世界で最も小型のDIYロボットアームが登場。
「Smart Club Mini-arm」
次世代の教育の中心となりうるSmart Club
STEM教育、あるいはSTEAM教育はもはや今日の世界においてはよく知られたカリキュラムとなりつつある。STEM・STEAM教育とは、初等教育から義務教育、高等教育までの広い世代の教育過程において科学技術に関する科目の指導の強化、いわゆる科学・テクノロジー・工学・数学分野の科目を中心とした能力の底上げを目的とした教育プログラムである。このテーマは特にアメリカにおいて活発に議論されるものであるが、アメリカだけでなく日本においてもいわゆる「理系」の教育は議論が大きくなりつつあるテーマだ。
Smart Club Mini-armの開発チームが取り組みたいのは、エンジニアリングの中でも特にロボット工学における教育の強化である。Smart Clubを通じて、科学や数学、工学、AI、芸術と言ったあらゆる分野を横断した教育プログラムの開拓を考えているのだ。
Smart Clubはただのロボットアームではなく、教育に特化した機能を多数持ち合わせている高性能DIYアームだ。組み立ての際にはまずワイヤーの剥き方やモーターの保護の方法から始まる。普段は触れることはおろか見たこともないであろう精密機械の中身に実際に触れ、かつ組み立てるプロセスを踏むことで、私たちの生活を支えているものがどのようにして動作しているのかを学ぶことができる。
そのようなハードウェア的な側面の学習を踏まえながら、いずれプログラミング作成というソフト面での学習内容へと到達する。包括的な機械への理解を深めるため、できる限り詳細にパーツを分解して購入者の元へ送り届けられるのは、一般的な産業用・研究用のロボットアームとは異なる仕様であると言えるだろう。あえて遠回りをするようデザインされているのである。
教育と聞けば子供用のおもちゃやキットであるように思われるかもしれないが、開発チームが望んでいるのはすべての年齢層がロボティクスについて深い知識を得るところにある。そのためどのような世代の人間でも扱えるよう作られているのだ。
老若男女が楽しめるスマートなキット
下の画像を見てもわかるように、開発者たちはあらゆるパーツにおける詳細な情報をキット使用者に提供してくれている。そのため子供から大人まで、あらゆる世代の人たちが作りながらロボットについて深く楽しく学び、カリキュラムを通じてその楽しみを他人と分かち合うこともできるのである。また一般的なロボットアームとは異なり、Smart Clubには六つのモーターに加えて二つのチップも付属している。ブルートゥース対応のチップを用いて、六つのモーターを一度に動かすことができるのだ。
前述の通り、このロボットアームキットはプログラミングの過程もDIYの一環として含まれている。使用するアプリケーションはMIT App Inventorで、実際にロボットアームを動かす際にはすでに構築済みのプログラミングデータを用いることもできる。ただ、自分でスクリプトを書くことができれば、ロボットアームをより自分の都合に応じて動かすことができるようにもなれるのはプログラミングの魅力だ。このアプリを用いたプログラミングはいわゆるブロックを組み合わせるようなシンプルなタイプの形式で、比較的簡単に自分の好みに応じたプログラミングを体験することができる。世代を問わずシンプルなコーディング方法は、プログラミング初心者にとってはとても学びやすいシステムとなるだろう。
最近ではテレビでも子供向けのプログラミング養成番組が放映されているが、あれに近い形で実際にコーディングの練習ができると考えればわかりやすいだろう。うまくプログラミングを扱えるようになれば、ロボットアームにオリジナルの動きをさせたり、新しいロボットを用いた遊びを生み出すことができるかもしれない。
開発チームが目指すのは、第四次産業革命に備えた教育環境の整備だ。サイバーフィジカルシステムが私たちの生活に普及し、ロボットアームがWifiや個人のスマートフォンと接続するようになればIoTはより進んでいくこととなる。多機能アームとスクリプトさえあれば、人間に変わって人のタスクを次々とこなしていくようになることも遠い話ではないのだ。
Smart Clubは教育用のロボットアームには違いないが、こう言ったキットを通じて少しでも多くの人にロボティクスとプログラミングの知識が普及し、大多数の人々がロボットアームを使えるようになれば、それだけで産業革命はより現実味を帯びてくる。普及すればするほど一台あたりのコストも安くすむため、技術者が増えればその数は倍々に伸びていくという考えだ。
Smart Clubは現在Kickstarterで支援者を募集している。45ドル以上の支援で一台のロボットアームがもらえるが、一台あたりのコストがかなり抑えられているため、教育用に使いたいという人には500ドルの出資で12台のロボットアームをまとめて入手するプランも悪くないだろう。