ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングの未来

日本政府は「働き方改革」と称して会社員の副業を後押しする動きをみせている。今は長時間労働を招かないためのガイドラインが策定されているところで、来年度から周知される予定だ。この動きの背景として、将来的な労働力不足が予想されていることが挙げられる。

日本政府は「働き方改革」と称して会社員の副業を後押しする動きをみせている。

参考:産経ニュース、「副業・兼業」を推進へ 厚労省がガイドライン案提示、来年度から周知 http://www.sankei.com/life/news/171121/lif1711210003-n1.html

今は長時間労働を招かないためのガイドラインが策定されているところで、来年度から周知される予定だ。この動きの背景として、将来的な労働力不足が予想されていることが挙げられる。また「一旦会社に入ったら定年まで働く」という従来の終身雇用の考え方が大きく変わったことを意味する。

総務省の2016年の統計によると、日本は企業に雇用されている会社員(役員を除く)が労働者人口の約8割を占める※。しかし近年はクラウドソーシングを活用して副業を行っている人や、フリーランスとして生計を立てている人も徐々に増えてきており、働き方は実に多種多様となってきている。

※15歳以上の労働力人口平均6,648万人のうち、役員を除く雇用者が5,372万人。 出典:総務局HP http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuho/index1.pdf

クラウドソーシングについてざっくり説明すると、仕事の発注から納品まですべてがインターネット上で仕事が完結するしくみのことだ。国内で広く知られているものはCrowdWorks(クラウドワークス)やLancers(ランサーズ)が挙げられる。

これらのクラウドソーシングプラットフォームは、発注者・受注者双方をサポートするために紹介料も含めシステム手数料として契約金額の20%のシステム手数料を必要とする(クラウドソーシングによって設定されている手数料の率は異なる)。発注者側からすれば、安くはない金額だ。

将来は、このシステム手数料がなくなるとは言わないまでも、少なくなるかもしれない。クラウドソーシングにブロックチェーンの活用が期待されている。

ブロックチェーン技術とは?

ブロックチェーンはサトシ・ナカモトという人物が書いた論文の中に登場する理論である。ニュースなどで取り上げられているのでご存知の方も多いと思うが、ビットコインをはじめとした仮想通貨のベースとなっている理論だ。

仮想通貨は法定通貨のように実体がないにもかかわらず、いまや当たり前のように取引が行われている。仮想通貨の詳しい説明についてはここでは避けるが、ブロックチェーン技術の特徴としてこのような特徴が挙げられる。

・24時間、休日関係なしに送金・入金が可能
・銀行と比べて送金手数料が非常に低い
・全ての取引はブロックに記帳・公開される
・ブロック同士の整合性が常に確認されるため、改ざんが困難
・契約書といった重要書類も保存できる

これらの特徴は仮想通貨だけではなく、様々な分野で応用が可能だ。クラウドソーシングの分野においても仮想通貨による取引ができるプラットフォームの開発が進んでいる。以下では仮想通貨による取引を行っているプラットフォームを3つ紹介したい。

2017年9月にリリースされた仮想通貨で報酬が支払われるChip

ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングの未来

画像出典:Chip

現在日本で利用できるブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングプラットフォームは、2017年9月にAndroid版がリリースされたChip(チップ)と呼ばれるアプリだ。現在はiOS版もリリースされている。プロジェクトは日本円、ビットコインもしくはモナコインによって支払われる。手数料は支払いの通貨によって異なり、円は5%、ビットコイン3%、モナコイン1%。他のクラウドソーシングプラットフォームと比較すると手数料は非常に低いと言えるだろう。

リリースされたばかりということもありプロジェクトの案件数自体は少ないが、これから利用者が増えていくことが期待される。Chipにはクラウドソーシングのプロジェクトの他にトークルームやコミュニティといった機能もあるので、SNSとして使うこともできる。プロジェクトで得た報酬はChip内で利用することも可能だ。

スマホベースのサービスのため、利用するためにはAndroidかiOSでアプリをインストールする必要がある。

参考:HB株式会社 Chip http://hb-jp.com/w-news/831/

空いた時間でも気軽に仮想通貨を稼ぐStorm

ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングの未来

画像出典:Storm

StormX Inc.はアメリカ・シアトルにある企業で、StormPlayというアプリをリリースしている。月間アクティブユーザは約25万人とされている。

ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングの未来

画像出典:Storm

Stormのプラットフォームでは、ユーザーが企業のアカウント登録や広告の閲覧、またゲームをおこなうことでボーナスポイントがもらえるしくみだ。貯めたポイントはビットコインやイーサリアムに替えることができる。

このStormの事業の中に、『Storm Gig(ストームギグ)』というクラウドソーシングサービスがある。このStorm Gigでは、機械学習、QA テスト、P2Pフリーラーニングタスクなどの小さなタスクを完了することで報酬がもらえるしくみ。まだサービス自体は始まっていないようだ。

今の段階では非常に情報が少ないのでこれ以上述べることはできないが、公式ホームページの中ではブロックチェーンを利用したクラウドソーシングと述べられている。


アイデアで人をつなげるプラットフォームStarbase

ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングの未来

画像出典:Starbase

Starbase(スターベース)は2017年11月に設立されたばかりのプラットフォームで、クラウドファウンディング、クラウドソーシングを目的としている。Starbaseは人と人をアイデアによってつなげる。技術や才能を持っている人、たとえばアーティストや運動選手などもプロジェクトを通してつなげることも可能だ。プロジェクトは仮想通貨によるクラウドファンディングによって資金調達され、プロジェクトの実行者に支払われる。

2018年2月にStarbaseのプラットフォームがリリースされる予定だ。

参考:Starbase https://starbase.co/

クラウドソーシングx仮想通貨=さらに便利に

クラウドソーシングとブロックチェーンの組み合わせは発注者・受注者双方にとってメリットが大きい。仮想通貨の送金や入金も土日祝日など関係なしに納品時点で即時に行うことができる。これに加えて送金手数料がほとんどかからない点も非常に魅力的だ。また従来のクラウドソーシングプラットフォームのよりシステム手数料が低くおさえられるため、これは発注者にとっては願ってもないことである。

今回取り上げたものは一部のプラットフォームだが、今後は支払い通貨を仮想通貨とするものや、ブロックチェーン技術を活用したクラウドソーシングプラットフォームが次々にリリースされていくと予想される。

時代の変化に合わせて、働くという概念も少しずつ変わってきている。副業を始める人が多くなるにつれ、スキルがある人ならば誰でも簡単に仕事を得ることができるプラットフォームの活用は今後働き方改革の鍵となっていくだろう。