に及ぶ。インド準備銀行(Reserve Bank of India, インドの中央銀行)から支払いと決済の分野で営業許可書の認可を受けたインドで最初のフィンテック企業である。
http://itzcash.com/
Zest Money(ゼスト・マネー)
Zest Moneyは2015年に設立された比較的新しいフィンテック企業だ。
オンライン・オフラインにおいてクレジットカードなしに支払いが行えるプラットフォームを提供しており、このほかにローンのサービスも提供している。登録者数は約4万人とまだ小規模であるが、これから伸びていく可能性もある。Eコマースと相性が良く、50以上のECサイトが利用している。パートナー企業にはAmazon, Flipkart, Xiaomiなどがある。2017年に行われたIndia Fintech Awards 2017ではZest Moneyは「Fintech Startup of the Year」に選出されており、今後の成長が期待されているフィンテック企業だ。
https://bridgeastern.com/in-the-press/2017/11/14/zestmoney-named-fintech-startup-of-the-year-at-india-fintech-awards-2017
https://zestmoney.in/
niki.ai(ニキ・エーアイ)
niki.aiは誰にでも使いやすいAIを目指したプラットフォームだ。
利用したいサービスを選択し、チャットをすることでサービスの提供を受けることができる。iPhoneのSiriは機器に話しかけることで会話を行うが、niki.aiはそのチャット版というところだ。
Android, iOSに対応しているためスマホで利用することが可能。ガスや水道、電気など日常生活にかかる料金の支払いや、支払い期限にリマインダーを表示する機能などがある。チャットを行うことでプリペイド式携帯のチャージやタクシーの配車、公共交通機関の検索、ホテルの予約など多彩なサービスを利用することができる。
https://niki.ai/
Zeta(ジータ)
Zetaは企業単位で利用するデジタルペイメントサービスだ。Zetaを導入することによって、従業員が様々な割引サービスを受けることができる上に節税にもつなげることができる。ガソリンや医療費、飲食店での食事や食料品などの割引クーポンがスマートフォンで利用することができる。また企業から従業員へギフトカードを配布することも可能だ。
Zetaの特徴としては上に挙げた割引サービスがあるが、Zetaで行うことができる機能は多岐に渡る。支払いに関してのサービスが充実しており、これらの機能を兼ね備えている。
・スマホ上でスワイプするだけで支払いが完了
・カードを紛失もしくは盗難されてもスマホで簡単に利用停止処理が可能
・Zetaのアプリ内でAmazonなどのオンラインショッピングができる
・キャッシュカードに現金をチャージする
・デビットカードとして使うことも可能
・Zetaアカウントを持っている人同士で金銭のやりとりができる
Zetaを利用することによってわずらわしい現金での支払いを減らし、全てをデジタル上で解決する支払い手段として活用することができる。
https://zeta.in/
PaySense(ペイセンス)
PaySenseはオンライン・オフラインで行うことができる即時ローンのシステムだ。インド国内で900以上の支店を持つノンバンクの金融企業であるIIFLとパートナーシップを結んでいる。アカウント開設の段階からスマホで申し込みを行うことができる。面倒な書類の手続きがなく、本人確認のための認証もスマホでおこなう。
https://www.gopaysense.com/
まとめ
インドでは上記に紹介したフィンテック企業の他にも数々のフィンテック関連のスタートアップ企業が誕生している。クレジットカードやデビットカードを持たない人がオンライン・オフラインでの買い物でフィンテック企業の提供するサービスを用いて日々の買い物をより気軽に、かつ簡単に利用できるようになる。また、スマホから申し込めるローンを利用する人も多くなるだろう。
フィンテック企業の伸びが大きくなることにより、フィンテック企業に対する投資も盛んになっていくはずだ。インドは非常に大きなマーケットであり、これから支払い手段のデジタル化が加速するにつれフィンテック企業の存在感はますます大きくなっていくだろう。
・LTP、India FinTech Awards 2017: Meet the Top FinTech Startups
https://letstalkpayments.com/india-fintech-awards-2017-meet-top-fintech-startups/
・Fintec Singapore、10 Indian Fintech Startups To Keep An Eye On
http://fintechnews.sg/10787/fintech/10-indian-fintech-startups-keep-eye/