プロジェクトに参加して「エコ・ウォリアー」になろう。「Coastal Protection and Hydro Energy System 」
むしろ、あれだけ世論が盛り上がったのにもかかわらず、あれから決定的な有効打を用意できないまま時間が経過していることは、状況は当時より悪くなっているという危機意識を持つべきであるともお言えるだろう。
とはいえ、ここ何年かのテクノロジーの進化は目を見張るものがあり、直接的に環境の改善を促せる技術が発達していなくとも、現代のハイテク技術を応用すれば様々な解決のための施策を講じることが可能になっても来ている。例えばインターネットとスマートフォンの普及により、情報拡散やコミュニケーションが短時間でより多くの人々と行えるようになったことは、間違いなく環境保全活動にも良い影響を与えているだろう。
今回クラウドファンディングサイトで資金調達を行なっているCoastal Protection and Hydro Energy Systemのプロジェクトもインターネットの恩恵を受ける事ができる可能性がある。こういった活動があることを知人づてで無くとも、毎日多くの人が行き交うインターネットのウェブサイトで情報が公開されているため、想像を超える不特定多数の人々に活動の詳細を知ってもらう事ができるからだ。
海岸保全プロジェクト
「私たちは地球を両親から受け継いでいるのではなく、我々の子供達から借りているのに過ぎないのです」というのは国連自然保護連盟の言葉であるが、いわゆるサスティナビリティ(持続性)に関するテーマは環境問題を考える上で欠かせない。
持続可能な社会を形成していくためには「今あるもの」を有効活用していく技術が肝心になる。例えば海を使ったテクノロジー開発やプロダクトの開発は、環境問題に対して効果的な解決策となる可能性を有している。
地球という惑星の表面のおよそ7割以上は海で覆われており、水の惑星と呼ばれるほど有り余る水があるのだから、これを使わない手はない。加えて海面の上昇により、現在では年々その水の量も増えているというのだから、上昇の問題を解決し、かつその現象を有効活用できる施策は注目に値するだろう。
このプロジェクトの一環である「Ecological Artificial Barrier Reef(EABR)」の開発は、良い解決手段の一つと言えそうだ。これは人工的なバリア・リーフであると同時に多機能性を秘めており、単なる防波堤以上の活躍が期待されるものだ。
海岸沿いの環境を安定させることは、私たちの生活の質を安定させたり向上させるためにも重要な意味を持っている。持続可能な社会を実現するためには、生き物やテクノロジーの集まりやすい海岸を、定住や研究に最適な安定した環境作りを行う必要があるのだ。
岸辺にEABRを設置する事で、高波や嵐、濁流、侵食を防げることはもちろんのこと、そういった自然現象からエネルギーを蓄積し、様々な用法に向けて海水を真水に変換する働きをも持ち合わせ、備えておく機能を持っている。これらの機能を組み合わせることで、EABRから生み出された水を必要とする特定の地域に向けて提供する事が可能になるのだ。
防災と環境保護、そしてインフラとしての役割も果たせるEABRは、設置された地域の自然環境を落ち着いて安定したものへと生まれ変わらせる事ができ、レジャー施設やウォータースポーツを楽しむのにも最適の環境を構築する事ができるだろう。
自然界のバリア・リーフは海洋の生物多様性を育むというメリットを持っているが、その点はEABRも同様である事も魅力的である。
持続可能エネルギーへの注目
EABRに用いられている海水組み上げ・発電システム(The Seawater Exchange and Storage System、SESS)もユニークかつ効率的なテクノロジーだ。SESSは循環構造を採用しており、タービンを用いて三つの貯水スペースに海水を持続的なエネルギー生産ループを構築する。
一般的に、海岸には1日に二回の潮の動きが生じる。言い換えると、1日に二回、ほぼ永久的にエネルギーを生み出しうる運動が自動的に行われるというわけだ。
SESSはこの潮の流れを活用したシステムなのである。
このプロジェクトは、2018年、キリバス共和国のクリスマス島から発足させていくという計画である。クリスマス島は太平洋の寄港地として古来から用いられて来た小さな島であるが、現在は海面上昇によって消滅の危機にさらされている場所でもある。
プロジェクトに賛同する人は「エコ・ウォリアー」となり、徐々にインパクトを大きくしつつある気候変動などの環境変化に少しでも前向きかつ自発的に行動できるよう、クリスマス島の救出から進めていくというプランだ。一人一人が別々の問題意識と解決に取り組むのではなく、一人一人が同じ目標と解決に取り組むことで、連帯感や問題の大きさを体感する事ができるという事だ。
Coastal Protection and Hydro Energy Systemプロジェクトは現在Indiegogoで出資者とプロジェクト参加者を募っており、25万ユーロの資金調達を目標としている。出資で得られるリワードはギフトやプロジェクト創設者との対談権、プロダクトの3Dモデルなどユニークなものが多く、一般的なクラウドファンディングプロジェクトとは少し異なった取り組みであるところが特徴的である。