東陽テクニカおよびPERFORCE社共催によるビジネスフォーラム「PERFORCE on Tour 2017-デプロイメント・ファースト」が10月4日、終日にわたり東京国際フォーラムで開催された。
同フォーラムは東陽テクニカ小野寺充取締役の開会の挨拶から始まり、最初のセッションは「PERFORCE社・最新情報」と題し、PERFORCE社のPhilip O’Hara(フィリップ・オハラ)氏が登壇した。O’Hara氏はPERFORCE社のアジア太平洋地域を担当するセールスディレクターで、PERFORCE社の技術を生かして、顧客や協力会社のニーズや目標実現に向けたサポート業務を務めている。PERFORCE社の入社以前は、Rogue Wave Software社のRegional Vice Presidentを務め、ソースコード分析分野に力を入れていた。またSiemens PLM社やDassault Systems社、PTC社などの数々の企業において、幅広い経験を積み、エンジニアリング分野において優秀な成績で学位も取得。O’Hara氏の奥深い知見から「PERFORCE社・最新情報」が説明された。
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PERFORCE社・最新情報、技術分野の投資を強化することによるその効果
PERFORCE社ではこの12か月間、「人材」「製品」「企業成長」「顧客対応」を柱に活動を進めている。特に技術分野における投資を強化し、61%の従業員を技術部門に所属させ、開発、テクニカルサポート、ソリューションエンジニアリング、プロフェッショナルサービスに従事、25%の収益を製品開発に再投入した。業界標準は18-20%であるから高水準を保つ。また技術部門の活動の中心であるカリフォルニア、オハイオ、イギリスの3拠点において継続的に新たな人材を投入した。2017年5月には「Helix Team Hub」をリリースし、新規顧客の獲得率は47%増加、ソフトウェア収益率は27%増、顧客リピート率は95%超に上り、従業員数は23%増えた。3つのオフィスを新設し、現在は世界中7つのオフィスを展開する。企業2社の買収も行った。グローバルサポートとサービス組織の改変によって、「問題解決までに要する平均時間が前年比で58%改善」し、「初動までに要する平均時間は80%以上向上」、「サポート担当を前年比で14%増員」、「Helix Core,Swarm,P4V全体で700件以上の不具合を修正」「Helix Core,Swarm,P4V全体に寄せられた機能要件は227件に上った」と説明された。
基調講演:アジャイルとスクラムとは~価値、原則、プラクティス
続く基調講演はアジャイルとスクラムの現場導入にアジャイルコーチという立場で関わっている、アジャイル/スクラムのスペシャリスト安井力(やすい・つとむ)氏が登壇した。安井氏は株式会社栄和システムマネジメントに所属後、現在はフリーランスとしてアジャイルコーチやコンサルタント、ファシリテーター、またゲームを中心としたワークショップのデザインと提供で開発者および翻訳者としても活躍している。最近はスクラムやアジャイル導入の現場コーチとして委託を多く受けていることから、基調講演では実際の現場でのコーチング経験から、真の導入障壁とは何か、どのように乗り越えることができるのか、具体的な事例を踏まえて解説された。
安井氏がまずはじめに紹介したのは「ある変わった企業の話」だった。ミシガン州にある100人規模の「メルロー」というソフト受託開発企業では、「役職も部署もない全員主役のマネジメント」によって「喜びにビジネス価値を見出す」手法を実行しているという。要件定義からプロジェクト計画、実装、受け入れテストまでのプロセスを「ハイテク人類学者=UXデザインユーザビリティテスト」「顧客と計画おりがみを作成」「ペア作業でタスクボード活用」「ショウ&テル」で繰り返している。安井氏はこれを「アジャイルという言葉は一度も出てこないが、アジャイルな手法である。独自に構築してきたわけである。"Make Mistakes Faster"=失敗を早くたくさんしようという理念をもとに、どうやったらうまくできるのか、みんなが喜ぶのか、喜びを得るためにはどうすべきかを失敗しながら作ってきたのがメルローという会社である」と解説した。
また安井氏は近年、話題になっている言葉「モダンアジャイル」について説明した。「実験&学習を繰り返しながら、継続的に価値を届けることは以前からある考え方だが、モダンアジャイルでは「高速に実験&学習」することが新しい。心理的な安全を必須条件にしていることもモダンアジャイルの特徴である。アンゼンニアリングという言葉も生み出した。失敗はできないけれど、失敗もたくさんする、失敗しても大丈夫な状況を作る、つまり安全装置をしっかり作っておくことが大事であることを示している。」これが「モダンアジャイル」の考え方だという。安井氏はアジャイルの始まりは2001年の「アジャイルソフトウェア開発宣言」だということも指摘した。「古びていると言われても、これに立ち返ることによって正解を導く」と力説した。そして、現在は「アジャイルイコールスクラム」に発展している。
さらに、アジャイル手法をもとにその概念を説明していった。会場の参加者に向かって安井氏は「お仕事がんばってますか?」と問いかけ、「何のためか、それが価値であり、すべては価値のためにある。価値とは欲しいもの。それはタダでは手に入らない。だから、どうやったら価値を手に入れることができるのか」畳みかけた。コストは時間に、タテ軸は価値に置き換えることによって、累積価値を割り出す考え方を提案し、問題視される「品質と規律のバランス」についても答えた。「個人のモチベーションは自律、熟達、目的がキーワード。好きなことに集中することでより上手になり、できることも広がり、そうして大きな目標を目指せば、モチベーションが上がる」という。最後に安井氏は「人の事例は役にたたない」と言い切った。自分でやってみることが大事であり、事例は人を説得するのに役立つが、実際には応用できないからだ。「考え方としてはアジャイルは自転車と似ている。自転車を乗りこなすためにはチーム、プロジェクトによってやり方が違う。人とプロダクトは一緒になって成長してくもの。だからこそ、込み入った領域はアジャイルは有効になる。一方でカオスな領域はアジャイルが立ち入ることはできない。複雑なプロジェクトでも時間と共にシンプルに近づいていくかもしれない」とメッセージを送った。
PERFORCE社のエンタープライズ・アジャイル用ツールを追加
午後の部は「PERFORCE社のエンタープライズ・アジャイル用ツールを追加」と題しHansoft社のVice President of Marketing & Customer Success/Product EvangelistのJohan Karlsson(ヨハン・カールソン)氏の登壇から始まった。Karlsson氏はプロダクトエバンジェリストおよびアジャイルコーチとして、顧客と製品開発チームとの橋渡しの経験を積んでいる。技術者・開発者としての経歴も持ち、5年ほど前からはHansoft社で同社の顧客をグローバルにサポート業務もこなす。「アジャイル(俊敏)でリーン(効率的)な開発理念を、現代のエンタープライズ開発環境に!」という野望をもとに、バックログマニアを自称するKarlsson氏は5つのアジャイル活用事例を紹介しながら「たくさんのチームによるマネージメント効果」「技術とマインドセットの違い」「適切なレベルと時間で計画をアチーブメントする方法」について説明を行った。そのなかでKarlsson氏は「順応性のあるアプローチはマッチングする」「計画実行することは選択すること」「順応性と計画実行は共存する」という3つのメッセージを伝えた。
最新ソリューション、ALM:抜け漏れなく開発アセットを確実に管理
続いて、「最新ソリューション、ALM:抜け漏れなく開発アセットを確実に管理」についてPERFORCE社シニアソリューションエンジニアGuenjun Yoo(グエンジュン・ヨウ)氏が説明した。Yoo氏はPERFORCE社のアジア太平洋地域を担当するシニアソリューションエンジニアで、現在はオーストラリアのシドニーを拠点に活動している。前職では10年間、KCLMおよびC/C++を専門とするプログラマとして従事すると共に、専門分野は幅広く、ソフトウェアの設計やエンジニアリング、継続的インテグレーション、アジャイル開発にまで及ぶ。Yoo氏は「集約型ALMプラットフォーム」の優れた「課題管理」と「テストケース管理」「要件管理」を説明。開発プロセス全体における管理、見える化、トレーサビリティを実現しているのは「Helix ALM」がPERFORCE社製品ラインを一体化しているのと同時に、「Helix VCS」との連携の強化や、JIRAアドオンのサポートによるJIRAとの連携の拡張によるものという。これによって「管理やコラボレーションにおけるインターフェースの簡素化」と「新しいREST APIとエコシステムの統合」、「製品ライフサイクル全体を通じたワークフローの効率」「パフォーマンス、セキュリティ、コンプライアンスにおける継続的な改善」が実現しているとまとめた。
PERFORCE社・新技術の紹介
そして再びPERFORCE社アジア太平洋地区セールスディレクターのO'Hara氏が登壇し、「PERFORCE社・新技術の紹介」の説明を行った。新技術とは今年5月にリリースした「バージョン2017.1」であり、またPERFORCEが初めてリリースしたGitとの完全コラボレーションを実現する「Helix TeamHub」である。そして、「Helix TeamHub」のオンプレミスバージョンは大規模なDevOps環境向けで「Helix4Git」を実装し、クラウドバージョンは小規模チーム向けに提供できる。また独自のマルチリポジトリ管理とマルチVCSをサポートするもので、コードレビューや課題管理ツールもビルトインされている。また「Helix TeamHub Enterprise」は操作が簡単な単一プラットフォームで、エンタープライズレベルでコードを管理できるほか、CI/CD向けビルドプロセスのパフォーマンスを加速し、プル/クローン処理によってリモート活動する開発者の効率も改善する機能もある。また「Helix4Git」はマルチリポジトリを活用する環境下において、継続的なビルド/統合/テストプロセス、ビルトインのミラーリングと、唯一の正しい情報源を保持することにより、Gitベースの大規模な開発プロジェクトの管理が可能になる。今後の展開としてはターゲットの選択、リリースサイクルの加速、品質向上、製品ラインの統合と拡大を掲げた。
国内導入事例、他社ツールからPERFORCEへの移行による開発環境改善
さらに、国内導入事例の説明として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社ソフトウェア開発本部後藤和紀氏をゲストに招いた。後藤氏は2001年に京セラドキュメントソリューションズ株式会社に入社。11年間ファクシミリ関連のソフトウェア開発に従事し、5年前からはソフトウェア開発部門全体のITを担当する部署に異動し、ソフトウェア構成や変更管理システムの運用を視点している。同社では開発のグローバル化が進むなかで、環境の変化に見合う構成や変更管理システムはどうあるべきかを見直した結果、高いパフォーマンス、拡張性を兼ね備え、且つ適切なコストで運用できるクラウドベースのシステムが必要であると結論付け、PERFORCE社とJIRAを連携させて実現するに至った。講演では求められるシステム要件の検討から始まり、現在実運用にいたるまでの経緯とそれに伴う気づきを含めて後藤氏が語った。選定過程では従来型とPERFORCE、OSSの3つのツールを比較したことで、結果、PERFORCツールはコスト面ではOSSよりも劣るが従来型と同等も、機能面とサポート体制は最も優れていると判定し、導入に至ったと説明した。またデータ移行に関して決定した方法としては「稼働機種の最新ベースラインと最新のみ移行」することによって対象を332ベースラインに選別し、前システムは参照専用で維持し、必要な時にPERFORCEツールに移行できるようにした。追加移行は250ベースラインのみだったという。また移行前にビルド検証と動作検証を行うことで移行後のトラブルは発生していない。PERFORCEツール導入の効果については「作業効率改善」と「運用・保守の改善」「経費削減」の3つを挙げた。また東陽テクニカから「検証」と「プロセス提案」「データ移行」「連携ツール作成」の支援を受けたことも説明した。最後に後藤氏はシステム変更する際の大切な考え方は「割り切りが肝心!」「何とかなる!」という言葉で締めくくった。
Helixバージョン管理システム、GITとの共存でソフトウェア開発環境を強化
最後に再びPERFORCE社シニアソリューションエンジニアのYoo氏が登壇し、最新ソリューションである「VCS:GITとの共存でソフトウェア開発環境を強化」について説明を行った。最新ソリューション「バージョン2017.1」は従来のパフォーマンスを大幅に改善し、デスクトップクライアントにおける新機能の追加と操作性を向上する。また巨大なプロジェクト/チームにおける新しいコードレビュー機能も追加し、Gitに関する新製品のリリースや新しい開発者のワークフローとリポジトリ管理も可能となった。重点分野は「パフォーマンス」「マルチリポジトリ管理」「柔軟なコードレビューのワークフロー」「管理業務の簡素化」「セキュリティ」であり、今後の展望としては「Team Hub」の機能拡張によってHelixバージョンエンジンと一段と深く統合することで管理業務を簡素化し、継続的なパフォーマンスを改善、シングルサインオンと多要素認証の実装、デザスタリカバリの強化を挙げた。
以上をもって、東陽テクニカおよびPERFORCE社によるビジネスフォーラム「PERFORCE on Tour 2017 -デベロイメント・ファースト」が閉幕した。PERFORCE社の最新ソリューションの説明をはじめ、知見と経験豊富な登壇者の説明により、アジャイルマネージメントに対する理解をより深めることができる場が提供された。
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