欧州におけるRoHS2への対応、また日本企業が行うべき対応とは?

欧州委員会において、電子・電気機器に関する重要な基準の変更が2006年に実施された。RoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances、特定の有害物質使用の規制)と呼ばれる指令である。
欧州におけるRoHS2への対応、また日本企業が行うべき対応とは?

この指令の正式名称は日本語では「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令」などと訳される。2006年7月1日に公布、21日にEU域内で発効された。規制前の名称をRoHS1、規制後をRoHS2として区別されている。旧指令のRoHS1は2013年1月に廃止されている。この指令はリスボン条約に基づいており、EU内での規制ではあるが、この動きは徐々に他の地域にも波及している。

有害物質と分類されたものは以下の6つである。原則的に市場に流通するすべての電子・電気製品は6つの有害物質を含んではいけないが、やむを得ない場合のみそれぞれの有害物質は以下に指定されている基準値以下でなければいけない。

・鉛 1,000ppm以下
・カドミウム 100ppm以下
・水銀1,000ppm以下
・六価クロム1,000ppm以下
・ポリ臭化ビニフェル(PBB)1,000ppm以下
・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)1,000ppm以下

これに違反した場合、国によって異なる罰則が科される。

EU内で有害物質の規制が進んだ理由

なぜこのRoHSが議題として上がったかというと、電子・電気機器製造のどの段階においても、人体に影響のある有害物質を製造するべきではないという機運がEU内で高まったからである。

RoHSに関連する指令として、WEEEが挙げられる。正式名称はWaste Electrical and Electronic Equipment Directiveと呼ばれ、日本語では廃電気・電子製品に関する指令と訳される。欧州委員会のウェブサイトでは、電子・電気機器廃棄物には有害な物質が含まれており、それが適切に管理されない状態では環境や人体に対する健康被害をもたらすこと、また現代の電子機器を製造するために希少かつ高価な物質を使用しなければいけないため、資源の回収・処理・リサイクルを適切に行うために現状を改善しなければいけないと記載している。

( 参考:欧州委員会、Waste Electrical & Electronic Equipment (WEEE) http://ec.europa.eu/environment/waste/weee/index_en.htm )

欧州におけるRoHS2への対応、また日本企業が行うべき対応とは?

現在では、EU域内において有害物質を基準値以上含む商品またはパッケージは販売してはならない。RoHS2の基準を満たしている証拠として、「CE」のマークが表示されている。このCEマークは生産者の自己申告であるが、市場に商品が出回る前に基準を満たしていることを証明するCE宣誓書と適合証明書、技術文書を発行しておく必要がある。

日本でのRoHSの適用はどうなるのか?

日本ではこのRoHSの適用は義務ではないものの、商品を欧州に向けて販売する場合、有害物質の基準をクリアした製品でないと輸出ができないという大きな問題が立ちはだかる。また日本だけこのRoHSの基準に対応しないとなると、有害物質を含む日本製品の国際競争力が相対的に下がることになるため、必然的に足並みをそろえなければいけなくなる。

上記のRoHS2に加え、2019年7月からはフタル酸エステル類4種に対する規制が加わる。フタル酸エステルはケーブルなどによく用いられる化学物質で、これに対する規制に対する日本企業へのインパクトは相当なものがある。
フタル酸エステルについての説明は以下のウェブサイトで詳しく説明されている。

( 参考:BOKEN、フタル酸エステル類について
http://www.boken.or.jp/knowledge/chemical_analysis/cat/post_37/ )

しかし現実としてこの規制にも対応が求められるため、基準を満たすよう企業は努力しなくてはいけない。

なお、フタル酸エステル類4種に対する規制の詳細は以下の通りである。以下の引用には含まれていないが、適用除外品もあるのでしっかり理解しておきたい。

(1) 対象製品、閾値、適用開始日
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) Bis (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
フタル酸ブチルベンジル Butyl benzyl phthalate (BBP)
フタル酸ジブチル Dibutyl phthalate (DBP)
フタル酸ジイソブチル Diisobutyl phthalate (DIBP)
の 4 種のフタル酸エステルそれぞれについて、均質材料中 0.1%の最大許容濃度で、下記の日付以降にEU に上市される電気電子機器(electrical and electric equipment: EEE)への使用を制限する:
2019 年 7 月 22 日(加盟国の適用開始日)から 医療機器および監視制御機器を除く全ての EEE
2021 年 7 月 22 日から 体外診断用医療機器を含む医療機器、ならびに産業用監視および制御機器を含む監視および制御機器
( 出典:一般社団法人電子情報技術産業協会、EU RoHS 指令制限対象フタル酸エステルに関する注意点-詳細版(第二版)
http://home.jeita.or.jp/eps/pdf/eu201608092.pdf )

EUのRoHSと日本のRoHSの違いは何か?

EUのRoHSと日本のRoHSにおける決定的な違いは、冒頭に挙げたEUの有害物質と指定されている6つの物質を日本は禁止する法律はない点である。

なぜ欧州と日本でこの違いがあるかというと、RoHS指令はあくまでもEU域内において適用されているため、他国にこれを求めることができないからである。ただ世界中で環境問題に対する意識は年々強くなっており、欧州がRoHS2のような基準を設けたため、他国もこれに従わざるを得ない状況となっている。

JETROのウェブサイトは以下のように説明されている。

RoHS指令は、統一市場の構築を目的とするEU 運営条約114 条(旧EC 条約95 条)を根拠に策定されているため、国内法制化にあたって各国の裁量は認められていません。このため、輸出者はEU各国のRoHS法に対して一律に対応することができます。ただし、罰則規定や税関での検査の有無などは各国で状況が異なっていますので、注意が必要です。 ( 出典:JETRO RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-100602.html )

欧州向けまたは第三国を挟んで欧州へ日本製品を輸出する場合、有害物質を含んでいることで日本製品が選択肢から除外される可能性も出てくる。そのため、現実問題として日本企業は可能な限り有害物質を含まない製品の製造を行わねばならず、また欧州向けに製品を販売するのであれば材料調達においても慎重にならざるを得ない。

欧州に輸出を行う際、たとえ国内法で有害物質の規制がなくとも他国もEUのこの指令に従わざるを得ないことから、このRoHS指令は非関税の障壁だとも言われている。もし欧州に日本製品を輸出する際、有害物質を含んでいないことを証明する書類の作成も併せて行わなければならないため、企業にとっては負担でしかない。

自社の製品を欧州に輸出する場合、不明点や不安な点などがあれば、通関業務を委託しているフォワーダーか税関、JETROなどに質問をしてみるもの良いだろう。

日本には日本の工業規格などがあり、それを満たしているのであれば国内で流通は問題ない。しかし今後輸出を行う際は、製品に含有されている物質の成分について特に敏感になる必要がある。日本製品と海外向け製品のギャップを埋めるため、今後日本もRoHS2と同様の規制が成立していくことになるだろう。