フランスで静かに広がる農業用ドローンの活用。日本で農業用ドローンは普及する?
今、農業分野で期待されているのがドローンの活用だ。ドローンを飛ばすだけでカメラが上空から農地の情報をくまなく捉える。撮影されたデータは分析され、効率的な農地作りに活用される。
さらに、農薬を散布することができるドローンもある。日本でも農業で働く人に向けてドローンを売り出している企業はいくつかある。農林水産省もドローンの普及に向けていち早くガイドラインを設けているが、農業用ドローンは馴染みがない分まだ浸透していない。
シードプランニングの調査によると、2016年の商業用ドローン市場規模は機体とサービスを合算すると85億円であったが、2022年の予測では2016年と比較して18.5倍の1,570億円にまで成長すると見られている。
サービス分野別市場規模予測では数値が確認できないが、図で見る限りでは「精密農業」「農薬散布」「空撮」のカテゴリにおいて2016年と比べ大幅に伸びていることがわかる。
予測データ詳細については以下のリンクに掲載されている。
日本での商業ドローン市場は発展途上であるが、ヨーロッパの農業大国フランスではドローンを利用した農業が静かに広まりつつある。以下ではフランスの農業用ドローン販売企業であるParrotについて触れた後、のフランスにおける農業用ドローンの活用について述べたいと思う。
フランスのドローン販売会社Parrot
農林水産省のデータによると、フランスはEU最大の農業国で、農地面積は国土の約半分を占める。主要農作物は小麦、大麦、とうもろこし等の穀物、てん菜、ぶどうなど。フランスの農作物の輸出額は世界で5位の農業大国だ。
フランスにはParrot(パロット)と呼ばれるドローン販売企業がある。
Parrotは元々視覚障害者向けの音声認識オーガナイザー"Voice Mate"の製造・販売を行っていたが、その後車載のBluetoothのハンズフリーフォンで有名となった。現在はドローンの販売も行っている。
Parrotが販売しているドローンは娯楽用もあれば農業用のものもある。Parrotはより良い農業用のドローンを開発するために、関連企業をいくつか買収している。以下の企業はParrotに買収された企業だ。
・SenseFly ドローンによるマッピング技術活用
・AIRINOV 農業におけるドローンと精密データ活用
・MicaSense 農作物の画像解析・分析
・Pix4D ドローンのマッピング技術とソフトウェア開発
Parrotはこれらの企業とタッグを組み、それぞれの会社の持っている特色や強みを生かして農業用ドローンの開発・販売を行っている。
フランスは商用ドローンの登録事業者数が多く、その数は1,200社を超えている。Parrotはその中でも商用ドローンの主要企業である。
Parrotの農業用製品の種類
Parrotの農業用製品の種類としては、以下のものがある。
・Parrot Sequoia(パロット セコイア)
セコイアは4つのレンズを搭載したマルチスペクトラムカメラだ。ドローンに取り付けることによって農地の画像を撮影することに用いることができる。赤色光と緑色光レンズのほかに、赤外線と近赤外線レンズで人の目には見えない農地の詳細なデータを記録する。セコイアの操作はWi-FiもしくはUSBを接続してPC、スマホ、タブレットで行うことができる。
ドローンの農業データ活用では何を測定するのか?
ドローンの活用は精確に農地面積を測り確実に農薬を散布することもあるが、そのほかにも役割がある。精密農業と呼ばれるデータ活用だ。
効率よく農作物を育てるためにデータを測り、農作物の栽培に活用することができる。必要な水分や肥料の量、日照時間、農作物のストレスを測ることによって、適切な対処を行うことを可能にする。これまでは農業従事者の長年の経験や知識、ノウハウに頼ることが多かった農作物の栽培だが、データをもとにした農業を行うことが可能になれば問題があるエリアにおいて手入れが楽になることに加え、経験の浅い農業従事者にとっても対処方法が明確でわかりやすくなる。
フランスと日本のドローンに対する規制の違い
フランスでは農業用ドローンの活用が盛んになってきているが、誰でもドローンを飛ばしていいわけではない。ドローンを用いるためには、実技も含めた試験に合格する必要がある。さらに、遠隔地で操作を行う場合は100時間以上の飛行時間と20時間以上の無人機飛行訓練を受ける必要がある。市街地や核関連施設といった場所の上空を飛行した場合、1年以下の懲役と75,000ユーロもの罰金が科せられる。
日本では農業用のドローンを利用したい場合、許可なしに飛ばしてはいけない。航空法によるとドローンは『航空法(昭和 27 年法律第 231 号)第2条第 22 項に定める「無人航空機」』と定義されている。ドローンを操作するためには、事前に所定の登録認定機関に認定を受けている必要がある。以下は農林水産省の定めるオペレーター要件だ。
7 オペレーター
無人航空機を飛行させる者であって、登録認定等機関(第4により農林水産省消費
・安全局長(以下「消費・安全局長」という。)の登録を受け、第3の3に掲げる業
務を行う者をいう。以下同じ。)から安全かつ適正な空中散布等が実施できる技術や知識を有する旨の認定を受けた者
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/attach/pdf/120507_heri_mujin-77.pdf
さらに農薬を散布する場合、日本ではドローンを飛ばすより前に地方航空局へ飛行予定日時を申請し、飛行予定日より10日前に申請が許可されなければいけない。以下は国土交通省の規定だ。
b)申請書については、当該申請に係る最初の飛行開始予定日の 10 開庁日前まで に、許可等を必要とする行為を行おうとする場所を管轄区域とする地方航空局 長宛てに提出させるものとする。
農作物の状態は日々変化していくものであるため、飛行予定日の10日開庁日前までに許可してもらわないと農薬を撒くための飛行ができないというのは実態に即していない。そうなればドローンを使わずに自分で農薬を撒いたほうが早いという話である。
フランスの農業用ドローンは基本的な規則を遵守していればその後の利用はそれほど難しいようには思えないが、日本は法律の面で農業用ドローンを気軽に利用するのは難しい。日本の農業分野でドローンが普及するためには、法律の整備が必要になるだろう。