サインランゲージを音声に変換。「Talking Hands」

調査によると、世界にはおよそ7000万人の耳の聞こえない人々、いわゆる「ろう者」が存在している。耳が聞こえないということは、手話のようなサインランゲージを理解できなければ、耳が聞こえる人がろう者とコミュニケーションをとることはできないということである。

サインランゲージも語学学習の一環として捉えられることもある今日であるが、Talking Handsは音のない手話を認識できるウェアラブルデバイスで、手話を言語化し、音声に変換することができる。

サインランゲージを音声に変換。「Talking Hands」


ジェスチャーを声に変えてくれるTalking Hands

Talking Handsは2015年から開発がスタートしたプロジェクトで、耳の聞こえない人々とそうでない人のコミュニケーションを促す目的で進められてきた。

今回のプロダクトはそういった取り組みの着地点とも言える。独自のジェスチャー認識アルゴリズムの採用により、Talking Handsは数百にも及ぶことなる種類のハンドジェスチャーを個別に認識することが可能になるのである。

サインランゲージを音声に変換。「Talking Hands」


手の動きを言語化できることは、これまでは難しいとされていたコミュニケーションに関する問題の多くを解決する手がかりとなった。

例えばコストの問題である。これまでであれば手話を文字にことあるごとに起こすとなると、時間とお金がかかるということで敬遠されてきたものであるのだが、Talking Handsは販売価格である549ユーロを支払うだけで翻訳を済ませてしまうことができる。

また、デフォルトの翻訳だけでなく、Talking Handsにオリジナルの手話を覚えさせられるという、カスタマイズ性の広さも持ち合わせている。あらかじめTalking Handsにサインを覚えさせ、いざという時のコミュニケーションの際に、使いたい手話をTalknig Handsを装着して表現するだけというのは便利な機能である。

あるいはろう者のコミュニケーションに関する問題解決に取り組んでいる企業が、現在のろう者のニーズや事情に寄り添っておらず、適切な解決策を提示してこれなかったという問題も存在してきた。

Talking Handsの開発チームはイタリアの団体「ISISS Margarotto」と共同でプロジェクトを進めてきたため、今のろう者のコミュニティにおける本当のニーズと向き合いながら開発が行われてきた。Talking Handsは生のフィードバックに応えながら誕生した、先進的なプロダクトの一つであると言えるだろう。

手話にも地域や国によって微妙な差異が存在するため、手話を使うもの同士であってもコミュニケーションが取れないということも問題視されてきた。これは現在でも手話を使ったコミュニケーションにおける最も重要な問題であると同時に、手話に関わる問題解決にあたる人々を悩ませ続けてきたテーマでもある。

Talking Handsは、残念ながらこのような異なる手話を直接的に統合する機能は持ち合わせていない。しかしながらTalking Handsがたとえ全ての手話を翻訳できることができなくとも、サインランゲージを言語化するという取り組みが、こういった問題を解決する第一歩として非常に重要な役割を果たすことは想像に難くないだろう。

Talking Handsは完全なウェアラブルデバイスであるため、辞書やコンピューターを持ち歩かなくとも容易にコミュニケーションを取れる機会を与えてくれるのである。

民間の開発であるが、その製品のクオリティは保証されている。アメリカのアロー・エレクトロニクス社の下で、Talking Handsは生産に必要とされるエンジニアリングにおける基準をクリアしているため、質の悪いプロダクトが手元に届く心配もない。

サインランゲージを音声に変換。「Talking Hands」


第三者の開発者向けの特徴について

Talking Handsはオープンソースであるため、開発者は自由にTalking Handsを自分のアプリケーションのために活用することも可能だ。これはろう者とのコミュニケーションに関するテーマ以外にも、様々な分野に応用することができる。

例えばコントローラーとしての役割だ。現在はスマートフォンやリモコンで操縦するのが主流であるドローンの操縦を、Talking Handsのような感覚的なデバイスで行えるようになれば、その体験の価値はより大きなものとなっていくだろう。

ジェスチャー認識システムはあらゆるインタラクティブなプロダクトの開発に役立つツールであることは間違いない。Talking Handsに用いられている基盤、Limix Boardも開発者向けに提供されている。


必要であれば、こちらも単体で入手することが可能だ。

サインランゲージを音声に変換。「Talking Hands」


Talking Handsは現在Indiegogoで出資者を募っており、目標金額は20万ユーロに設定されている。Talking Handsの開発はすでに完了しているため、集められたお金は生産に当てられる。

Talking Hands本体は549ユーロの出資で一台入手することができ、サイズも希望に合わせてXS~XLまで選ぶことが可能だ。

開発者向けに用意されているLimix Boardは199ユーロの出資で手に入れることができる。

生産そのものはこれから行われるということで、発送は来年の12月を予定している。